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IN THE HOUSE

 遂にたどり着いた、私の姉とそれを連れ去った男の根城に。


ここにアイツらがいる、その意識が私にかつて無い緊張と、そしてほとばしる、人を殺す決意が。


しかし、不自然なほどに人の気配がせず、室内に侵入しても妙に閑散としている。


『くれぐれも油断はしないようにお願いします』


『誰に言ってんのよ』


今は物静かだけれど、所有者の暴虐を貪る様がありありとイメージされる、今いる館はそういう場所なのだ。


愛住(あいずみ)君の所とは大分印象が違っている。


『アンタもう少し今いる環境を大事にした方が良いわよ』


『なんですか急に』


『あなたには素晴らしいお兄さんがいるでしょう、その人が悲しむようなことをするべきではないと言ってるのよ』


『何をおっしゃるかと思えばお説教ですか』


『別にアンタのためを思ってのことじゃないわ、愛住(あいずみ)君のためよ、彼には本物の哀しみは知って欲しく無いから』


『それ、冗談ですよね?』


『あ? なにがよ』


『いえ、なんでもありません、兄さんも苦労しますね』


ホントに何の話してるの......?


敵地の中での掛け合いは一つの人影によって遮られる。


ゆらゆらと(うごめ)くそれは、静けな廊下と相まってより一層不気味に映る。


さらにそれを相乗する要素がある、見覚えがあるのだ、そのシルエットを。


『グッヘヘヘ、二条グループと繋がってて良かったぜぇ、なぁ? 苦粗温苗(くそおんな)ァ!!!』


私との闘いの後、学園を退学し行方をくらませた万歳座凶(ばんさいざく)が姿を現す。


スクールカースト最上位とでも自負せんばかりのキラキラとした雰囲気は見る影もなく、薄暗い印象を見受けられる、皮肉にも彼が見下していた陰キャなる存在に近しくなっている。


そして妙に派手な格好をしている、何のブランドかは知らないが服だけはギラギラと光り散らしていて、ハッキリ言って眼の毒である、服に着られているとはこの事を言うのだろう、アレの片眼に埋め込まれたビー玉がより一層彼の不恰好さを際立たせている。


『知り合いですか、符夜雨(ふよう)さん』


『まぁそんなとこ......、とも言いたくはないのだけれどね』


(れい)を腐しつつ万歳(ばんさい)を見やると、彼は小刻みに身体を震わせていた。


『嬉しいねぇ、まさか女が二人も出てくるなんてよぉ、両方ボコして俺の女にしてやるぜ!!』


『しばらく見ていなくてもそのサイテーな性根は変わってないのね、感心するわ』


『生意気なモンだなぁ? ええオイ! オメーを最初にヤってやろうかぁ? 眼玉の礼も兼ねてよぉ!』


『お生憎(あいにく)様ね、アンタなんかと構ってる余裕は無いのよね』


『この俺様をなんかと言ったかこの苦粗温苗(くそおんな)がぁ!!』


『まったくやれやれですね、もういいですから符夜雨(ふよう)さん、あなたは先に行っていてください』


『やれるの? あなた』


『わたくしの実力は身を持って存じ上げているはずですが』


『......そうね』


万歳(ばんさい)の横に走り駆け抜ける。


『イかせるかよ!!』


当然阻止せんと私に向かってアイツが阻む立ちはだかるが、それの頭付近にナイフが投擲される。


『あなたの相手はわたくしです』


作られた隙に甘え先を急ぐ、(れい)の武運でも祈りながら。


『チッ逃がしたか、だがまぁ良い、まず手始めにテメーをブチ犯してヤんぜ!!』


便所コオロギ以下の品性が晒け出される、わたくしが闘うのはそういう相手なのだ、面白い。


『貴様のようなスラムの便所の手洗い場にへばりついた糞に匹敵する下郎がこのわたくしに勝つつもりでいるのか、冗談も大概にしておくべきですよ』


『誰が下郎なんだ!! 誰が!!』


便所コオロギが発狂し、わたくしに鈍器か何かを振り下ろす。


無論それは難なく避けたが、なんですかアレ......、瓶?


『どうだ驚いたか? この俺様のラムネ瓶によぉ!!』


どこまでも下品ですね......


『驚いた? バカな、呆れているのですよ、そのような獲物を誇らしげに振るうあなたにね』


(ふところ)からナイフを二つ取り出し、便所コオロギの喉元にその切っ先を向ける、だがそれは受け止められる、奴がもう一本ラムネ瓶を取り出し同じく二刀流となったことによって。


『俺様のラムネ瓶をバカにしやがったなぁ!!』


便所コオロギが激昂と同時に足を振り上げ、それに対しわたくしの蹴りが激突、衝突しお互い吹き飛ばされる。


宙返りをして着地したわたくしとは対照的に無様に尻をつくアイツ、だが彼はニタニタと気色の悪い笑みを浮かべていた。


『ヴゅッチョチョチョ......、キョーップァプァプァ!』


およそ人間の笑い声とは思えない奇音を上げながら腰を振る便所コオロギはまさしく人外(モンスター)と呼ぶにふさわしい形相を呈していた。


『この俺様こそが神だ!!』


しかもこれときた。


『どこまでもわたくしを呆れさせてくれますね......』


『俺様の荘厳さはオメーにはわからんさ』


『荘厳だと? 雑言もいい加減にしなさい』


『俺様の言葉はすべて金言だ! 例外は無い! 俺様が発したセリフはすべて金言と化すのだ!』


まるで宗教の教祖のようですね......


『あなたのおっしゃることを正しいとは思えませんが、他人の意見を聞き入れる性格でもないのでしょう、ですのでわたくしが敗北という結果を与え、徹底的に叩きのめして差し上げます、二度とおごったような態度を取れないようにね』


しかしアイツは気色悪くも不敵な笑みを浮かべながら、


『徹底的に叩きのめすだぁ? テメーには出来ねぇよ!!』


そう吐きながら自分の尻を叩く、その不快な音が鳴った後、背後に人の気配を感じる、だがほんの一足遅かった。


一撃、頭をラムネ瓶でぶん殴られ、辺りに血と瓶の破片が散りばめられ、その中にビー玉が添えられる。


『ギャハハ! 良くやった朝湖(あさこ)!』

この物語はフィクションです。

犯罪行為を推奨、肯定する物ではありません。

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