家庭内別居
モジョモの残念具合をもっと上手く表現できないものか……。
*12/17加筆修正しました。
「家庭内別居?」
ヨースケはそう聞き返す。モジョモもまた随分と突拍子のない事を言い出したものである。というかいったいどういう意味で使ってるんだ。家庭内別居って?まあ確かに、俺とモジョモ同居しているとは言えなくもない状況だ。しかし別居できるほど広い家ではない。
「すまん、意味がわからないんだが?」
「そうね、もしあなたがそのスライムを飼うと言うのなら。私はあの家の2階に住むから。そいつとあなたは1階だけ使いなさい。あなたがそいつをどこか遠くに捨てて私にちゃんと謝るまで、わたしは一切口を利きませんから。」
そう言ってプイッと横を向いて黙り込む。実にめんどくさいヤツである。しかもこいつはさっきの俺の反応でしばらくは無理やり指輪を外さないと思ってるフシがある。そうじゃなきゃ絶対こんなことは言わん。
「いやあれ俺の家だし、お前の家じゃないし。」
「何言ってるの、あれは2人の家でしょ。それに私の部屋とベッドをちゃんと作る話はどーなったのよ。うら若き乙女に一緒の部屋で寝続けることを強要しといてよくそんなことが言えるわね。私は私専用の部屋ができるのをずっと待っていたのに一向に作る気配ないし。」
な、なんという図々しさ。しかも口をきかないといいつつめっちゃ口きいてるし。俺は開いた口がふさがらない。とりあえず、ずっとスライムを持っておくのもあれなのでこっちは脇に置いておく。スライムは特に何も気にしてないようで横でふるふると揺れていた。
しかしどうしたものか。また変なヘソの曲げ方をしたものである。もう一度指輪を外して対処するのは今以上に関係が悪化しそうだ。
やはりこういうのは時間が必要だろう。それに今言い合ってもお互い唯の感情論の争いに陥りそうだし、ほとぼりが冷めるまでしばらくほっておくことにする。
「分かった。俺の荷物は一階に下ろすわ。ベッドもお前用に改造してやろう。」
と言うと、モジョモは「ななな。」とわなないた後、
「こ、後悔しないことねっ。」
とモジョモは言って「うー。」とうなりながらこっちを睨み始めた。全く仕方のないやつである。本当、スライムのことなんか気にしなきゃいいのに。
そして、俺たちの謎の家庭内別居?が始まった。
もちろんそれに際して家屋の改造を行った。白い砂使ってベッドを改造してやった。しかも天蓋付きである。しかも宝玉を飾る皿まで作ってそこに宝玉を置いてやった。荷物は一回の棚に全て戻し、日時計の管理や風呂に入る際の水を貯水槽に貯める時に3階に上がる必要があるので外に3階への階段をつくり登れるようにする。というこれは作った後、最初から作っとけばよかったと思うほど便利になった。
この間、従魔にしたスライム・エレメントの方は「倉庫のものを勝手に食べないこと」と「2階には上がらないこと」を厳命して、それ以外は自由に行動させていた。家の周りを動きまわっており、何か色々と調べているようである。まあこれからこいつもここで生活するわけだし、周辺の様子を知っておきたいのだろう。
ある程度の作業が終わった後、レベルダウンの罠を踏み忘れていることを思い出してちょっとだけ落ち込んだ。
2階に上がったまま降りてこないモジョモはしばらくほっておくことにして、スライム・エレメントを連れて海に行く事にする。
海辺に着いたら先ずはまた砂浜から新しい貝を採取して、生簀に放り込む事にした。さすがにこの浜から新たな貝を見つけるのがつらくなってきているのでそろそろ隣の浜へ行った方が良いのかもしれない。
また、大きな魚が罠に複数かかった時のためにそういった魚用の生簀を岩場に作った。海と岩の格子で隔てて海水の質も維持できるようにした。荒れたときにも逃げないように岩で格子の蓋も作った。食料供給の安定化は重要課題だ。やはり近いうちに農地の作成にも取りかかるべきだろう。しかしその場合は毎朝夕のスコール対策を考えないといけない。下手な畑だと土壌が流出してしまいそうだからだ。ルンガ粟なら水田形式でなんとか栽培できそうだが、うまく管理できるだろうか?まあ何事も挑戦である。明日にでも余裕があれば平野の川のそばに試験水田でもつくってみようと思う。
罠にかかった魚たちをいつものように処理していると。スライム・エレメントが魚の内臓を食べ始めた。試しに岩場にいたフナムシ的なやつを与えてみても問題なく食べた。意外な事に雑食性である。よく考えてみれば、魔石の粉なんて俺が作らなければこの島では普通に手に入るものではない。そう考えると、普段は何かしらのものを食べていたに違いない。ひょっとするとこの島に虫がやたらと少ない理由がそれかもしれない。そう考えるとスライムは余計攻撃できないな。モジョモを説得できそうな材料が増えたな。さすがに引きこもり魔女が虫好きということはないだろう。
今日は夕食用に罠にかかったウツボを引き裂いて持って帰ることにした。捌いたウツボの白身を見ていると炭火焼がしたくなった。白焼きの蒲焼でも十分にうまいだろう。なんとかソースが欲しいが、まだ食べてないがカキに近い貝を岩場で見た気がするのでそのうちなんとかオイスターソースを作れないだろうかと悩む。しかし作り方がわからない。それに材料を完全に揃えるのは中々骨が折れそうである。この辺りの解決策も色々と考えなければならない。
後は最後に最近何かと使用する白い砂を補充する。こっちもそろそろ質と量の関係から他の浜から取るようにしたほうがいいかもしれない。一通りのことが終わったので、雨が降る前に家に戻ることにした。
結局、資源の有効活用を含めて炭焼き小屋を作ることに決めた。木酢液も取れるようなちゃんとしたやつを建てることにしよう。家に帰りながら炭焼き小屋の構造を考えていると、煙の流れる方向を考えたほうがいい気がして3階に風見鶏をつけることにした。炭焼き小屋はしばらく様子を見て1日の風の変化がどうなっているかわかってきてから建てると決めた。材料は家の横にある山盛りの土を使おう。
その内気が向いたら陶器作りに挑戦でもして見るのもいいかもしれない。岩製の皿の方が丈夫だが、質感や軽さは陶器の方がずっといいだろう。
その後家に着いたら倉庫整理をして燻製器に火を入れ、新しく作った外の階段から3階に上がり風見鶏を作る。雨が降り出したので岩から新しいベッドを作り一階に配置する。その後は晩飯を作る事にした。今日は結構MPを酷使したのでクラル草と干した貝類を煮てスープを作ることにする。ご飯を作っている最中に雨は止んだ。
モジョモは完全に2階に引きこもってしまったようだ。少し心配になり、試しに呼んでみたがまるで反応がない。しばらくの間、魔力感知を頼りにその様子を探ってみると、どうもこっちが外にいて作業しているときは窓からこちらの動きを確認しているようだが……。まああまり心配なさそうな感じなのでほっとくことにしよう。
しかし夕方に海について来ないのは予想外だった。彼女は「ある程度の距離で一定時間以上離れるのはきつい。」みたいなことを言っていたので、てっきりなんやかんやいいながらついてくると思っていたのだが、今回は随分と意固地になっているようだ。まあしばらくはこのままにしとこう。
貝や魚は串に刺して焼いてみたりもした。もちろんスライム・エレメントにも食べさせた。干した貝に随分と喜んでいた。味が濃いからだろうか。モシャモシャと美味しそうに食べる様子は随分と癒される。ついプルプルとしたそのボディを撫でてしまった。まあ嫌がるそぶりを見せなかったので本当に飼い犬や飼い猫のように扱ったほうがいいのかもしれない。従魔は主の所から去ることもあるみたいだし。
食事が終わるとその後は昨日忘れていたカゴ作りだ。倉庫に保管していた竹もどきを岩のナイフで細く割る。それを編んで背中に背負うカゴを作るのだ。背負う大きなカゴはこの周辺で使う用と試練の祠で使う用の2つ作るつもりだが、1つ作った時点でいい時間だったので寝ることにする。スライム・エレメントが割いた竹もどきをひとうひとつ手渡ししてくれたのはすごい助かった。やはり随分と賢い個体のようだ。作業の後、干した貝を与えると大変喜んでいた。
いつものようにベッドの上に寝袋のスタイルで寝ようとするとスライム・エレメントがやってきたので抱き枕のような感じで寝ることにする。ひんやりプニプニして熱帯夜のこの環境には素晴らしい。いつも以上にぐっすり寝れた気がする。
昨日はぐっすり眠れたお陰もあってか、朝一でステータスチェックをすると全回復していた。
ヨースケ
Lv(位階):2
種族:猿人族
状態:良好
HP(生命総量):304/152(+152)
MP(魔力総量):244/152(+152-60)
SP(体力総量):304/152(+152)
ATK(最大筋量):304/152(+152)
DEF(物理耐性):304/152(+152)
MATK(最大魔術行使力):304/152(+152)
MDEF(魔術耐性):304/152(+152)
AGI:(敏捷性):304/152(+152)
技能:
異世界言語(Lv1)、全魔術属性開放、魔眼(未開放)〈1/5〉、
生命強化(Lv10)、肉体強化(Lv10)、体力強化(Lv10)、
魔力強化(Lv10)、敏捷強化(Lv10)、
毒耐性(Lv3)、麻痺耐性(Lv3)、混乱耐性(Lv3)、恐怖耐性(Lv3)、
石化耐性(Lv3)、盲目耐性(Lv3)、呪詛耐性(Lv3)、洗脳耐性(Lv3)、
身体操作(Lv10)、魔力操作(Lv10)、魔力精密操作(Lv10)、並列操作(Lv1)、
気配察知(Lv10)、魔力察知(Lv10)、気配遮断(Lv10)、魔力遮断(Lv10)、
下級刀剣術(Lv10)、下級弓術(Lv10)、下級投擲術(Lv10)、
下級狩猟術(Lv10)、下級忍術(Lv10)、下級暗殺術(Lv10)、
下級無属性魔術(Lv10)、下級火魔術(Lv10)、下級水魔物(Lv10)、
下級風魔術(Lv10)、下級土魔術(Lv10)、下級治癒魔術(Lv10)、
下級魔法陣術(Lv10)、紋章術、刻印術、
下級道具作成(Lv10)、下級魔道具作成(Lv10)
下級隠蔽(Lv10)、中級隠蔽(Lv10)、上級隠蔽(Lv10)、
忍び足、無音移動、擬態、危険察知、潜伏、
GP:32P
よく見るとレベルが上がったにも関わらずGPが上昇していないことに気づいた。古白は何かレベルアップしても上がらないこともあるみたいなことを言っていた。これも検証が必要だろう。個人的にはGPが一番上げたい項目なのでこの辺の検証もなんとかしてみたい。
朝飯を食べ、レベルダウンの罠を踏むために草原を目指す。今日はリュックではなくカゴを背をって移動だ。スライム・エレメントがカゴに入りたがったので入れて運んでやった。完全に犬猫と同じ扱いになってきた。流石に距離が離れすぎて家の中にいられないのかモジョモは20mぐらい後ろをブツブツ言いながらどんよりとした雰囲気を撒き散らしながら付いて来ている。一度だけ風に乗って「新参に寝取られた……。」という非常に意味不明なセリフが聞こえてきたが深く考えることはやめた。あいつの発想はよく分からんとこがあるからな。
草原にポツンとあるレベルダウンの罠のそばまで行き、心を強く持ちながらレベルダウンの罠を踏む。ちょっと「ウひい。」と変な声を上げてしまったがそれだけだ。
横ではスライム・エレメントが罠を踏もうとする俺を 「こいつマジか?」みたいな感じでスススッと離れていった。それを見たモジョモはフッをれを見て笑っていた。いや、「そこで笑うんなら仲良くしろよ。」と思う。
ステータスがそこまで下がらないせいか、あるいは慣れてきたからなのか、確かに一瞬だけくらっときたが前みたいにへたり込むことはない。ステータスをチェックすると
ヨースケ
Lv(位階):1
種族:猿人族
状態:普通
HP(生命総量):284/142(+142)
MP(魔力総量):224/142(+142-60)
SP(体力総量):284/142(+142)
ATK(最大筋量):284/142(+142)
DEF(物理耐性):284/142(+142)
MATK(最大魔術行使力):284/142(+142)
MDEF(魔術耐性):284/142(+142)
AGI:(敏捷性):284/142(+142)
技能:
異世界言語(Lv1)、……
やはり以前よりもステータスが増している。今日からはこれの方法でステータスをガンガン上げていくことにする。クラル草をある程度摘んだらさっさと祠に向かうことにした。
今日はいろんなことの検証のためにもLv3以上にしてから踏んでみようと思う。昨日と同じようにダンジョン内の魔物達を虐殺しながら進む。昨日と違う点はスライム・エレメントを見学させていることと、レベルが上がっても突き進み目的地が5階層なことだ。スライム・エレメントは実際には別種族だからなのかスライムを消滅させても特に気にした様子はなかった。モジョモは殺されていくスライム達を見て少し溜飲が下がり始めたのか20mぐらいだった距離が10mぐらいにはなっていた。それでもいつもに比べると随分と遠いが。
そんなこんなで3階層に到達する。ここは階段と階段の距離が近い層だ。最短距離で階段に向かうとすぐに到達してせっかく感知している魔物を全て倒さずに下の階層に行くことになってしまうのでガンガンと音を立ててゴブリンとスライムを積極的に集めて殲滅した。
魔石と素材がどんどんたまってゆく。ゴブリンの牙の使い道が今の所ないが、とりあえず貯めておく。4階層では初めてスライムの核石がドロップされた。スライム・エレメントがえらく欲しがっていたが、何でもすぐ与えるのは教育上よくないと判断し戦闘をさせ、それがある程度成功すれば与える事にした。鑑定もこの祠をでてからゆっくりすることにする。
次に来たゴブリンの群れを1匹を残して遠くから殲滅し、向かってきた1匹をステータスに物を言わせて押さえつけ急所っぽくない部分を軽く殴って弱らせる。自分でやっといてなんだがかなりひどい所業である。完全に弱いものいじめだ。弱ったゴブリンを押さえつけたまま「やれ。」とスライム・エレメントに合図をするとモゾモゾと動き、ゴブリンの口を塞いで窒息死させた。こいつもなかなかエグいやつである。モジョモの攻撃法もエグい感じだったがこれっもひどい。卑劣3人衆となのれそうである。しかし、窒息死した魔物が幻のように霧散する様は不自然極まりない。まあそんなことを言っていたら霧散すること自体だいぶ不自然なんだが……。
モジョモは後ろの方で「私の時はそんなに至れり尽くせりじゃなかった……。」とわざとらしくぼやいていたが無視した。いや、お前と違ってこいつは補助しないと死ぬからね、確実に。
以後は似たような感じで1匹残してスライム・エレメントに殺させるという作業を続ける。しかし結局レベルの上がらないまま5層の主のところまで来てしまった。
今回の階層主の魔力反応はは明らかに前回よりも強く感知されていたのでちょっと心配だったが視界に入った主はちょっと良さげな鎧と剣を持ったゴブリンだった。威圧感がそんなに強くないのでこの弓でも楽勝だろう。まあ普通のゴブリンと比べると随分と強そうではあるのだが。正直、弓だと一発で終わる気がする。
スライム・エレメントのレベルを上げるためになんとか弱らせようと思う。まずはこちらから近づいて相手が攻撃してきたらカウンターで剣を持っている方の手を忍者刀で切り落とす。相手がバランスを崩したところを押さえつけスライム・エレメントに攻撃させた。結構暴れたがステータスの暴力により力任せに抑えつけるだけであっさりとその自由を奪えた。スライム・エレメントの方は恒例の窒息攻撃である。苦しそうにもがくガタイのいいゴブリンについ「ナム。」といってしまった。
戦闘が終わり、魔物が魔石と鉄製の靴に変わったするとスライム・エレメントがわずかに発光して震えた。どうもレベルアップしたようである。スライム・エレメントのステータスチェックは後ですることにして、帰りはまだ上がっていない俺のレベルを上げることを目標にさっさと来た道を帰ることにする。
なんとか祠を出る少し手前でやっとLv3になった。今日は相当な数の魔物を狩った気がする。スライム・エレメントの分と合わせると確実に100匹以上の魔物を狩っているはずだ。
素材も粘液に関しては壺が埋まった色に関しては回収するのをやめていた。今後はもう必要な時以外はゼリーと核石しか集めない気がする。ゴブリンは牙以外に小さなナイフとこれまた小さな革の胸当てを落とした奴がいた。こういったものは主との戦いで拾った鉄製の靴なんかと一緒にとりあえず倉庫に突っ込んでおくことにした。
再びレベルダウンの罠を踏むために草原へ戻る。朝、行きがけに摘んでいたクラル草がもったいないのでもしゃもしゃと食べながら歩くなんかこの味が癖になっている気がする。「依存性とか無いよね……。」と若干心配になった。
罠にたどり着いた。このレベルダウン装置を踏む前にスライムの核石について思い出したのでスライム・エレメントに核石を渡そうとリュックから取り出し、今まさにそれを渡そうとした所で、それまでずっと黙っていたモジョモが急に怒り出した。
「ちょっと!私と扱いが違いすぎない!なんでレベルが上がったぐらいでそいつにはご褒美があって私には何もないのよ!」
うむ。まためんどくさい事を言い出したねこの人……。
本当は
モジョモ「そこまで言うなら私にも制約で無理やりアレコレ命令すればいいじゃない。」
ヨースケ「じゃあするわ」
と言ってヒートアップした2人が最終的にストリップショー的展開に行く話も考えていたけどやめました。ちなみにオチの方はヨースケが「触れないおっぱいに意味はあるのか?」と哲学的な悩みを抱えるギャグ回的な展開だった。




