3人以上で旅行すると必ず喧嘩が起こる。
*12/17加筆修正しました。
話しの流れは変わってないですが修正前と文章の構造とかを結構変えてます。もし読みにくいですというご意見があれば遠慮せずに感想や活動方向の方で教えていただけると助かります。
モジョモを指輪の中に戻したヨースケは改めてスライムを見た。特に攻撃してこようとする感じはない。まあもし攻撃されたとしてもこの鎖帷子があれば大丈夫だろう。
ゆっくりと向けていた弓を下げる。ゆっくりと近づきながらスライムの周りをよく観察してみると、見慣れた白い砂が巻き散らされていた。つまりさっきの壺の中身を食べていたような行動は砂ではなく魔石の粉を食べていたのだろうか。
一瞬「共食い?」というワードが思い浮かんだが魔石はあの祠という不思議空間から魔物の依り代となっただけの魔力の塊みたいなものと聞いた気がする。ならいいのか?あれ、でもそこからスライムが産まれるってことはもともとスライムだった魂魄が元になってるとか?でもそういうこたなら逆にスライムに親和性が高い魔力の塊といえるのかもしれない。まあ何事も試してみるのが一番だろう。
スライムのもっと近くへ行ってみる。逃げ出すそぶりはまるで見せない。全然敵意を感じないまま1mぐらいの距離まで近づいた。先ほど手に入れた魔石の一つをリュックの中から取り出し、ゆっくりとさしだしてみる。スライムは体の一部を再び触手のように伸ばしてそれを掴むと、「ぽいっ。」といった感じでその透明ボディにいきなり現れた口のような部分に放り込んだ。そのままグニグニと体の一部を動かしている。まるで飴玉をなめているようである。
ヨースケは「よし、これでエサが確保できるならちゃんと飼えそうだ。」と思ったがその瞬間、スライムが一瞬細かく震えたかと思うと、「ペイっ。」と魔石を吐き出して再び体全体をグニグニ動かした。
「こ、こいつ。」
つい声に出してしまった。「それさっき食べてなかったか?」と腹が立ったが、スライムのふるふると震える様子が、なんとなく「これじゃない。」と言っているように感じる。
ひょっとしたら土に馴染ませた魔力の方を食べたのかもしれない。それか赤ん坊の離乳食みたいに魔石は砕いて細かくしないと食えなかったりするのだろうか。いや、単純に触媒として完成したものじゃないとダメなのかもしれない。
少し悩みはしたが、とりあえず触媒を作ることにした。餌付けに成功すればそれだけ従魔契約は上手くいく筈だし。そして餌付けをするにはさっきこのスライムが食べていた触媒そのものを準備するのが一番確実だ。それに材料も全て揃っている。
相変わらずスライムからは全く敵意を感じないので、その場に座って地面からすり鉢を作り魔石を粉々にする。スライムは横でじっと俺の作業を待っている。なんとなくモジョモみたいにこっちの様子がじっと見られている気がする。しかしまるで攻撃してくる気配がない。魔物というよりは近所の人懐っこい野良猫のようだ。ここまでくるともう地上のスライムは全部ほっといていいんじゃないかとさえ思えた。
ふとここで魔石を砕いたこの粉も、ある意味砂みたいなものだと思い、魔法で細かく砕いて楽をしてみようと試みたが何故か上手くいかなかった。どういう理由なのか後でモジョモにでも確認してみよう。ヘソ曲げてそうだが……。
しかし静かな時間だ。これはこれでいい。と少ししんみりした気分になる。側に生えているクラル草を摘んで、モグモグと食べながら作業を続ける。MPの回復はこまめにすべきだしな。
そのまま5個ぐらいの魔石を粉々にし終えた所で、待ちきれないと言った風にスライムが震え始めたので、試しに少しだけ掌にのせてスライムの前に差し出してみると、再び触手が伸びてきて掌の上にある魔石の粉をツンツンとつついた。そしてその触手の先に穴が開いたかと思うとそのまま管のように変化し、魔石の粉を一気に吸い取った。
スライムはそのまま少しの間グニグニと大きく揺れていたが、いきなり全身を震わせ始めた。それは一瞬でおさまっったが、その後のスライムの様子はあきらかに「これ、これよ。」と言っているようにしかみえない。まるでやばい薬をキメているようである。
しかしいちいち触媒まで作る必要がないことはわかった。さっきこいつが魔石を吐き出したのはどうも大きすぎるから食えなかったようだ。なぜならさっき吐き出された魔石も粉々にしてやるとちゃんと食べたからだ。
合わせて6個分の魔石を食べるとお腹一杯になったのかスライムは「ぷひー。」とまたゲップのような動作をしている。そろそろ頃合いだろう。俺は下級狩猟術の項目からLv4『魔物飼育』を思い浮かべる。
『魔物飼育』
自身よりもはるかに弱い魔物を恐怖で縛るか、あるいは魔物に対して親密さを上げることで魔術的契約を交わし自らの従魔として従える。従魔に対し簡易的な指示や命令を可能とする。契約の際に使用するMPは従魔の種類と位階による。ただし命令を行うたびにその命令の内容によりMPを失う。こちらの位階がより高く、より親密であるほど成功率は高い。稀に契約後に従魔がどこかに去ることもある。また術者に『魔獣師』系統のスキルがあれば、従魔の強化を図ることもできる。その真言は『ワレに従え(モンスターブリード)』である。
とりあえず、いきなり術をかけるのもアレなので
「おい、お前はもっとコレが食べたいか?」
とすり鉢とスライムの間を指で指し示す。すると肯定するようにスライムが震えた。行けそうである。しかしわりと会話が成立しているあたり、この個体は本当に賢いみたいだ。
「なら、俺の従魔になってもらうぞ。」
そう宣言してゆっくりとスライムに手を伸ばす。そのままスライムに触れると、ぶにっとした質感のすごくいい枕のような感触でびっくりした。この魔物の細胞膜とかの構造はどうなっているんだろうか?興味は尽きない。少しグニグニと触ってみても逃げる気配も襲ってくる気配もないので従魔契約を実行することにした。
「『魔物飼育』、『起動』。」
その瞬間、『ぐおんっ』という感じでMPが50くらい取られてびっくりした。一方でスライムの方は少し大きくぶるりと震えた。魔力感知の感じからして俺よりだいぶ弱そうだったので油断していた。遠目とはいえ島のそこら中で見かけたしそこまで珍しいスライムじゃないと考えていたが……。作業しながらクラル草を食っていて本当に良かった。やはり俺の行動は抜けてばかりのようだ。モジョモの怒った様な顔が浮かぶが、今はそれをかき消す。スライムに何か以前と変わったところがないかよく観察してみたが、特にコレと言って何かが変わったように感じられない。
「よし、俺の言うことをちゃんと聞けば魔石は食わせてやるからな。」
と言うと、スライムはぷるぷると震えて、なんとなく了解の意が伝わってくる。従魔契約を終えたからだろうか?さっきよりもしっかりと意思が伝わっている感覚がある。しかし、やばい、かわいい、癒される。こいつはどこぞのヒステリック幽霊のように気分次第で急に甲高い声で喚いたりしないという部分も素晴らしい。
まあそれはいいとしてこのスライムについて詳しいことを知るために鑑定してみるとことにした。
スライム・エレメント
Lv(位階):1
種族:妖精族・スライム種
状態:良好
HP(生命総量):10/10
MP(魔力総量):30/30
SP(体力総量):15/15
ATK(最大筋量):5
DEF(物理耐性):100
MATK(最大魔術行使力):30
MDEF(魔術耐性):10
AGI:(敏捷性):5
技能:
斬撃耐性(Lv10)、物理耐性(Lv5)、下級精霊魔術(Lv3)、魔力感知Lv3、
スライムボディ、融合、分裂、配下創造
詳細情報:
精霊でありかつスライムの魔物でもある非常に珍しい種族。数少ない肉眼で捉えることのできる精霊族で魔物でもある。その性状ゆえスライムそのものと混同されがちである。同族を攻撃したものに対しては攻撃的になる特性がある。スライム核を食べさせると、半分が自身の分身のような配下であるスライム・エレメントを生み出す。
配下を生み出したことのある個体はスライムリーダー・エレメントとして知られる。
なんか凄そうなスライムきたぞ。そりゃ、MP50も吸われるわけだ。しかしスライム核というのは見たことがな。スライムは結構倒しているが迷宮産だから手に入れられなかったのだろうか?そもそもスライムの魔石とは違うものなのか?
しかしこいつはスライムとは似ているが種族的にはまるで別物なわけか、これでモジョモを説得できるかもしれない。まあこれだけでは無理かもしれないが、妥協する理由の一つぐらいにはなってくれるだろう。
MPが結構やばかったので再びクラル草を食べる。ついでに岩鯨の燻製肉もくうことにする。このまま昼飯にしてしまおう。
燻製肉に興味があるのかスライムがおねだりするように震えるのでちぎって渡すと嬉しそうに食べている。「なんだ?こいつ好き嫌いがあるだけで結局なんでも食うんじゃね?」と思ったが、鯨の肉はなんか魔力が詰まってそうな気もするのでそれでかもしれない。まあ飼ってたらそのうちわかることなのでそのことについてこれ以上の考察をすることはやめた。
しっかりと休んでステータスをチェックしてみると、MPが77まで回復していたので指輪をはめることにした。
モジョモがどんよりとした顔で呼び出された。恨みがましそうな顔をこちらに向けて開口一番、
「さいてー。」
といってきた。意外と心に来る対応してきたな。いつものようにいきなり喚くかと思ったんだけど……。
「まあ、そう怒るなよ。俺も最低な対応だったと今は後悔してるからさ。ほら、さっきはお互い感情的になり過ぎてたし……。」
なんか俺、こういう時の会話の始めは、いっつもフォローから入ってね?と思うが、モジョモの方は
「男が言い訳すんな……。」
俺も「女ならいいんかい!」と言いたくなったが、今は別にそういう意味で言ってるわけではない。これはモジョモが俺に「言い訳するな。」といっているだけの言葉のあやだ。あやだよね……?とりあえず気を取り直してここで成果を見せつけるべきだ。
「まあそう怒るなよ。実は鑑定の結果、こいつは単純にスライムと呼べる存在ではないことがわかった。」
と足元にいたスライムを両手で抱えてぐいっとモジョモの前に突き出す。
「きゃあああ。な、なんてものを私の前に突き出すのよ!」
どうも俺に恨みをいうことに集中していて足元の存在に気づいていなかったようだ。失敗した。しかし少しひんやりとしてグニグニとした手触りのスライムはなんとも言えず素晴らしい。夜抱き枕にでもしたら快適に寝られそうである。
「あ、あんたそれ襲ってこないの?」
10mほど離れたモジョモが言ってくる。
「ああ、テイムに成功したからな。ウチで飼うことにした。」
「駄目よ、ちゃんと遠くに……じゃなかった。そいつらは殺処分しないと!」
いや、野良犬や野良猫じゃないんだから
「まあ聞け、鑑定石板に妖精族と出てな。どうもこちらから一度でも攻撃すると同族から一斉に攻撃されるようになるらしい。さすがにそんな状況は俺も困る。」
「望むところよ!」
再びきーきーと喚き始める。こりゃだめだ。モジョモのやつ、また正常な判断力を失いつつあるぞ。
「そんなの無理に決まってるだろ。寝込みをお襲われたらどーするんだ。それにさっきも言ったけどテイムに成功したしな。幸い祠の中のスライムとは完全に別種族みたいだしどんどんとレベルを上げさせて戦力拡張するんだ。下級の精霊魔術を使えるみたいだし。」
すごいぜーこいつは、みたいに言ってやると余計怒り出した。
「イヤよ、私はトラウマを刺激するような存在と一緒に居たくない。」
「もういいだろ昔の事は。それに俺は誰にも言わんし、日記もあのページは燃やす。それでいいじゃないか。お前にあんなことしたやつはお前がちゃんととどめさしたんだろ。意味のない八つ当たりはやめて感情に折り目はつけようぜ。」
「つけてるわよ。スライムは皆殺しという部分でね!」
うーむ。この問題の根は深いようだ。俺もさっきの説得の言い分はちょっと無神経だったかなと思う。トラウマの克服はそんな簡単にはうまくいくまい。
しかし今後のことを考えると、どう考えても優秀な魔物であるこのスライム・エレメントを手放すような愚はおかしたくない。
「わかった、こいつの名前をつける権利はお前にやるから。それでどうだ。」
俺的には割と苦渋の決断だったのだが、
「舐めてるの?あなた。」
と一瞬で却下されたようだ。
「うーむダメか。とにかく家主たる俺が飼うことにと決めたんだ。反対派許さん。この島の地上にいるスライムに害を与えるのも、俺に害を与えるのも行為と一緒だぞ。」
と言ってやると何かうつむいて、しばらく悔しそうにモジョモは「家主、家主って……。」とブルブルと震えていたが、顔を上げると真っ赤に怒った顔で、
「わ、わかったわ。そっちがそう言うなら、こっちにも行動に移させてもらいます。」
そんな風に宣言されるが「いや制約のせいで俺を害するような行為はできないでしょあなた……。」と俺が思っていると。
「家庭内別居よ!」
モジョモは高らかに叫んだ。
は?何言ってんのコイツ?
この話はそのうち1000字くらい書き足したいですね。でも余計な描写がそぎ落とされてる方が良かったりもするしその辺のバランスを取るのは難しいですね。




