ブラコン決闘バカVSクソポエム努力厨
頭部に激痛が走り、響き渡る便所コオロギの薄汚い笑い声がそれを増幅させる、自分の中に怒りのボルテージが迸るのを感じる、しかしそれは傷を入れられたからではない。
一対一の闘い、何人にも邪魔されてはならない神聖なる決闘を汚されたからに他ならない。
力を振り絞り朝湖と呼ばれていた女の土手っ腹に蹴りを入れ、その場にうずくませる。
『二人がかりは愚か不意打ちですか、上等なことです、容赦しようだなどと考える意味が無いのを悟りましたから』
眼と眼の間に垂れる血液が、わたくしに身体から力が抜けかけているのを気付かせる、若干目元も眩む、油断などしよう物ならそこでTHE END、もう後はない。
『そのフラついた足で良く言うぜぇ、なぁオイ!』
鋭利な銀の刃を振るい、アイツの微塵も似合っていないスーツに傷を入れる、するとまたしても顔を真っ赤にしながら、
『俺様のスーツがァァァ!! テメェコラァァァ!!』
発狂しわたくしにラムネ瓶を我武者羅に振り下ろす、頭を瓶で殴られ、出血して体力も多少なりとも消耗しているというのに何故でしょう、奴の攻撃が止まって見える。
『所詮不意打ちでしか攻撃を当てられない、ましてや他人の攻撃でしか、そんなあなたにはわたくしは倒せませんよ!』
『ちょこまかしてんじゃねぇぞコラ!!』
もろチンピラみたいなキレ方をしながら放たれる、渾身とも思われるラムネ瓶の一撃、だがこれも難なくナイフで受け止める。
ナイフとラムネ瓶の鍔迫り合い、その最中に彼の眼に埋め込まれた玉が光にて反射する。
『綺麗ですね、そのビー玉』
無意識に発露したその発言は彼の神経を逆撫でるのに十分だったようで......、
『バカにしてんのか!!』
空いた片手で殴りかかってくる、それは避けられたが、どうやらわたくし、地雷を踏んでしまったようですね......
『俺様の屈辱のシンボルに触れるたぁ良い度胸してんなぁ! アア!?』
というか眼に埋め込まれたアレ、本当にビー玉だったのですね、などと考える余裕も与えぬ程の猛攻が繰り出される、だがしかし、このような単純な攻撃を避けられないわたくしではありません。
瓶を用いた大振りなる一撃、それを躱し、それによって出来た隙に喉元に刃先を向ける、寸での所で避けられたが、その際に倒れこむ彼にチェックをかける、しかし突如現れた集団がそれを妨害する。
ぞろぞろと集まる正気感せず人の群れ、その者達がわたくしに群がり、彼と隔てる壁となる。
コイツらもまた、わたくしの決闘を汚す不届き者共なのだ、許してはおけない。
『この場合大元の人間のみを攻撃対象と定めるのがお利口であり世間が世間に求める考えなのでしょう、この者達を従えるあなたに、もっと言うとそのあなたを従える二条に、ですがわたくしの決闘を邪魔するのならば、答えは一つ!』
享受と信念、揺るぎの無い在り方が、わたくしに力を与える。
両手にナイフを持ち、自身の身体に回転を掛けると不思議な物だ、回りの取り巻き達が血を吹き出して倒れるのだから。
『残るのはあなただけでしょうか、心配は無用です、急所は外しましたから』
鮮血が眼の前の世界を彩るように辺りと融和する、彩られたのはわたくしも同じ、不思議と不快感は無い、付着した返り血は自身に決意と闘志を奮わせる。
『コイツがどうなっても良いのか!?』
しかし彼はわたくしと対照的な行動に出る、朝湖と呼ばれた女の喉元に短刀を差し向け脅しにかかったのだ。
『どこまでも下劣ですね......』
『うるせぇ!! 俺様は神なんだ! この世の頂点たるただ一人の存在なんだ! 学校でだってみんな俺を恐れてる! 誰も俺には逆らってはならぬのだ!』
タメ息交えて呆れ一つ。
『反社会組織の一員に成り下がった三下が、随分と驕ったようなことをほざく物だ』
『逆らうなと言ったはずだぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!』
それだ。
二つの感触。
愚弄なる突進に繰り出す彼に両手のナイフで、片方で振り下ろされるラムネ瓶を受け止め、もう片方で胸部を切り裂く。
倒れ行く便所コオロギが先ほどまでとは打って変わって静かに倒れこむ、不格好な音を鳴らしながら。
『俺様は神なんだ......、絶対的に頂点に立つんだ......』
つける薬無しとはこのことか。
『貴様は確か海崎健太なる少年に対し加害行動を働いていたそうだな、いわゆるイジメという奴だ、そのような下劣なる行為に走るような奴が神を名乗る資格など無い、綺麗事を吐くこともだ、わかったかこの尿瓶崩壊玉無し噛ませ野郎』
便所コオロギのあげる叫びは、まるで負けたにも関わらず空へ発砲し勝ち誇る哀れな敗戦兵のようである。
醜い叫びをあげるだけあげてピクリとも動かなくなる。
早い所、符夜雨と合流しなければ。
『待ちなさい!』
......まだそうはさせてくれないようだ。
『そのまま倒れていれば良い物を』
朝湖と呼ばれた女が起き上がり、わたくしの前に立ちはだかる、ラムネ瓶を持ちながら。
この物語はフィクションです。
犯罪行為を推奨、肯定する物ではありません。




