作戦の重要性(仮)
明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。
※昨日は誤投稿してしまいまことに申し訳ありませんでした。言い訳のつもりはなく状況説明と言う意味でここで理由を説明しておきますと、スマホのメモ帳から16時に予約投稿した後、ノートパソコンの方で書き直して文章を修正するという作業をしていました。今までも何度かそういう手法はとっていました。
しかし予約投稿になっておらず500人あまりが結構ひどい文章をわざわざ読んでくれていたようです。やり取りしている会話の内容や、メタリックスライムの技能などが最初の投稿時とは変わっていますので、気になる方は二度手間をかけてしまいますが先に前回の話を読んでいただけると助かります。
上手い事、相手を袋小路に追い詰めたまではいいのだが、このメタリックスライムを普通の攻撃で倒すのは相当厳しいはずである。魔弓による攻撃も無効化される気がする。
そこでヨースケはかねてより強敵が現われたら使うつもりだったひとつの技能を試してみる事にした。
下級暗殺術(Lv10)『暗殺攻撃』:
自分の位階以下生命体を対象とする。その生命体にダメージを与える事のできる状況下においてこの技能を使用し、成功した場合、一瞬で対象の生命を奪う事ができる。復活判定と即死判定が作動した場合は対象の生命力を1にする。技能の成功率やそのSP使用量は技能を放つ状況、対象とのLv差などに依存する。SPを余分に込める事でその成功率をあげる事も可能。
袋小路の先でこちらの隙を伺っているメタリックスライムに忍者刀を構え、
「『暗殺攻撃』、『起動』。」
ぐんっとSPが20減る感覚がした。成功率がどのくらいか分からないが、一度で成功するとはさすがに思っていない。次はSPを30使う事にする。
「『暗殺攻撃』、『起動』。」
失敗だ。
こちらが何かやっているのを感じているのか、メタリックスライムが脇を抜けようと左右に動く。ヨースケは体全体を使ってガードする事により、その行く手を何とか阻む。次はSPを40込める。
「『暗殺攻撃』、『起動』。」
これもダメだ。ええい、次は50だ。
「『暗殺攻撃』、『起動』。」
ダメである……。60で……。
「『暗殺攻撃』、『起動』。」
その瞬間、ヨースケの体が自動的に動いた。
その動きは、なんと例えればいいのだろうか、強いて言えば、まるでその場に居るあらゆる存在の認識の隙間を縫うものだった。
ヨースケ自身も、気付いた時には手にした忍者刀がメタリックスライムに突き刺さっていて驚いた。
それも明らかに致命的と分かる一刺しである。
おそろしく硬いと思われるメタリックスライムの体に忍者刀が不自然なまでに深く埋まっている。
どうやってここまで刺せたのかはヨースケ自身にもよく分からなかった。この技能は恐ろしすぎる。
その直後、メタリックスライムの姿が霧散して、普通のスライムが残すものよりかなり大きな魔石と水銀の様な液体金属が残った。そしてレベルが一気に上がる感覚に包まれる。これは少なくとも1や2上がった感覚ではない。
すぐにステータスチェックを行うと位階は一気に6まで上がり、なんとGPが600Pも増えていた。『成長の腕輪』がなくても300PのGPが得られるとすれば、かなりすごい魔物である。
それはそうとヨースケは調子に乗ってネットゲームの廃課金者のごとくかなりダメなSPの使いかただった事を反省した。位階上昇による回復でSPが最大値の半分まで回復しなかったらこの後の攻略に多少の支障が出ていたかもしれない。正直、半分まで回復してくれてかなり助かった。
ドロップに関しては核石が出てくれたら嬉しかったのだが、そううまくは行かない様だ。とりあえず目の前の液体金属を鑑定してみる。
スライム銀
品質:最高品質
状態:最高品質
耐久値:2000/2000
詳細情報:
メタリック系統のスライムから取れる素材。非常に希少性の高い素材として有名。素材元の魔物の防御力が異常に高いため、特殊な攻撃や過剰攻撃にさらされた素材が多く品質の高いものの価値は計り知れない。古来より不老不死の薬の材料の一つと噂されているがその真偽は定かではない。武器や防具、魔道具や魔法陣の素材としても一級品である。
かなりすごいものである事はわかったが使い道が思い浮かばない。現時点では完全に宝の持ち腐れである。しかし、もしこいつの核石がゲットできたらメタリックスライム・エレメントが召喚できるのだろうか?そうなら是非核石を入手を狙って行きたい。
GPの入手量からも積極的に狩って行きたい個体だが、その出現率は鑑定情報によると約10000匹に1匹である。
祠1往復につき、約200体のスライムを倒したとして5往復で1000体。すんなり行けば50往復で1体の割合である。技能『呪詛〈魔物寄〉(Lv3)』の効果があるので、もうちょっとだけ楽に出会える気はするが……。
メタリック系統の核石入手までの道のりは遠そうである。
げるるんを呼び寄せ、『収納』していたアイテムに中から予備としていれていた空のツボを取り出してスライム銀を採取する。
あとは「この魔石は食うなよ。」と言ってからその大きめな魔石も、げるるんに『収納』させた。
予想外のLvアップにいったんレベルダウンの罠を踏みに戻りたい衝動に駆られたが、この祠の調査を優先させる事にする。
ヨースケの位階は試練の祠5階層1往復ぐらいでは上がらない様な気がしたので、げるるんに『呪詛〈魔物寄〉(Lv3)』の技能を有効化させてガンガン魔物を倒しながら祠を突き進む事にした。
この技能の効果は程はすぐに体感できた。明らかに祠の中で出会う魔物の出現量が増えた。出現量自体は1.3倍ぐらいなのだが、感知範囲外からもじわじわとこちらの方へ向かってくるのが分かる。引き寄せの効果が半端じゃないみたいだ。体感では今までの1.5倍くらいに感じる。さらにこの引き寄せのおかげで殲滅効率も上がった。このスキルは『呪詛』と言う割には、使い方さえ間違えなければいい事づくめの様である。
スライムを弓で殺すのはMP効率が下がるとわかったので、忍者刀に下級無属性魔術Lv6の『魔力付与』をかけて斬りつけるとサクサクと倒せた。MPを5だけ使用して10分程持つので非常に燃費がいい。ただ気を抜くとすぐに魔術が解けてしまうので、わりと気を張っていなければならない。
使いこなすには慣れが必要そうである。
当初の予定通り、地図を作りながらささらに下の階層へ進んで行く。3階層で一度『魔力付与』の魔術の代わりに、『火炎付与』と言う魔術を使って見たが、MP5に対して5分程しか効果が続かなかったので、MP効率の関係上使うのは『魔力付与』優先と言う結論に落ち着いた。
もちろん途中で出会うゴブリンはげるるんに倒させたりもした。核石もすでに3つ手に入った。この調子だと今回はいつもより多く核石をゲットできそうである。
やがていつもの様に5階層にたどり着いた。主の反応もすぐ見つかる。
仮にこの主がゴブリンリーダーだとしたら、『呪詛〈魔物寄〉(Lv3)』の技能の効果は、少しだけこちらに不利に作用するかもしれないと心配になる。しかし主がそれ以外魔物だったなら特に問題はないだろう。
ヨースケは主がリーダーかどうかは遠目に確認して、違えばこのままで行こうと決める。
ここからはいつもの様に気配を消して主の元まで行った。
遠目で確認すると今回は騎士ゴブリン系列の魔物のようだ。いつもの全身鎧に相手の体の半分ぐらいを隠す長方形のやや大きめな盾と片手剣を持っている。
『望遠』と鑑定眼で確認すると、騎士ゴブリン〈盾兵〉という魔物だった。
所持する技能は下級盾術(Lv3)である。ステータス値はほぼ他の騎士ゴブリンと同じで、肝心のSP総量は50だった。前回の『決闘補正』のような特殊な感じのする技能は持っていないようだ。
ヨースケはここ最近失敗してばかりのだったので、今回はいつもよりきちんと作戦を立てる事にする。1人、頭の中だけで作戦を完結させないよう、モジョモの意見も取り入れて見る事にした。
「なあ、モジョモ。今回の相手は盾術の技能持ちなんだが、上手い事スキルを出させる案は無いか?」
「ん?私に意見を聞くなんて珍しいわね。……こっちから攻撃しまくればいいんじゃないの?」
至極まっとうな意見がでた。でも多分それではダメだ。
「いや、この刀で攻撃したら死んじゃいそうなんだよね。」
そう言ってヨースケは忍者刀を見せる。
「じゃあ殴れば?拳闘術の技能覚えたんでしょ?」
「相手は剣を持ってるからな。そこに素手で殴りかかるのはちょっと……。岩石硬化の籠手を持ってくるんだったよ。」
そう言うと、モジョモは「うーん。」と少し唸ったあと、
「とにかく技能が見れたらいいのよね。」
「そうだな。」
「なら防御しかできなくさせるとか?」
「どうやって?」
「いや、いつも見たいに武器を奪って使えなくしちゃえば?そしたら相手は盾で防ぐしかできないんじゃないの?」
思った以上にいい案が出た。「やはり1人であれこれ考えるよりもこうやって話し合った方がいい案が出るな。」と、ヨースケは今までの事を少し反省する。
「それはいい案だな。片手剣は持ってないし奪ってしまうか。
まてよ、この際げるるんに『武器強奪』の技能が発現するか確認するために、俺が押さえつけてげるるんに奪ってもらおう。まあ1回で上手く行くとは思わないけど……。
その後は相手に適度に攻撃しつつ防御に回ってもらい、技能を見せてもらうか。」
その後は戦う上での細部についてもう少し話し合う。ある程度きっちりとした方針が決まったので戦いへと挑む事になった。
まずヨースケは騎士ゴブリンに気づかれない様にげるるんたちと少し離れた位置に移動する。
適当なところまで移動したらげるるんに合図を送って突っ込ませた。
相手がげるるんに意識を向けた瞬間、その死角から一気に近づいて背後から騎士ゴブリンを地面に押さえつける。
相手はなんとかこの状態から逃げ出そうと必死にもがくが、ステータス差もあってまともに動く事はできない。
次はそのままげるるんに近づいてもらい、腕から片手剣を奪ってもらった。
奪った片手剣は『収納』してもらい、げるるんが騎士ゴブリンからある程度離れた所で、押さえつけていた力を抜いてヨースケも騎士ゴブリンから少し距離をとる。。
騎士ゴブリンがのろのろと立ち上がる。武器がない事に、気づいたのだろうしっかりと盾をその場で構えなおし、こちらをまっすぐに睨みつけてきた。
今回は面白いぐらい作戦通りだ。片手剣を奪う事にも成功している。
このままじっとしていても騎士ゴブリンは攻撃をしてこなさそうなので、ヨースケは両足に力を込め、一足飛びに相手との間合いを詰める。
左手で軽くジャブの様な仕草をすると、相手がそれに合わせてこちらに盾を向けてくる。そのまま盾を迂回する様な軌道で右フックを放つ。もちろん致命傷を与えても仕方がないので、この右フックは技能攻撃ではない。
これは相手をビビらせてスキルを使わせるためのもので、当たるのは二の次、スピード重視で放ったものだ。
相手は予想外の角度から手が伸びてきた事に驚いた様だが、割と冷静にフックの軌道に盾を割り込めせる様にスライドさせたかと思うと、くの字に曲がっていたこちらの右肘に盾の淵を引っ掛けて、そのままフックを外に押し出す様にさらに盾を体の外側にスライドさせた。
ヨースケの右手には予想以上の力がかかり、立ち位置ごと少しずらされてしまった。
大事をとってすぐに距離を取る。
相手の動きを思い返してみると、盾をやや自分に引きつけてからスライドさせていたので、予想以上に力強く感じた理由には、てこの原理的なものも関係してそうだ。
そしてここで相手を鑑定してみたら相手のSPが10減っていた。
つまりさっきのはスキルだったみたいだ。
やはり技能は時にステータス差をひっくり返すような効果を得られるらしい。すぐに殺せる敵だからと言って油断はできない。
ヨースケが騎士ゴブリンとそういう風にやり取りをしている間、げるるんは常に騎士ゴブリンの死角、つまり背後を取る様に頻繁に移動をしていた。これも事前の計画通りである。相手の気を散らして、技能を使わざるを得ない状況にするためだ。
前回の時も、『決闘補正』の検証なんてものは後回しにして、今回の様にきっちり一つの技能の観察だけを目標にして闘った方が良かったのかもしれない。
騎士ゴブリンも、自分の剣を奪ったスライムの事は無視できないのだろう。こちらが接近するそぶりを見せないでいると、チラチラと何度もその姿を確認しようとしているのが分かる。
そこでヨースケは相手をさらにじらそうと、接近する様に見せかけたフェイントを何度も行う。その度に騎士ゴブリンは「ビクッ」と動き、イライラし始めているのもよくわかる。
ヨースケは、このままフェイントばかりして相手の技能がなかなか見れないままでいるのも微妙だと思い、適当なタイミングで再び突っ込む。
今度は、左のジャブで軽く相手の盾をコツンと叩いてその場所を意識させ、
そのまま盾にへばりつく様に突っ込んで再び右フックを放とうとした。この時のヨースケの視野は相手の斜め上から見下ろす様な位置どりとなる。これなら相手が技能を使用した時の動きが見やすいはずだ。
前回はアッパーにしてやられたので、盾をカチ上げられて顎に打撃を受けない様に注意する。
すると今回、相手は盾の中心を支えている左手を、それこそアッパーを打つ時のようなフォームにした。そして左手の手の甲から肘までを盾の裏にへばりつける様に押し当て、さらに右手の掌を張り手のように、これまた盾の裏に添える。最後に体全体を盾のすぐ裏まで寄せたかと思うと丸くなり、まるで弾丸の様にこちらを押しやってきた。
いわゆるシールドバッシュというやつだ。
ヨースケはそのまま体で相手の突撃を真正面から受け止める事になった。
しかし鎖帷子に魔力を込め、上手く盾を抱え込む様にガードしたおかげで無傷でその攻撃を止める事ができた。
ただ3m程後ろに押しやられてしまったが……。これはステータス差を考えると結構な距離を押しやられた事になる。
鑑定してみると、案の定、相手のSPが20も減っていた。やはり技能だったようだ。込められたSP量を考えればこの効果にも納得が行く。
ヨースケは何となく、盾の技能の中にはシールドバッシュ系の技能が存在しているんじゃないかと予想していたので、上手く対処できたことにほっとする。
ヨースケは盾を押さえ込んだままだった相手から再び距離を取る。
油断ができない状況とはいえ、相手の残りSPはもう20しかない。
こちらの攻撃をいなす様な技能に、シールドバッシュの技能。これで技能2つ分である。残り一つの技能が何なのか予想できないのがきつい。
おかげで今までとは少し違った攻撃をした方がいいのか、それとも正面から真っ直ぐ攻撃していく方がいいのか判断がつかない。
もちろんファイターと闘った時のように、今まで見れた技能のどれかがLv3以上の下級盾術の技能のであった可能性もわずかにだがあるだろう。
しかしそんなごくわずかにしかなさそうな可能性までごちゃごちゃと考えていても仕方がない。次の技能がしっかりと確認できたらさっさと倒す事にする。
結局ヨースケは「盾と言えば防御!」という考えのもと今度は普通に攻撃をする事にした。
拳だと痛そうなので、掌底か張り手の様な感じで、盾の上から相手を押しやるように連撃をくらわせる。
ステータス差もあって相手は防御に必死だ。
しかしヨースケもしばらく同じように攻撃し続けたせいで、攻撃のタイミングが単調なものになっていた。
最初はどんどん押しやれていたはずなのに、気がつくと相手はその場での防御を確立させていた。
こっちの攻撃が当たり切る直前に、タイミングを合わせて盾ごとこちらに踏み込み、こちらの威力を殺している。
しかも鑑定してみると、しっかりと防御されたと感じるタイミングで1ずつSPが減っている。これが残の技能のようだ。
しかしこの状況は当然ながら長くは続かなかった。
相手の残りSPが5を切ると、その動きは途端に鈍くなった。
もうこんな状況で技能を観察する意味はないと判断したヨースケは、攻撃すると見せかけて両手で相手の盾を掴み、そのまま「ぶんっ」と振り回す。
すると相手は盾から手を離してしまいヨースケの手元に盾が残った。
ヨースケはこれ幸いと盾をさっき見たように構え、たたらを踏んでいた相手に先ほど見たシールドバッシュを敢行する。
意外な事にSPの減る感覚があり、すんなりと技能が成功したのがわかった。さっきしっかりと相手の動きをいい視点で観察できたのが良かったのかもしれない。
シールドバッシュをまともにくらった騎士ゴブリンはそのまま祠の壁まで吹き飛び、激突してズルズルと地面に倒れこんだ。
しかし消えていないという事はまだ倒しきれていないという事だ。油断はできない。
シールドバッシュは盾術の攻撃技というよりは、本来間合いをとったり潰したりするのに用いる技能なのだろう。攻撃としての威力が低いのか、このステータス差でもとどめには至らなかったようだ。
ヨースケはこれで最後とばかりにげるるんに合図する。げるるんに騎士ゴブリンに『形態変化』するための条件を満たしてもらうためだ。
現在Lv8でそこそこ大きさのあるのげるるんは、弱り切った騎士ゴブリンをやすやすと包み込んであっという間に窒息死させてしまった。
騎士ゴブリンが消えると、魔石と盾が残った。げるるんに確かめて見たが片手剣もちゃんとある。1人と1匹で別々に奪ったのが良かったのかもしれない。あるいは奪った後、『収納』した事が関係しているのかもしれない。何故かはわからないままだが、どっちにしろ得られるアイテムが増えた事に変わりはないので、この事は今後検証して、可能ならなんとか毎回ゲットできるアイテムを増やしたいものである。
騎士ゴブリンの全身鎧を揃えてげるるんに装備させてやりたいしね。
げるるんはさっそく騎士ゴブリンの姿を取り、嬉しそうに片手剣を振り回している。盾も渡してやるとずいぶんと喜んでいた。
ヨースケは「なかなか可愛いもんだ。」と、微笑ましいものを見る笑顔でその光景を眺めていたのだが、その横でモジョモがむすっとした顔をしてつぶやくように言ってきた。
「私のアドバイスによる素晴らしい作戦で上手く行ったはずなのに、何で私には何もないのかしら……。」
明らかに怒っている。
ヨースケは声には出さないが、「うむ。失敗した。」と頭を抱えたくなった。
一年のシメの日にやらかしてしまい誠に申し訳ありませんでした。今後はこういう事がないよう気をつけます。
今年もレベルダウナーをよろしくお願いします。




