真のチートアイテム
さあいよいよ主人公がドMへと目覚めるきっかけを掴む!?
*12/16加筆修正しました。
「ごめんさい、私のせいで……。」
誰かの泣き声がする。ヨースケは「そんな哀しい声も出せるのか。」とどこか場違いなことを思ってしまった気がする。何より深い嘆きを思わせるその声はひどくヨースケの心をえぐった。
そんな声は聞きたくなかった。そんな声をこれ以上して欲しくなかった。すぐに大丈夫と教えてやりたい。
「大……じょび……。」
自分でも変な声が出たと思う。しかしヨースケを覗き込んでいたモジョモの方から「えっ。」と間抜けな声がした。「そう、いつものようにそんな感じの声でいいんだ。」ヨースケはそんな風に感じながら左手で額のあたりをおさえた。なんか頭がクラクラする。次第に正常化する視界の中。こちらを覗き込んでいる泣き顔が見えた。彼女の目にたまっている、ただでさえ透明な雫は、ダンジョンのほのかな光を受けて幻想的に輝いていた。美しい言ってからかったらどんな顔をするのか少し気になる。
彼女の方はこちらが動き出したのを見て随分と驚いた顔をしている。なかなかひどい顔だ。いや、俺がこんな風にさせてしまったのか……。
「すまん……大丈夫、もう大丈夫だ。」
脱力が強すぎてこけてしまった時に後頭部をぶつけたようだった。痛い部分をさすりながら上半身身を起こす。よく見るとモジョモは俺にまたがるような感じで浮いていた。すがりつきたくなるくらい心配させてしまったようだ。そんなに長時間気絶してなかったと思う。俺が普通に動き出したのを見ると。
「よ、よかったよー。」
以前のように「ふえーん。」とモジョモが泣き出す。だが今回はいつものように「うるせー。」とどなれない自分がなんか無性に情けなくなった。
しかしいったい、今のはなんだったんだ?力がひどく抜けていって……。足元には怪しい幾何学模様が描かれていた。魔法陣だ。輝きはもう失割れているが原因はこれか……。
すぐに鑑定石版を取り出して調べる。
位階減少の罠《永続型》
効果:位階減少(強)
詳細情報:
罠に捕らえられた対象の位階上昇により付加された魂魄を吸収し、地脈へと返す事で、対象の位階を強制的に1にする。《永続型》の罠は何度踏んでもしばらく時間が経つと再びその効力を取り戻す。作成方法は中級吸魔以上の吸魔種が落とす装備系アイテム、魔力を馴染ませた土、地脈に接続された土地が必要。罠作成系能力に魔法陣術の能力が必須。
なんという凶悪な罠だ。俺、Lv1に戻っちゃったのか?元に戻すために、もうあんな鯨とは戦いたくねーぞ。
「やっぱり、……ぐすっ。強力なレベルダウンの罠だったのね。」
モジョモが石板を覗き込んで言う。
「やっぱり、ってことはモジョモはこの罠の種類を知ってたのか?」
「いやどんな罠かは知らなかったけど……。でも一気にすごい量の魂魄が抜けていくのを感じたから、このまま指輪をしてたら死んじゃうと思って……。」
そうかそれであの時指輪を外せって。……まて、何かおかしい。俺はなにを忘れてる?
「でも流石ね、Lv1でも魔力総量が60を超えてるなんて。」
……なんだって?
いや、おかしいのはそれだ。死の指輪をしていたら、魔力枯渇で死んでるはずだ。常時MP−60の指輪だぞ。俺のLv1の時のステータスは技能補正なしでオール20のはずだ。明記されてないが魂魄吸収量に限界があるとか……。いや、それだと鑑定石板が間違えたことになる。……そんな馬鹿な。今までの経験上こいつの鑑定能力はそんなに低くはないはずだ。すぐにいつものように左手を自分の胸に手を当てステータスを確認する。
ヨースケ
Lv(位階):1
種族:猿人族
状態:衰弱〈軽微〉
HP(生命総量):280/140(+140)
MP(魔力総量):220/140(+140−60)
SP(体力総量):280/140(+140)
ATK(最大筋量):280/140(+140)
DEF(物理耐性):280/140(+140)
MATK(最大魔術行使力):280/140(+140)
MDEF(魔術耐性):280/140(+140)
AGI:(敏捷性):280/140(+140)
技能:
異世界言語(Lv1)、全魔術属性開放、魔眼(未開放)〈1/5〉、
生命強化……、
なんだ?いったい何が起こったんだ?Lv1なのにステータスがLv16の約半分もある。いったいどういうことだ。そもそもレベルダウンってのはどんな現象なんだ?単純にLv1の時のステータスまで戻るってわけじゃないのか?こちらの混乱が伝わったのかモジョモが心配そうにこちらを覗き込んでくる。
「とにかく、大丈夫なのね。」
確かめるように、声をかけてくる。
「ああ、Lvは1まで落ちたけど……。さっきのは力が急に抜けたせいで、コケて後頭部を打ったからだと思う。それに魔力にはまだ余裕があるし……けど。」
しかし俺もこれ以上今の状態を何と言えばいいのかわからない。黙っているとモジョモの顔はどんどん心配そうになっていき。
「どうしたの……?何かまずい事でもあるの?」
「いや、むしろいいことだと思う。ただ原因がまるでわからない。」
「どういうこと……?話しなさい。」
「いや、多分見てもらった方が早い。俺のステータスをみてくれ。」
彼女は直ぐにこちらの胸のあたりに手を伸ばすと『情報開示』を唱えた。そして俺のステータスを見て首を傾げている。
「何も変なとこは無いわよ。確かにLvを考えると普通の人より異常に高いステータスだと思うけど。あなたのステータス、元々おかしいぐらい高かったし、Lv16の状態から比べると、大分下がってるし……。」
「違う。この数値は俺にとっても異常に高いんだ。俺がLv1の時の数値はスキル補正無しで全項目20だ。」
彼女は「マジで?」みたいなびっくりした顔になって。
「その話が本当だとすると、その数値は常識の範囲内だし随分と普通ね。まあ一般よりちょっと高いから、本当に才能ある若者の数値って感じだとは思うけど。でもそれなら私の指輪のせいで死んでたわよ。何か思い当たることはないの?」
と彼女が問いかけてきた時、通路の向こうから何かが近づいて来る気配がした。モジョモもすぐに気付いて、俺の横へ体をどける。俺は跳ね起きて弓を構えた。
すぐに視界に魔物が現れた。人の形をした黒い影が宙に浮いたままこっちへ向かって来る。「あれはまさか幽霊!?」と初めて人に近い形をした魔物を射ることに、一瞬躊躇して動きが止まってしまう。
すぐ横でモジョモが「射って!」と大声を出したので、反射的に、いつものようなMP1+SP1の攻撃で幽霊を撃ち抜いた。
魔物の気配が霧散していく。横でモジョモが「私も打たれたら消えちゃうね〜。」と縁起でもない冗談を言った。彼女なりに気を使ってくれてるんだろう……。
モジョモはこっちの躊躇を見抜いていたのだろう、
「大丈夫よ。ああいう魔物の幽霊は人の形をしてはいても、私みたいに地上の魂由来じゃ無くて、違う場所から来た狂える人外だから。動物と一緒よ。」
とフォローみたいなことを言ってくれた。
「すまん、気を使わせた。人型の魔物を攻撃するのは初めてだったからな。お前がとっさに声をかけてくれて助かった。」
その時魔物が消えたあたりから、何か金属のようなものが落ちる音がした。そして体に力が巡る。これはLvアップの感覚だ。
罠がないか慎重に確認して進みながら、落ちたものを確認する。これは……。
「見るからに吸魔の指輪ね。しかもそんなに品質が悪くないように感じるわ。
つまりさっきのは幽霊じゃなくて吸魔ね。指輪の品質からして中級以上だったのかも?」
鑑定しようとすると感知している別の魔物達の気配の一部がこちらへ向かって移動し始めた。どうも吸魔くさいものたちだけがここへ向かって来ているようだ。
「なんか様子が変だ。一旦、上の階まで避難するぞ!」
ヨースケはそう言って素早く踵を返して階段の方へ一歩踏み出した。その瞬間、
「ゔえ゛え゛え゛え゛。」
変な声が漏れた。足の下がまた青く光っている。
そんな!さっきここは確認したし、歩いた位置だぞ。今の罠が生み出されたのか?
2回目だったからなのか、それとも今回はあんまり一気にレベルが下がらなかったせいか、瞬間的にふらついただけですぐに態勢を立て直す。
ああもー、吸魔の魔石をまだ見つけてないのに!
走って階段まで戻り一気にかけあっがった。ここまで来ると下の階層の気配はもう感じ取れない。
「多分大丈夫よ。試練の祠は5階層ごとに別の空間にあるって言われてるから。多分ここまでは追ってこないと思うわ。」
モジョモめ、そういう情報は早めに教えてほしかった。
「やっぱり知らなかったのね?あなたの知識の偏り、やっぱりおかしいわよ。……それより、大丈夫なの?また踏んでたみたいだけど。」
そうだった。すぐにステータスを開く。これ以上無駄にステータスが下がってたらシャレにならん。
ヨースケ
Lv(位階):1
種族:猿人族
状態:衰弱〈軽微〉
HP(生命総量):282/141(+141)
MP(魔力総量):222/141(+141−60)
SP(体力総量):282/141(+141)
ATK(最大筋量):282/141(+141)
DEF(物理耐性):282/141(+141)
MATK(最大魔術行使力):282/141(+141)
MDEF(魔術耐性):282/141(+141)
AGI:(敏捷性):282/141(+141)
技能:
異世界言語(Lv1)、全魔術属性開放、魔眼(未開放)〈1/5〉、
生命強化(Lv10)、肉体強化(Lv10)、体力強化(Lv10)、
魔力強化(Lv10)、敏捷強化(Lv10)、
毒耐性(Lv3)、麻痺耐性(Lv3)、混乱耐性(Lv3)、恐怖耐性(Lv3)、
石化耐性(Lv3)、盲目耐性(Lv3)、呪詛耐性(Lv3)、洗脳耐性(Lv3)、
身体操作(Lv10)、魔力操作(Lv10)、魔力精密操作(Lv10)、
気配察知(Lv10)、魔力察知(Lv10)、気配遮断(Lv10)、魔力遮断(Lv10)、
下級刀剣術(Lv10)、下級弓術(Lv10)、下級投擲術(Lv10)、
下級狩猟術(Lv10)、下級忍術(Lv10)、下級暗殺術(Lv10)、
下級無属性魔術(Lv10)、下級火魔術(Lv10)、下級水魔物(Lv10)、
下級風魔術(Lv10)、下級土魔術(Lv10)、下級治癒魔術(Lv10)、
下級魔法陣術(Lv10)、紋章術、刻印術、
下級道具作成(Lv10)、下級魔道具作成(Lv10)
下級隠蔽(Lv10)、中級隠蔽(Lv10)、上級隠蔽(Lv10)、
忍び足、無音移動、擬態、危険察知、潜伏、
並列操作(Lv1)(←NEW)
GP:32P
「……は?」
随分と間抜けな声が出た。ステータスが上がってるだと?
「ど、どうしたの?何、今度は何よ。」
こっちがまた混乱している様子を見てモジョモがさっさと説明しろと詰め寄ってくる。
「いや、俺も訳がわからない。ステータスがさっきより上がってるんだ。しかも技能まで増えてるし?」
「何ですって?私にも見せなさい!」
そう言って再びこっちに手を伸ばしてくる。特に拒否する理由もないのでステータスを再び見せる。
「本当だ……なんで?数はともかく何か特に変わった技能は持ってないし、体質って事はなさそうね。なんか変なものでも持ってるんじゃないのあなた。」
「変なものと言われても……。俺が今持ってるものなんて……あったわ。」
すっかり忘れていた。Lvが下がった現象ばかりに気を取られていた所為でまるで気がつかなかった。その存在もずっと忘れていた。なぜならそれが効果を発揮するのはLvアップの時だけだからだ。急いで鑑定石板を取り出し、この世界に来てからずっとはめっぱなしだった腕輪を鑑定した。
成長の腕輪
使用条件:
位階が上昇した瞬間から次の位階が上昇するまでの間
常に身につけておくこと。
品質:高品質
状態:良好
耐久値200/200
素材:魔法鋼閃石
詳細情報:
身につけている間に装着者の行動とともに魂魄を集め、装着者の魂魄に適切な形に変換して、位階が上がる魂魄変換のタイミングに合わせて、装着者の魂をより研ぎ澄まされたものへと成長させる。具体的見える変化としては位階上昇時に各能力項目の上昇率がほぼ倍になる。ただし、様々な魂魄を材料としてこの変化を起こさせるため装着者は次の位階に上がるためには非装着時と比べてより魂魄を得る必要がある。位階が上昇してから次の位階が上昇するまでずっと身につけておかなければこの効果は発揮されない。作成方法は不明。
……そういうことかよ。完全にこいつのおかげだ。横ではモジョモも絶句していた。この腕輪の存在をすっかり忘れていた。だってすごい手に馴染んでるし邪魔にならない腕時計感覚だったよ。ずっとつけてろ的なこと古白に言われてからほったらかしだったし。制約付きとはいえGP1000Pも使用したこの腕輪が生半可な効果しか持たないわけがないのに……。相変わらず抜けてるな……俺。しかしこいつがなければ、あの鬼畜罠踏んだ時点で死んでたのか。あぶねー。危なすぎる。今後気を付けないとあの罠を踏むたびに今までの努力の半分近くが無にされて……、……ん?待てよ?
位階は低い程上げやすい。当たり前だ。位階が上がるごとに必要魂魄が上がるからだ。だったらこの腕輪をつけて位階を上げた後あの罠を踏んだらどうなる?上昇したステータスの一部がそのまま残る。そして位階は上げやすいままだ。今までのステータス変化から推測すると、おそらく位階は高ければ高いほどステータスの上昇率は高い。だがそれ以上に必要魂魄は莫大なものになっていくはずだ。そんなことをするくらいならワザとレベルを下げてステータスを上げたほうがいい。それにあの罠であれば位階が下がっても技能やGPは残る。これはかなり大きい利点だぞ。技能やGPが得られるのは基本的に『位階が上昇するタイミングだけ』と古白が言っていた。つまりその試行回数が多いこの方法は自身の技能を意図的に大量に得られる可能性がある。俺はもともとGPをなんとか集めたいと思っていたから、すごい!すごいぞこれは!テンション上がってきたー。
恐ろしい事実に気付き興奮したままモジョモの方を向くと物凄く可哀想なものを見る目をした彼女がいた。わかる。わかるぞ。レベルが大幅に下がったにもかかわらず急に興奮し始めた俺に呆れてるんだろう。だが許そう。今の俺は気分がいい。
「素晴らしい事実に気づいたぞモジョモ!」
「え、なんかテンションおかしくない?」
ふはは、慌てた顔もかわいいなこやつめ。だがそんなことは今はどーでもいい。
「ふっ。レベルは大幅に下がってしまったが、最強への道が開けたぞ。上手くいけば、あの巨大な海蛇を倒して島の外へ出られる可能性が出てきた!」
俺はそう高らかに宣言した。モジョモは横で随分な呆れ顏だったがヨースケがそれに気づくことはなかった。
誰でも書き込めるように設定しているので
気軽に感想をいただけたら嬉しいです!




