これが最後になるかもしれないから......
友人とまでは言えないほどの知り合いが、またしても不幸な目にあう羽目になってしまった、私がいるせいで......
『私にそれを伝えたのは何故?』
『あなたがお捜しの人物、それは二条グループに存在しているのです』
唐突に振って沸いた、私が求めていた情報。
『こちらとしても彼らは疎ましい存在なのです、ですからそれに怨みを持つあなたを頼りにきた次第なのです』
この男が何者なのかはもはやどうでもいい、私からあの人を、私の初恋のあの人を奪い去ったアイツらを殺せるのなら......
『ええわかったわ、頼られてアゲルわよ』
『そう言ってくださると信じていましたよ』
気持ちの良いようなセリフを発するのと同時に、妖しい艶がかる黒い手紙を手渡される。
それにはアイツらの根城の場所が記されていた。
『ではこれにて失礼、復讐の達成とご友人の救出のほどを祈っていますよ』
含み笑いを浮かべながら、仮面の男は去っていった。
『友人じゃないって言っても逆効果のようね』
遂に......、遂にこの時が来た、復讐の時が。
光威さんのこともある、決行は早いほうが良いでしょう、明日の夜にでも、無論私一人で。
もうこれ以上、誰か巻き込むわけにはいかないから。
鈍く艶やく拳銃と、鋭く研ぎ澄まされたナイフを胸に、決意と執念をその身に宿す、私から初恋の人と恋心を奪ったアイツらを殺す、そのことを誓って、次の夜が訪れるのを待ちぼうける。
相も変わらず学園中は私と愛住君の噂で持ちきり。
いつも通りとは言い難いけれど、掛け替えの無い日常にも想わせる。
今まで疎ましくしか想っていなかった日々が、手放す時が来た瞬間名残惜しくなってきて、私の中に切なさが沸き始める。
来ることの無いと思っていた青春が、私の信念に揺さぶりかけてくる、だが私の決意は揺るがない、私が今日まで生きてきたのは復讐のため、ただそれだけのため、それを完遂したらその時は......
柔肌ひりつかせる目映い太陽が、限りの無いほどに青々とした青空から哀愁を漂わせた酷く懐かしいような夕陽へと姿を変えて燦然と輝く。
そしてお月様とかわりばんこして、次第に空は黒々とした色に変貌し宝石にも見違えんほどのお星さまが無数に散りばめられる。
そんな綺麗な空ともお別れを告げておかなければならない、そういう覚悟を持って挑まねばならない、私が行くのはそれほどの場所だ、それだけの相手なのだ。
そして、知り合ってからそれほど日の経っていない生徒会の皆もまた同様に。
愛住君から教えてもらった数字列を入力し、無機質な音を聞きながら私の応答に出るのを待つ。
『はいもっしもーし! あっどうしたんスかフヨちゃん!』
『別に? ただ暇だったから』
上谷圭、彼の第一印象は典型的なチャラ男って感じだったけれど、生徒会にいるうちに見えてきたの、彼の人当たりの良さと底抜けの明るさ、それに他人の関係の進展を祝える優しさ、どれも私が持ち合わせていない物だ、だから輝いて見えるのかもしれない。
『はいお電話受け取りました! どうしたんですか哀抔さん!』
『たまにはあなた見たいな子とも話さないとね』
絵園円花、彼女の純粋さには圧倒されんばかりだった、この世の穢れを知らないような女子高生という稀有な存在に物珍しさを感じるのと同時に少しばかり嫉妬の感情を憶えていた、こう在りたかったと。
『もしもし、哀抔から電話なんて珍しいな』
『あなたの声が聞きたかったから』
大神漆人、彼は一見無愛想で寡黙のように映るけど、実は女の子が苦手という可愛らしい一面を持つ、しかもそれを治そうと頑張ってもいる、なんてズルいのかしら、彼といると私もなんだか楽しくなる、そんな不思議な存在。
生徒会の面々と他愛の無い話に華を咲かせる、なんでもないようで掛け替えの無い時間。
面と向かってやれば良い物だけれど、そんなことしたら名残惜しくなるかもって、だから顔が見えない電話の形を取った。
彼らとはまだまだやりたいこともある、でもその約束を取り付けたりはしない、それは私が復讐を成し遂げたとしても、それが出来なかった時も、私の取る選択は決まっているから......
彼らとの談話を名残惜しく思いながらも終えて、いよいよ示し出された場所に向かう。
愛住君とも最後に話していこうかと一瞬考えたけれど、そんなことしたらホントに気持ちが揺らぎそうだから......、だからこれでお別れ。
時計の針が0時の方角を指す頃に、心の中で彼にサヨナラを告げる。
悟られないように自室の窓から外に脱出する、結局は正門から出ることになるけれど。
しかしそこには怜とその執事さんが待ち伏せていた。
『おや、どちらにお出かけになるのですか符夜雨さん』
『アンタこそなに外に出てんのよ』
『単身で反社会団体に乗り込もうとしている人が心配でしたので』
気づかれていたのか、私としたことが。
『ついてくるつもり?』
『わたくしが生きる理由、それは兄さんを脅威から守護ること、あなた様が向かう組織は脅威その物ですので、それに光威耶魅様はわたくしの立派な友人ですし』
このブラコン決闘バカならどんな手を使っても同行するのでしょうね......
『やれやれね、精々足を引っ張らないことね』
『それはこちらのセリフです』
今度こそ殺すんだ、あの二人を!!
この物語はフィクションです。
犯罪行為を推奨、肯定する物ではありません。




