剣術スキル
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試練の祠に乗り込む前にヨースケは祠の側にある倉庫で荷物整理をする。予想したGP取得条件と技能取得方法の検証のため、今回は身軽にして行くつもりである。そのため今回は5層の主のところまで、極力戦闘は避けるつもりなのでリアカーは持っていかない。いつもと違う装備として昨日作成した岩の小楯と岩石硬化の剣を追加で持っていく。後はカゴだ。帰りは普通に魔物を狩って帰るつもりなので魔石なんかは回収したい。
ふと放置していた、鉄のブーツを思い出して鑑定してみた。
騎士ゴブリンの鉄靴
DEF+20
MDEF+5
使用条件:特になし。
品質:普通
状態:普通
耐久値50/50
素材:低級魔鉱石
詳細情報:
魔鉱石から作られた全身鎧の一部。騎士系ゴブリンの魔物がドロップする。サイズがそこまで大きくないため、少年か従魔などの小柄な亜人種形態の魔物が装備する場合がほとんどである。鋳つぶされて魔鉱石のインゴットに作り変えられることも多い。
サイズが合わないため結局は倉庫の肥やしになりそうな気がする。類似装備が溜まったら、火魔術でも使って溶かしてみてもいいかもしれない。
なぜかげるるんが隣で物欲しそうに眺めていたので手渡してやると、体から触手を2本生やしてそこに鉄靴を引っ掛けてなんとか身につけようとする。
ひょっとすると靴としてではなく、籠手の様に使うつもりなのかもしれない。しかし、まんまるなボディから逆さまに突き出した2つの鉄靴は、奇妙な触覚にしか見えないので取り外してやり棚に戻す。
なぜか残念そうな仕草をされた。気に入っていたのだろうか……?
気配を絶ち感知の技能を駆使して魔物を避けながら下の階層へと向かって行く。
げるるんが気配を消せないことを心配していたが、元々同じフロアに同種の魔物がいることもあってかかなり近づいても、こちらから手を出さなかったのが良かったのか何もしてこなかった。
1時間程かけて3層に着いた。ここまで1度も戦闘はなかった。ここからはゴブリンがでる。ゴブリンだけなら今のげるるんだと相性の関係で同時に3体ぐらい相手にしても勝てそうなので、もし見つかったら任せるか、どうしようもなければげるるんだけ先行させて片付けてもらおう。その場合げるるんを酷使させてしまうことになりそうだが今後のことを思えば必要な検証のためだ、仕方ない。
階段までの道の途中で2体のゴブリンを感知した。祠の構造的に下の階へ向かうのに避けて通れない位置だ。
げるるんに「行け。」と合図して遠くから様子を伺う。
げるるんは敏捷がかなり低いため、ゴブリンに近づくその動きは随分とゆっくりしている。しかしその体の構造故か移動する時にほとんど音を立てない。そのおかげもあってか、げるるんがかなり近づくまでゴブリン達は気が付けなかったようだ。
接近に気づいた片方のゴブリンが持っている棍棒をげるるんに叩きつけるしかし、物理防御に関しては文句の無い防御力を持つスライムである。殴られたことをものともせずそのまま体を広げて襲ってきたゴブリンに覆いかぶさった。
今のげるるんはかなり体積が大きくなっているのでその小さなゴブリンの体を一瞬で包み込んだ。もう1匹のゴブリンがそのゴブリンを助けようと殴りかかってくるが、棍棒を振り下ろされる場所に、取り込んでいる方のゴブリンの体の一部を突き出して殴らせている。賢いというかげるるんさん鬼のようにえぐいっす。
「ああいうとこ見ると魔物ねえ。」
と横にいるモジョモがお気楽そうに言う。目線の先では、取り込まれていたがゴブリンが霧散する。どうも窒息死したようだ。そしてすぐにげるるんはもう一体の方も同じように包み込んだ。残っているゴブリンが先ほど倒されたゴブリンと同じようにもがく。
「極限状態で人は本性を露わにするというが、この場合は魔性なのか……?」
モジョモにそんな風に言葉を返しつつ、
「なんかあいつを抱き枕にするのが怖くなってきた……。」
とヨースケが言葉を続けると、
「はっ、いい気味ね。」
と何故かモジョモに勝ち誇った様に言われた。
ヨースケ的には今後はプチブルー辺りにお願いしようと思っていたので、「そこで勝ち誇られても……。」と思ったのだが、言葉にしても面倒くさいことになりそうな予感しかなかったので口をつぐんだ。
そんなやり取りをしていると問題なくもう1匹ゴブリンを仕留めたのか魔石と牙を2つずつ持ってげるるんが戻ってきた。げるるんは全身から「ほめて、ほめてー。」という感じを出している。
ヨースケは魔石1つと牙2つを受け取って、残った1個の魔石をそのままげるるんにもたせ、
「そいつはお前にやろう。砕いたほうがいいか?」
と聞くと、位階が前よりも高いおかげか普通に魔石を口に含んでもぐもぐし始めた。前の様に吐き出す感じが無いので大丈夫なのだろう。
再び移動を開始する。しばらくはもぐもぐしながらついてきたげるるんだったが気づいたらそれもしなくなっていた。どうも無事、魔石を食べることができた様だ。
5階層までの道中、上層と同様にスライム達とは上手く戦闘を回避することができたが、何度かゴブリン達と戦闘になった。しかし結局げるるんによってその全てが倒された。各耐性能力とスライムの種族特性的なもののおかげなのか、げるるんのHPはまったく減っていない。相手のステータスがそれほど高く無いこともあるのだろうが、やはり物理攻撃オンリーの敵にはかなり相性がいい様だ。
何とか5階層の主の元まで戦闘をすることなくにたどり着いた。
今回もゴブリン・リーダーではなく前回と同じ全身鎧のゴブリンだ。前回と異なる部分は剣が前より少し大きめで盾を持っていない事だ。鑑定してみる。
騎士ゴブリン〈剣士〉
Lv(位階):5
種族:ゴブリン族
状態:普通
HP(生命総量):50/50
MP(魔力総量):10/10
SP(体力総量):50/50
ATK(最大筋量):90(武器補正含)
DEF(物理耐性):180(鎧補正含)
MATK(最大魔術行使力):5
MDEF(魔術耐性):40(鎧補正含)
AGI:(敏捷性):30
技能:
身体操作(Lv3)、下級剣術(Lv3)、気配察知(Lv3)
詳細情報:
騎士系ゴブリンの魔物の一種で、剣術を得意とする。1体の強さはそれほどでも無い個体が多いが、同族の騎士系との連携が得意であり、複数を相手取る際はその物理防御の高さからもかなりの強敵となる。
いや、物理防御高めって、確かにスライムやゴブリンからしたらかなり高いが、忍者刀や魔弓を使ってしまえばただの紙装甲である事は明白だ。やはりあの武器は中々規格外の様だ。
しかし運がいいぞ。
もともと闇雲にいろんな剣術の型を試してみるつもりだったが、この鎖帷子と岩の小盾があれば多分相手が下級剣術(Lv3)を使うところをじっくり観察できそうだ。スキル発動の確認は鑑定眼で相手のSPの減りが分かれば確実だろう。
げるるんに手出し無用と指示を出し岩の小盾と岩石硬化の剣を構えモジョモに
「ちょっと剣術をあいつから習ってくるわ。」
と言って、消していた気配を露わにして騎士ゴブリンに突撃した。
騎士ゴブリンはすぐにこちらに気付いて同じ様に剣を構えて突撃してきた。それに対してヨースケはすぐに突撃を止め、その場で盾をどっしりと構えて待ち受ける。
カアンッと甲高い音が響いて剣と盾がぶつかった。思った以上の手応えのなさはヨースケにとっては少し拍子抜けだったが、体重差とステータス差を考慮したらこんなものかもしれない。ただの相手の剣戟自体はそこまで遅く無い、鎖帷子以外の部分に当たると痛そうな気もするので気合いを入れ直し盾を構え直す。
騎士ゴブリンはヨースケの防御力の高さを感じ取ったのか、少し動揺した様だったが、攻撃をしてこない事に気付くとニイッと笑って剣を振り回す様に動かし連撃を仕掛けてきた。
ヨースケはその攻撃の1つ1つを小楯を慎重に動かして防いでいく。騎士ゴブリンの攻撃の型は思いの外洗練されていた。この体格と位階で武器込みとはいえATK90もあるのだ。やはりステータスだけで侮るのはよした方がいいだろう。
ヨースケは暫く足を止めてしっかりと騎士ゴブリンの剣戟を受け続ける。その際相手の剣術の型をしっかりと観察した。しかし相手のSPが一向に減らない。つまりまだ技能を使っていないという事だ。油断はできない。
少し余裕が出てきたので盾を足元に放って、岩石硬化の剣で打ちあう事にした。相手の剣の軌道にこちらの剣を置く。ただ使い慣れていないのと防御面積が盾ほど大きく無い所為で余裕があるけどその動きはぎこちない感じになってしまった。
それを隙と捉えたのかもしれない。何合か打ち合った後、騎士ゴブリンが今までとは違う雰囲気で上段に剣を構えた、その瞬間、危機察知の技能が働いたのかギクリと感じたヨースケは半ば本能的に岩石硬化の剣に魔力を込め、頭上を防御する。
フッと騎士ゴブリンの剣が今までとは違う速さで走り、その直後周囲にガインッと硬質な音がひびいた。
ヨースケは今の攻撃に結構ビビっていた。今度似た様な事をするときは頭を護るものを考えた方がいいかもしれない。
さっと鑑定眼で相手を確認すると、SPが5減っていた。単純計算で後9発は技能を使ってくると考えた方がいいだろう。
ただ幸運な事に相手が技能を使って来ても、この剣できちんと防御すれば何の問題無い事がヨースケは確信できたので、心に余裕のようなものが生まれ始めていた。
さらに身体操作(Lv10)の影響だろうか、相手の動きを自分なりに再現しようと手始めに足の動きから真似をし始めたのだが、少しづつではあるが確実に実感できる速度で自分の動きが良くなって行くのがわかる。それがさらなる余裕を産んでくれた。
こちらが防御ばかりする事に痺れを切らしたのか今度は大きく体を捻るように構えた後、強烈な横薙ぎの攻撃が繰り出された。先ほどよりも明らかに強い一撃だ。しかし余裕を持ち始めたヨースケはその攻撃もしっかりと剣に魔力を込めてガードする。
感触から言って、岩の小楯で防御していたら今の攻撃はまずかったかもしれない。今度は小楯にも硬質化の魔法陣だけでも組込もうと心に誓いながら相手の剣を力任せに押し返す。
驚いている騎士ゴブリンを再び鑑定眼で見ると、SPが15も削れていた。結構な一撃だったようだ。
ヨースケは打ち下ろしと、横薙ぎの剣術の技能を見たおかげで、下級剣術の内容に予想がつき始めていた。おそらく下級刀剣術に近い技能構成に違い無いと。
たださすがにLv毎のスキルの並びは分からない。流石に難易度順のはずではあるので、打ち下ろしがLv1で、横薙ぎはLv2かLv3だとは思うのだが。
とりあえず予測できる残り1つのスキルで危険そうなのは突き技である。点の攻撃に対して線の防御は相性が悪すぎる。鎖帷子に当たる分には何の問題もなさそうだが体の末端や急所には当てたく無い。まあ最悪、鎖帷子のある体の部分に魔力を込めて受け止めれば問題無いだろう。多分きずひとつかない気がするし。それよりも今はもっと剣術の動きが知りたかった。
再び打ち合いが始める。今度はヨースケからも攻撃する事にする。ただしあまり早く無いフォームを意識した動きで攻撃を加える事にする。
手抜き攻撃ではあるがステータスの暴力のお陰か中々いい打ち合いになってきた。
ヨースケの方はフォームを意識して攻撃している所為で攻撃は相手の中心ばかりを狙う事になり、相手の騎士ゴブリンは防御する事に自体にはそれほど苦労している感じは無い。しかし膂力の差は感じているようでヨースケ側の型がどんどん改善していくに連れて行動の比重が防御に偏っていった。
ヨースケは相手の動きが完全に防御一辺倒になってからしばらく打ち合った辺りで、意識すれば確実に自分の攻撃が当たる気がしてきた。しかし相手の技能がまだ見たかったので一芝居打つ事にした。
剣戟の合間にわざとバランスを崩した仕草をして相手に隙があるように見せる。
その瞬間、相手は腰だめに剣を構え、全身をバネのように伸ばして突きを放ってきた。この攻撃の気迫は明らかに技能攻撃だ。
今までアホみたいにスキルを真正面から受けていたが今回はかわす事にした。ひょいっと脇に退けるだけで騎士ゴブリンはヨースケの脇を通り抜けていく、そしてそのままこの部屋の壁近くまで移動していった。
その後姿を鑑定眼で見るとやはりSPがさらに15減っている。相手の残りSPはこれで15だ。
技が外れて隙がで来ていたので遠慮無く追撃しようとヨースケは相手に躍りかかっ流ように近付きそのまま力任せに剣を振ったが騎士ゴブリンは転がるように動いて見事にその斬撃をかわしていた。とっさの攻撃で型を全く意識していなかった所為で無駄に大ぶりになっていたようだ、勿論相手の回避も中々のものだったが。
ヨースケは弱い魔物でもスキル持ちは油断しないほうがいいことを今の相手の動きで再認識した。また、焦って自分の型が崩れているのは良く無いとわかる。
ヨースケはしっかりとした攻撃を当てようと思い直し、最初に騎士ゴブリンが放ってきた打ち下ろしのスキルを再現しようと剣を振るう。中々いい型だ。相手の騎士ゴブリンは急に過激な一撃を放ったヨースケの攻撃をかわしきれず鎧の型の部分に被弾して動きを落とした。
そのまま力を込めれば骨まで破壊できそうだったが止めた。相手に何とかもう一度打ち下ろしのスキルを使わせたかった。
再び始まる両者の打ち合い。しかし先ほどの被弾が効いているのか、騎士ゴブリンの動きは段々と精細さを欠いていく。そこでヨースケは再び頭の方にわざとらしい隙を作ってみた。
相手もその隙は作られたものだと分かっていたのかもしれない、ただこのままでは勝てないとも思っていたのだろう。最初の攻撃時よりも強力な打ち下ろしの攻撃がヨースケを襲う。
しかしヨースケは相手の動き全体をしっかりと目に焼き付けながら、余裕を持ってその攻撃をかわした。
SPが0になったのかそのまま騎士ゴブリンはへたり込む。古白の言っていた通りMP同様0になるとあまりよろしく無いようだ。スタミナ切れに近い状態なのだろう動きだす様子も無い。
ヨースケはそんな騎士ゴブリンに先程の相手の打ち下ろしを真似るように剣を振り下ろした。SPが体から抜けていく感覚がある。今度こそ下級剣術の技能がきちんと発動したようだ。騎士ゴブリン頭蓋が岩石硬化の剣によってひしゃげていく。して顎の辺りまで剣が達した瞬間に、その哀れな姿は霧散し、魔石と一組の籠手が地面にカラン、カラン、カランと音を立てて落ちた。
そしてヨースケは位階が上がるのいつもの感覚に包まれた。
次の話もなるべく早くあげられるよう頑張ります。




