スライムも食わないような喧嘩
個人的にモジョモは残念さ4ウザさ3おねいさん度1シリアス1エロ1ぐらいでそのウザさがかわいさに変わることを目指してるキャラです。
どうですかね、ただうざいだけですか?読んでくださっている方がキャラをどのように捉えてくれているのかすごく気になります。
*12/17加筆修正しました。
「そ、そんなにスライムが好きなの?」
なぜかモジョモはひどく焦っているようにも見える。そんなモジョモの様子にヨースケはスライム・エレメントにスライムの核石を渡そうとしたままの姿勢で止まってしまう。スライム・エレメントの方も受け取ろうと伸ばした触手を止めていた。なかなか空気の読めるやつである。
「いやいや、なんでそういう話になるのさ。」
まーた何か突拍子も無い発想をしている。とヨースケの直感が囁いていた。いや、もちろんこのスライム・エレメントについて好きか嫌いかで聞かれるとそりゃ好きとしか言えない。けどそれはペットのように癒しを提供してくれるからである。なんかモジョモのセリフからだと不純な何かを感じずにはいられない。だから多分彼女の言うような「好き」はありえない。
「き、昨日もそいつを抱きしめて寝ていたの、私は知ってるのよ。」
そんな家政婦は見た。みたいな言い方しなくても……。
「ん?それがどうしたんだ?」
素で返してから思い至る。
まてよ、ひょっとしてこっちの世界ではスライムがナメクジみたいな扱いだったりするのか?そう考えるとそれを抱きしめて寝る俺は……うむ。すごい変態である。
いや、こいつはスライム・エレメント、つまり妖精である。いわばスライムがナメクジのような存在であったとしてもナメクジという存在から一線を画した存在のはずだ。いわばカタツムリのような……ってあんま変わってねーな。
「な、……開き直った。」
俺がバカなことを考えている間に、モジョモはモジョモで愕然としている。いちいち大げさな奴だ。しかしこの世界でのスライムの一般的な立ち位置はその内それとなく確認しておこうと心に誓う。
「そもそもテイマーにとっての従魔ってペットみたいなもんだろ。一緒に寝ることに何の問題があるんだ。」
「な、……ペットって、あなたわたしをそんな目で見ていたなんて……、な、なんて変態なの……。私が……ペット。」
そしてなんか顔を赤くしてモジモジしながら「だから私と同じ部屋で一緒に寝たのね……。」とブツブツ言ってい始めた。何を想像してるんでしょうねこのむっつり娘は!まさかペットのように扱って欲しいってことはないよね?
「いや、お前は別に俺のペットじゃないでしょ。そもそもそんな扱いしてないよね、俺。」
努めて冷静に対応する。これ以上こいつとの関係が変にこじれたら実生活に影響が出そうだ。いや、すでに出てるのか今。
「そ、そうよね。……って騙されないわよ。一緒の部屋で寝ることを強要したくせに。」
そんな事実はないのだが、あと別に騙そうとしてない。いつの間にかこいつの中ではそういうことになっているらしい。これだから女は……。
これはあれだ。女性によく見られる議論と感情のすり替えだ。実に、実にイライラする。しかしこういう結論へと至る今の自分の思考過程を鑑みると、本格的に俺の前世が心配になってきた。
とにかくこの思考過程はよくない。それがどれだけ客観的な視野を持ったものだったとしても、今俺が対面している問題をこじらせるだけなら、それにはなんの意味もないのだ。
これは結局のところこの前の状況と同じだ。彼女が何を言いたいのか、そして何を言って欲しくて、何をして欲しいのかを知ること。それを知ることだけがこの問題を解決へと導く。ってかこの思考過程も既に前世に引きずられてる気がする。とにかく今はうまい具合に言葉をつないで彼女の真意を聞き出すしかない。
ここは殊勝にそうにこう、そうただ殊勝に……。
「色々と俺の態度が嫌だったのならすまん。俺なりにお前には気を使っているつもりだけど、それが全然足りないのも分かる。俺は田舎育ちでほとんど師匠と2人暮らしだったからその辺のさじ加減がわからないんだ。まあこれも言い訳か……。
ベッドももう立派なのを作ったわけだしそこは許してくれよ、な。今後は2階はお前が1人で使っていいから。」
と申し訳なさを前面に出しつつ説得を試みるが……。
「そういうことが言いたいんじゃないの!」
しまった。違ったか。「じゃあどういうことがいいたいんですかね!」と言い返したいがそうもいかない。ヨースケは何か言わなければと言葉を探していると、
「とにかく、そいつと一緒に寝てはダメよ!」
「えー、こいつ抱いて寝ると冷たくて気持ちいいんだよ。めっちゃ熟睡できるんだよ。睡眠は重要だぜ。それともなんか理由でもあるのかよ。」
しまった、素で反応してしまった。しかし正に後の祭りである。
「私がイライラするの!」
なんと言うストレートなワガママ!これが世に言う自己中心天動説と言うやつか、世界は彼女を中心に回っている……。
ちらっとスライム・エレメントの方を見るが、特に気にした様子もなくいたっていつもの様子で俺たちを見ている。一瞬こいつに、「女のワガママは聞きすぎても駄目よ。」と言われた気がするが、確実に気のせいだろう。
しかしうーむ、議論がどんどん面倒くさい方向に向かっている。どうしたものか……。
「わかった、わかったからせめて代案を出せ。」
と言うと、モジョモはうーん。うーん。とうなりはじめた。その表情からは何か考えているのかはわからない、それはただ何かに悩んでいるだけのようにも見えるが。とりあえず怒ったままなのか顔は真っ赤だった。俺はてっきり「そこはあなたが考えなさいよ。」とか言ってくると予想していただけにちょっと肩透かしだった。そしてモジョモは何か決意したような表情になると、
「わ、私が……一緒に寝るわ。」
ナンデ……?なんでそんなこといちいち上目遣いで言ってくるんでしょうねこの女は!
「それ別に涼しくなくね?何、俺の命でも狙って涼しくさせる気?精神的に!」
ついそう返してしまった。全く、なんて危険な事を言い出すんだ。
「そんなことしないわよ!と・に・か・く!そいつより私を優先しなさい!」
と言って彼女はスライム・エレメントの方をビシッと指差した。
あ、なるほどそういうことですか。最初からその一言を言ってよね。「するする。俺、優先しちゃうよ。」……なんていうかバカ!さっさとそれ言えや!
まあ落ち着け、俺。要するに俺に構って欲しかったと。小学生の従姉妹かよこいつは。
多分その一言を言うことをずっと引き延ばしていたのも無意識なんだろうな。今まで少しずつ溜まっていたフラストレーションをガス抜きする為にぎゃーぎゃーわめいていたのだと思われる。典型的な女性の怒り方だな。
そう一度理解してしまうともういいかなって気になる俺は一体何なんだろうか……。この無力感は何なんだろう。あれ?わけもなくただ哀しい。
思うに俺は前世でこんな感じで女性のワガママを聞いていた気がする。まあ古白も「思い出せない前世は無理に思い出すな。」って言ってたしあまり思い返さないようにしよう。どう考えても思い出さない方が幸せな記憶だろうし……。
よし、とりあえず今回は謝罪方式でいこう。
「わかったよ。俺が悪かったよ。気が利かなかったし、お前もちゃんとした女性なのにちょっと雑に扱い過ぎたよ。」
「ホントよ……。」
よし、このままの感じでなんとか行けそうだ。それでも譲れないところは譲らないようにしないと……。
「でも、このスライム・エレメントは俺たちがこの島を出ていくのにもきっと役に立つはずだから俺たちの仲間にするぞ。その事はちゃんと我慢しろよ。無理に仲良くしろとは言わんが……。」
またモジョモが「うー。」と唸りだし始めたので、
「……だからその為にも、こいつの名前をお前が決めろ。ちゃんと仲間内での上下関係を叩き込むんだ。」
そうまっすぐ目を見て行ってやる。
「ほら、俺になんとかできそうなわがままぐらいは聞いてやるから、な。」
さらにフォローしてやると、モジョモはさっきよりは若干抑えた感じで唸った後、
「……わかったわ。そいつの名前は私がつける。」
と言ってくれた。ちょっとは落ち着いてきたようだ。俺はスライムの方を見て。
「そういうことだ。こいつに名前を付けてもらえ。変な名前だったら付けなおしてもらってもいい。それが終わったらこの核石をやろう。」
そう言ってスライムの核石を見せてやると、スライム・エレメントの方も状況を理解したのか、いつもの肯定してる感じの動作をしてくれた。まあ要するにプルプル体を揺らしただけなんだが。
しかしこのスライムは中々大物である。俺たち二人がひたすら言い争いをしていても時たまふるふると震えているだけだった。まあ出会いからして、食い意地が張りすぎの上、相当図太い行動を取っていたからその性格も分かると言うものだ。
モジョモが名前を考え始めたようなので、俺は改めてステータスチェックをする。
ヨースケ
Lv(位階):3
種族:猿人族
状態:普通
HP(生命総量):273/165(+165)
MP(魔力総量):213/165(+165-60)
SP(体力総量):273/165(+165)
ATK(最大筋量):330/165(+165)
DEF(物理耐性):330/165(+165)
MATK(最大魔術行使力):330/165(+165)
MDEF(魔術耐性):330/165(+165)
AGI:(敏捷性):330/165(+165)
技能:
異世界言語(Lv1)、……、GP:32P
何度もレベルダウンを繰り返したおかげで、俺のステータスの位階ごとの上がり方の法則がつかめてきた。おそらく位階が1上がるごとに基礎ステータスは10上昇している。そして位階が1から2に上がる時に1、位階が2から3に上がる時に2だけ『成長の腕輪』によってステータスの値が追加されている。
これでステータスの目標値を定めた場合、どのくらい頑張ればそこに到達できるか大体の予測がつけられることになった。あとはこの仮説が正しいことをレベルダウンの試行回数を増やして確認しよう。
どのくらいで前のステータスに戻れるのか確認したい。
一方でGPについてはまださっぱりだ。なんか強い奴を倒した時に手にだけ入っている気はするが、そんなたん樹な法則だったら古白辺りは知ってそうだけど……。まあ彼も全知全能というわけではないだろう。なんとか自分で条件を探し出すしかない。
とりあえず今日もさっそくレベルダウンの罠を踏むことにする。またしても何故かスライム・エレメントが俺のそばからすすすっと少し離れた。あれ、やっぱりこれってそんなに変なことなのか?
しかしよく考えてみれば位階が落ちるということは自身を構成する魂魄そのものの大半を無理やり剥ぎ取っているに等しい。確かに結構きついような気がするが一番最初に罠にかかったときの感覚が酷すぎて今の俺にとっては「まあ、こんなもんか。」って感じなんだけどなあ。
そして罠を踏む。レベルダウン時の全身へのぞくっとした感触に、つい「ふおおおおー。」と変な声が出たがそれもすぐに収まった。モジョモは変な目で見てるし、スライム・エレメントがさっきより離れた位置にいる気がする。気のせいだよね?
ステータスチェックは俺の仮説を裏付けるものだった。ちなみに今のステータス数値は次の通りだ。
Lv(位階):1
HP(生命総量):273/145(+145)
MP(魔力総量):213/145(+145-60)
SP(体力総量):273/145(+145)
ATK(最大筋量):290/145(+145)
DEF(物理耐性):290/145(+145)
MATK(最大魔術行使力):290/145(+145)
MDEF(魔術耐性):290/145(+145)
AGI:(敏捷性):290/145(+145)
一通りの検証作業が終わって考える。さてこれから何をしようか?まだ昼も回ってないし。MPにも余裕がある。もう一度ダンジョンアタックもしたいが、そうだ、ルンガ粟の田んぼを作ってみるか。でも正直、川沿いにびっしり生えてるからよく考えなくてもそこまで必要性を感じないんだよな。ルンガ粟に関しては他にも、場所が違うとその生育具合も随分とバラバラな流ことがわかっている。なのでこの島はどうやら一年を通して似たような気候ではないかと考え始めていた。
あれ、そう言えば試練の祠はあそこだけじゃないみたいなことをモジョモが言ってたな。雰囲気的には中は同じ場所に繋がってるみたいと言っていた気がするが……。
今だ名前で悩んでいるモジョモに場所を聞くと、あの時は身を隠しながら森と平野の境目を移動してたから多分森沿いに移動したらあるはず、と言うので、探してみることにした。
実際30分もたたないうちに新しい試練の祠が見つかった。こっちの方が早く来れる気がする。山裾が急峻になり始める崖のような場所にそれっぽい洞穴ある。いつもの要領で、その横に倉庫と壺とリヤカーを作り、その後昼ご飯を食べてダンジョンアタックを開始した。ちなみに突入前にスライム・エレメントのステータス確認をすると
スライム・エレメント
Lv(位階):2
種族:妖精族・スライム種
状態:良好
HP(生命総量):20
MP(魔力総量):40
SP(体力総量):20
ATK(最大筋量):6
DEF(物理耐性):110
MATK(最大魔術行使力):35
MDEF(魔術耐性):11
AGI:(敏捷性):6
だった。技能欄に変化はない。今回も5階層の主を目指すことにする。できればこっちの6階層も確認しときたいんだが。
完全に今朝の焼き増しのような迷宮行が始まった。1、2階層では俺がひたすらスライムを狩り続け、3、4階層ではゴブリンが現れたら1匹だけ残し弱らせてからスライム・エレメントに殺させる。もちろん素材はどんどん貯めていった。やはりスライムの核石はかなりのレアらしく全然でない。モジョモも相変わらずの応援要員だ。気が付いたらすぐに5層に到達していた。俺はLv2になっていた。GPはやはりというか上昇していなかった。
Lv2になった時にステータスを確認して気付いたのだが。MPやSPのステータスの値が半分以下だとLv上昇時に最大値の半分まで回復することがわかった。これで岩鯨を倒した時に急に元気になった理由がわかった。それに今後はダンジョンアタック前にMPやSPを使う作業を気にせずにすることができる様になって万々歳である。そのうちあの平野の地脈の上に何か大規模建設でもしてやろうかと思う。まあ薬草畑などは残さないともったいないだろうけど。
5階層を奥へと進んでいくと周囲と比べてやや大きな気配を感知した。おそらく階層の主だろう。
主の場所へ行くとやや大きな赤いスライムがいた。見つけるなりモジョモは「ころせー。」と叫ぶ。魔力弾を射ると4つに分裂し、少し驚いたが、それをいつもの様に散弾で射るとあっさりと終わった。そしてLv3になった。まあ、こっちはあっちの祠よりスライムが多かったせいで俺が魔物倒してばっかりだったし。今の魔物を殺すペースはひたすら気配の多い方に進んでいる為、スライム・エレメントに殺させている時間を除けば、素材回収と移動を含めても5分で10体位ぐらい殺してる気がする。リヤカーの音のせいで周囲の魔物がどんどん集まってくるのも影響している気がする。まあその分、帰りは全然魔物を見かけないのだが……。
それはそれとして目の前には6階層への道がある。下の様子を確認するためにモジョモの奴をどうやって説得しようか……。
感想、評価、誤字脱字の指摘は感謝しかないです。わずかですが日々伸びて行くアクセスに本当にこの小説を読んでくださっている方々が増えていることがわかってとても嬉しいです。読んでくださってる方は本当にありがとう。ご意見ご感想お待ちしています。




