スライムフィーバー
*前話に結構な量の加筆修正を加えました。タイトルに(仮)が付いていたバージョンしか読んでない方は後半だけでも読み返して貰えると嬉しいです。
今、ヨースケの目の前20cmぐらいにモジョモの顔があった。
今までじっくりと顔を眺めたことなどなかったので、ついまじまじとその細部まで眺めてしまう。
肌の質感は非常にきめ細かい。本人の申請によると肉体年齢は約16歳らしい、しかも引きこもりだった、つまりむだに日光を浴びていないということである。そりゃ肌は綺麗な筈である。
顔の彫りは思ったほど深くはないが、それでもやっぱり日本人よりは深い。丁度地球の白人と日本人の中間ぐらいだろうか、妖精族の血が入っていると言ったがそっちはどんな感じなのか少し気になった。
睫毛は思ったよりも長い。頬や唇はぷっくりとしている。分かっていたが目鼻立ちは結構はっきりしていて、10人中10人が見て美人だと言うはずだ。……動いて喋ってなければ。
もう完全に目は覚めていた。しかしモジョモはまだ寝ている、随分と幸せそうな顔で……。ふと、ここは彼女にとってそんなにも安らげる場所なのか気になった。その答えは分からない。まあ元々この世界を見て回りたいと思っていたのだ。何とかモジョモを彼女の実家に持って行ってやりたいと思う。まあそれもおいおいだ。
ヨースケはモジョモをどう起こしたものかと思案しつつ再びその顔をマジマジと眺めてしまう。一瞬、「このまま3日以上眺めていても飽きないかもしれない。」と馬鹿なことを思ってしまった。あとは「黙っていたら清楚系で行けそうだ。」と言う感想も浮かんだ。
そんな下らないことを考えていると突然彼女の口もとがにへらっとだらしなく緩んだ。よく見るとその縁に大きなヨダレがひっかかっている。それがいまにもヨースケの顔に落ちてきそうな感じででろーんと伸び縮みしている。
まずい。
今まではモジョモがほぼ体の真上に浮かんで寝ているせいでベッドから起き上がれなかったのだ。このままこの危険な爆撃を受けるわけにはいかない。体を少しずつスライドさせて危険区域から脱出を図る。
そもそもこのヨダレは本当に物理現象としてこの世に存在しているのだろうか?モジョモの本体と同じで触れる事が出来ないのではないのだろうか。それを身を以て検証するつもりはない。どう考えてもそんなのはただの危険思想である。
ヨースケがなんとか上手い具合にベッドから抜け出せそうな体勢になった時、モジョモが空中でごろりと寝転がり再びヨースケの真上にきた。相変わらず無自覚にイラっとする行動をしてくれる。しかしその回転の方向は理想的であり、ヨダレは再び口の中に納まっていた。モジョモは直前と比べて口腔内に違和感でもあるのか整った顔を歪めてモゴモゴと口を動かしている。非常に子供っぽい仕草だ。
ヨースケはアホらしくなってそのままモジョモの身体をすり抜けるように起きた。その体をすり抜ける瞬間、ぞくっと寒気がする。以前も思ったがこの辺は非常に幽霊っぽい。
しかし、本物の幽霊は寝ないと思うのだが……。やはりモジョモはどこか変わった幽霊な気がする。
鑑定眼を使いたい衝動に駆られたが止めた。自分がされたら嫌な事はしない主義だ。ばれてモジョモとの仲がこじれるのもめんどくさい。
こっちが体をすり抜ける時にさすがのモジョモでも目は覚ますだろうと思っていたのが、すやすやと眠りつづけている。特に起こす理由もないので今日1日の準備を始める、これが終わったらモジョモを起こしてやることにした。
朝飯を食べた後、昨日作った装備を体に括ってモジョモを起こし、げるるん達と合流するため平野部を目指して歩く。モジョモは眠そうにあくびをしていた。
平野部の端に辿り着くと予想外なことが起こっていた。地脈の噴出口付近で魔物7体分の反応が感知されたのだ。従魔契約の効果なのかその内の1体がげるるんであることはわかる。すぐ側のやや小さめの反応はプチブルースライム・エレメントだろう。
別に彼らが戦っているとか、弱っているとかそうゆう感じでもない。
おそらく気配の質から言って普段島中を闊歩しているスライム・エレメントたちの一部だろう。
海蛇に気付かれると困る海岸部と違い、ヨースケは平野部や山間部では、『気疲れしそう』という理由から気配遮断や魔力遮断なんかの技能を使っていないことが多い。
後はそうしているといちいちスライム・エレメントに会わなくて済むので、モジョモがスライムを見て不機嫌にならないという理由もあった。
今回もいつものように遮断系の技能を使わずにげるるん達の方へと近づいていったのだが、彼らとの距離が50mを切っても、気配の全てにまるで逃げる素振りが見られない。さすがにここまで近づくとモジョモもスライム達の存在が感知できているのかその顔がやや強張っている。
「嫌なら俺だけで様子を見てくるけど……。」
そう言ってやると、
「緑のやつさえいなければ大丈夫よ。」
と言われたので、『望遠』の技能で素早く確認する。げるるんにプチブルー、後はただ透明な奴が3体と、後は黄色と白い個体が1体ずつだった。緑はいない。
「大丈夫。緑のやつはいないぞ。」
そう教えてやるとあからさまにホッとしていた。俺も別の場所で緑の個体を見かけたら気をつけておこう。
スライム・エレメント達の側まで行くと、彼らはどうも井戸端会議のようなものをやっている様だ。お互いふるふると震えあっている。どうもげるるんとプチブルースライム・エレメントが話題の中心らしい。今はげるるんが自分の上に昨日よりも少しだけ大きくなっているプチブルーを乗っけており、さらにその周りを他のスライム・エレメントたちが囲ってお互い揺れあっている。
よく考えてみれば、げるるんはプチブルーを生み出すことによってスライムリーダー・エレメントになったわけだから話題の中心になりやすいのかもしれない。ひょっとしたら周りのスライムに指示を出せる可能性もある。
邪魔するのもなんか悪い気がして、少し離れた位置にあるレベルダウンの罠を踏みに行く。トラップを踏んだ瞬間声を我慢したせいで変な風に体がびくりと動いてしまった。そしてスライム達の方からざわりとした雰囲気が伝わってきた。げるるんに彼らの反応の意味を尋ねたのだが珍しく意思疎通が上手くいかなかった様だ。まあ、こんなこともあるだろう。人と魔物だしな……。
スライム達のすぐそばまで戻って来たが少し後ずさりされただけで結局逃げ出さなかったのでスライム達のステータスを鑑定していく。スライム達のステータス値は大体似た様なものだった、それぞれの技能に関しては、げるるんと同じ斬撃耐性(Lv10)、物理耐性(Lv5)、魔力感知(Lv3)、融合、分裂、配下創造を基本として持っているが精霊魔術を持っている個体はいない。
代わりにげるるんと同じ色的に無色透明の3体はそれぞれが、『形態変化(トランスフォーム(Lv3)』、『祝福〈拾得〉(Lv3)』、『下級無属性魔術(Lv3)』を持ち、黄色い個体は『下級土魔術(Lv3)』、『土耐性(Lv3)』を、白い個体は『下級光魔術(Lv3)』、『光耐性(Lv3)』を持っていた。
こいつら融合したらかなり強いんじゃないか?
「報酬に魔石を出すから俺を手伝ってくれる様にこいつらに頼めないか?」
ものは試しとげるるんに言ってみる。
げるるんは「了解。」という様な感じのジェスチャーを体から触手を出して行い、しばらく何かスライム同士でまたふるふると震えあった。
2分ほど震えあっていたかと思うとどうやら説得に成功したらしく全スライム・エレメントがヨースケの前に整列していた。
「融合はできるか?」
と聞くと。隣同士の個体で融合を始めた。プチブルーだけは融合に参加できない様だ。6体がげるるんと色つきの2体の計3体になり、さらにげるるんが融合したものと白いスライム・エレメントが融合した者が融合して2体になった。しかし融合はそこで終わった。どうもげるるんのジェスチャーによると融合数が同じでないと融合不可能らしい。
どこかの人をダメにするクッション並みに大きくなったげるるんを鑑定してみる。
ホワイトスライムリーダー・エレメント
Lv(位階):4
種族:妖精族・スライム種
状態:良好・飼育従魔(所有者:ヨースケ)
HP(生命総量):40/40
MP(魔力総量):60/60
SP(体力総量):30/30
ATK(最大筋量):15
DEF(物理耐性):300
MATK(最大魔術行使力):45
MDEF(魔術耐性):25
AGI:(敏捷性):10
技能:
斬撃耐性(Lv10)、物理耐性(Lv5)、『下級光魔術(Lv3)』、『光耐性(Lv3)』、下級精霊魔術(Lv3)、魔力感知Lv3、『形態変化(トランスフォーム(Lv3)』、『祝福〈拾得〉(Lv3)』、融合、分裂、配下創造
詳細情報:
妖精族でありかつスライムという魔物でもある非常に珍しい種族。リーダーの名を冠するとおり、自身の技能で創造した配下を従えることができる。その最大数は位階の大きさに依存する。配下はプチ・スライム・エレメントとして召喚される。スライム・エレメントと融合することで新たな力を得ることもある。
中々強くなっている。残った技能は黄色い個体の方なのだろう。しかし今からダンジョンに行くとして、このまま2匹も面倒を見るのはめんどくさい。そもそも黄色い個体の方は従魔状態じゃないからイマイチ意思疎通に自信が持てない。
そこで黄色い個体が下級土魔術が使えることに思い至った。俺が歩いてきた方へ道をつくって貰おう。凸凹の地面を魔術でひたすらならして固めるだけの単純なお仕事だ。ここにはクラル草も山ほど生えてるし、MP回復には事欠かない。
げるるんに頼んで指示を出して貰うと特に何嫌がる様子もなく地面をならしはじめた。体を少し平べったく大きくして黄色いスライム・エレメントの通った場所が綺麗な道になって言っている。その進む速度は実にゆっくりとしたものだが今後島に道を張り巡らせるのにこいつは大活躍しそうだ。魔石を沢山とってきてやろう。
黄色いスライム・エレメントが道作りを頑張り始めてくれたので、残った俺たち2人と1匹も、いつもの様に試練の祠を目指すことにした。
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