ダンジョンアタック
*12/16に加筆修正しました。
岩鯨を処理した次の日は、谷間の尾根沿いに山の方へ行ってみた。途中マルマロという自然薯みたいな植物や、様々な山菜類を見つけ、ほとんど空にして持ってきたリュックにどんどん詰めていったが追いつかず。結局、帰る時には細い木を2本切り倒し、その間にテントを結びつけて、物をその上に大量に乗せて運ぶことになった。何か食べれそうなものや新しい植物を見つけるたび、鑑定石板を使い、名前と特徴、必要な説明を紙に記していたら、山頂に着いた時は正午をだいぶ過ぎていた。ほぼ7時間かけて辿りついたことになるがおそらく帰りはこの大量の収穫品があっても2時間ぐらいしかかからないだろう。さすがのステータス値である。
山頂からは見える範囲で砂を使って島の立体を作った。裾野の方は、森で見えない海岸線もあるし、そもそもこの島にはもう一つ山があるので実際に把握できた範囲は1/3ぐらいだが十分な成果であった。
その辺のことが終わると、来た道を通り家にさっさともどって木の実や自然薯、キノコ、山菜なんかを倉庫で分類して、保存した。
魔物に関してだが山を歩いている時、気配遮断を使わずに歩いていると何度も気配察知と魔力察知にスライムらしき反応があった。しかしその魔物らしき反応もはこっちを察知すると逃げていくようである。おかげで直接魔物に会うことは1度もなかった。結構な数いるように感じたが、その全てが逃げて行くのは実に不思議だ。
夕方は思いつきで作った岩の壺を海に多数沈めてみた。何かかかれば御の字である。筒状の仕掛けも2つ作った。引き上げるときに両端に蓋をして引き上げるつもりである。また貝をそれなりに採取し、波がこないような位置に作った砂の入ってない生簀に放り込んだ、放り込んだ日がわかるよういけすには幾つか仕切りを入れといた。また石の矢で魚を仕留めるより、石の銛で仕留める方が楽だった。そもそも石の矢は『狙撃』のスキルを使わないと無理だった。
夕立が止んだ後、再び鯨肉の一部と、今日捕まえた魚を燻製にしてみた。下処理を済ませた魚の一部は陰干しにしてみた。
後は残っていた大量の岩素材を使って、学校の渡り廊下のようにして玄関、物置き、倉庫、燻製場を行き来できるようにした。これらの中心には岩の作業台と椅子も作った。これで雨が降っても色々準備できるようになった。
俺が今恐れているのは雨季の存在だ。この惑星の地軸に傾きがあった場合、太陽からの距離の関係で、季節や恒常風が変わることにより、この島にもひたすら雨が降り続ける期間が存在する可能性がある。その場合、食料確保などに困難をきたす事は明白だ。最低でも一月ぐらいの余裕が欲しい。まあ動物性蛋白に関しては岩鯨のおかげで随分と助かっているが、それも無限ではない。今の感じだと後は山菜類などの食料にも余裕はありそうだ。無いのは穀物、あるいは豆類が欲しい。
さらに次の日は草原の方へ行ってみた。気配遮断を切るとやっぱりスライム達は逃げていく。地脈の噴出口を鑑定石板で確認する。
純粋地脈の噴出口
分類:特殊地形
面積:約400㎡
詳細情報:
純粋な原始魂魄の噴出する土地、中心部ほどその濃度は濃い。精霊が生まれる場所としても知られる。此処にとどまることによって魂魄を持つものは様々な恩恵を受ける可能性が高い。特に純粋な原始魂魄は、ありとあらゆる物の原料となることで知られている。特に元々肉体に備わった性質を強化するのに向いていると言われている。
なかなかすごそうである。さらに魔眼をこまめに分けて何度か鑑定してみる。どうも時間当たりの原始魂魄噴出量は一定ではないようだ。同じ時間間隔で確認しているのに、溜まっていく魔眼の解放までの数値は結構バラバラだ。それでも平均して1週間ぐらいここにとどまり続ければ魔力眼が解放されることがわかった。スライムも逃げていくのならここに家を建てるのはありだな。
さらに気になることが2つ、精霊のいる可能性だ。古白のところでみた妖精眼がほしい。なんとかその存在を確認したいものだ。後、ここにとどまるものに影響を与えると書いてあったので、その辺に生えている草を抜いて鑑定してみると。
クラル草(亜種)
品質:高品質
状態:最良
耐久値:10/10
詳細情報:
純粋地脈の噴出口付近で育ったクラル草の亜種。純粋魂魄を取り込み続けたことによるその効能は魔力や体力の回復にも用いることもできる。素材や食材としても一級品である。
ここに畑でも作ろうかな?と本気で考えてしまった。モジョモは「これを食べてたら私は……。」とまた落ち込んでしまった。少し慰めようとしてみたが、まるで効果がなかったのでしばらくほっておく。
まあ鑑定能力のチート臭いよなやっぱり。知識が世界そのものから引き出せるのはやばすぎる。偽装系と隠蔽系のスキル以外は確実に真実と言えることもヤバイ。この石板が消えた後のことを本格的に考えないといけなくなってきた。早めに試練の祠に潜って、色々鑑定したほうがいいと判断した。クラル草や弁当の薫製肉とがあるから飯にも困らないだろう
とりあえず場所をモジョモに聞きたいが今はダメそうなので大きい川の方に向かってみた。移動している最中に結構な両群生しているゾルカ豆という色は赤い枝豆のような植物を見つけた。鑑定でも毒もなく食べれるとでていた。川のそばでは、ルンガ粟という粟も見つけた。これも食べれる。メインとして食せそうな穀物を期せずしてふたつも見つけてしまった。これは真剣に畑作を考える必要がある。
川の沿って遡上してみる。ルンガ粟はそこら中に生えてるし採取は帰りにすることにした。途中やっぱりスライムらしき反応があるが50mぐらい近づくと逃げていく。なんか無意味に狩るのもかわいそうな気がしてとりあえずほっておくことにした。岩鯨の時みたいに安易に殺したせいで他の魔物が夜寝ているときに復讐に来たらたまらんしな。
山の麓近くまで来るとそこに洞穴があった。よく考えてみればモジョモも川を渡るために遡上したのだからひょっとしてここが例の試練の祠かと思い確かめようと彼女の方を振り向くと見るからに不機嫌な顔をしてこっちを睨んでいた。なんで?
「ど、どしたの?」
とりあえず聞いてみる。
「なんで無視するのよ?」
ん?俺無視したっけ?わからないと俺の顔に描いてあったのだろう彼女が叫んだ。
「もっとちゃんと私を慰めなさいよ!」
理不尽だった。
こいつはあれだな、美人だから許されてきたタイプだな。あとは地位とか親が甘かったとかそういうやつだ。こういうのはちゃんと対処しないといけないと思い指輪に手をかけると。
「ちょっと、それは卑怯よ!」
彼女は怒りの表情を瞬時に焦りのものに変えた。
「正直、めんどくさい。」
俺はそれはもうストレートにいった。それは最短距離を走り彼女の心に突き刺さったようだ。絶句している。
「はじめにちゃんと声かけたでしょ、でもお前それ無視したよね。いや、それは別にいいんだよ。足元の草食ったらMPもHPも空腹感も全部どうにかできたなんて知ったら普通は発狂ものじゃん、だからそっとしてあげたのになんで怒ってんのさ。」
できるだけ嫌味にならないような感じでゆっくり言う。いや、それでも結構嫌味っぽくなった気もするが……。
「もうちょっと声をかけてくれても……。」
再び指に手をかけると彼女はビクッとして黙る。あれ、少し楽しくなってきたぞ。ただこれはガチのいじめ臭くなってきているのでこれ以上はやめようと思い手を離すと。
「……もっとちゃんと構ってくれてもいいじゃない!」
と叫んで「ふええーん。」と泣き出した。
ちょ、ガチ泣き。しかもなんつーわがままな。こういう時こそ、素晴らしい対処法を前世の知識から引き出すんだ。これは、きっとあれだ。「私と仕事のどっちが大事?」って奴だ。モテてない奴は、「仕事。」とか「お前は仕事してる俺としてない俺のどっちが好きなんだよ。」とかマジレスして喧嘩になるやつと似たパターンだ。そういう回答する奴の話を聞いていつも思っていた気がするが、そういうのはコミニケーションじゃない。ただ相手がさらに不快になるような事実を意図的に指摘しているだけだ。そしてこの場合の俺は……マジレスしてしまった。めっちゃ指摘しちゃったよ。
あかんやん!
頭を抱えそうになる。いや、落ち着け。俺。ああいう質問は結局、「君の方が大事。」とか言ってちゃんと気にかけてることをアピールしないといけない。ちなみに「君と一緒に居続けるために仕事を頑張ってきたのさ。」というのは悪回答である。とにかく仕事を回答の中に匂わせてはいけないのだ。
恋人か奥さんだったら黙って抱きしめて額か唇にキスをして微笑むだけで黙らせるという、物理攻撃的手段もあるらしい。この件に関して誰かが「ツンデレがちゃんとツンするみたいなと同じ原理なのに男側はいちいちこんな程度でイライラしやがって」と言っていた気がする。なんだこの記憶は……。前世の(以下略)。
とにかく……ってなんでいちいち俺がフォローせなあかんねん。甘え過ぎやろこいつ。よく考えなくても俺キレてよくね?
しかしこのまま指輪を外して必要な時にヘソを曲げられても困る。そもそも状況が違いすぎる前世の頼りにならない記憶なんかここで使ってどうするというのだろうか。当たり前のことだが、問題を解決するには彼女をちゃんと見てやればいい。まあ、100%こっちが悪くないのは確実だが……。それがどうしたというのだ。感情がコントロールできない瞬間なんて誰にでもある。彼女はそれがちょっと多いだけだ。いや結構多いいと思うけどそう思って過ごせば円滑な人間関係が気づけるだろう。それが大人の男ってもんだろ。
よし、自己暗示終了!
「まあ悪かったよ。ルンガ粟が見つかった時はこっちもテンションが上がってたから、無視するような感じになっちまって、俺は田舎もんで人とほとんど付き合って来ずに修行ばかりしてたからそういう気を使うのは下手なんだ。許してくれ。それに俺はお前に触れないから、頭をなでてやることもできないし。」
なんか上手く言えてない気もするがそれでも全面的にこっちが悪いオーラを出す。これで後は彼女の良心に期待するしかない。
「ぐすっ……わたじはそんな子供じゃないい……。」
「知ってるよ……。」
出来るだけ目線を合わせて俺は見てるよアピール。しかし俺はなんでこんなことやってんだ?馬鹿か?と思うが。顔に出さない。そう、効率だ。効率を考えるんだ。ここまで来て素を出したら、なんのためにさっきみたいなハズい台詞を言ったか分からんようになる。
「ゔん……許す。」
俺は「おっしゃー、許されたぜー!……と思うかぼけー!」という内心は全力で我慢する。
「よしっ。じゃあ気を取りなおして試練の祠に行ってみようぜ。お前の言って奴ってあれだろ。」
と、さっきまでのことは俺気にしてないよ感を全力で出しつつ洞窟を指さす。
「え、私あんな洞穴知らないよ?」
な、なんだと?じゃあ何あれ?ただの洞穴?
そう思って近づいてみる。奥は不自然なまでに暗くて見えない。魔物の気配がないので洞穴をくぐると。ぐにゃりと視界が変わった。この感覚は覚えている。初めて草原に転移した時と同じ感覚だ。ということは転移?
視界は一瞬で切り替わりそこには原穴が続いていた不自然に明るい。
「ひょっとして二つ目の試練の祠?いや雰囲気が随分近い……ひょっとすると入り口が二つ以上あるタイプなのかも。」
と詳しく聞く前にモジョモが独り言で教えてくれた。
気配探知と魔物探知をの範囲を引き伸ばすと幾つかの感じたことのない気配達がする。幸いなことにあまり強そうな感じはしない。古白に教えてもらった試練の祠についての知識を思い出す。
試練の祠とは古くは修練の祠とも呼ばれた、この世界のシステムに現象として組み込まれているものだ。この世界に住むものたちが効率的に位階を上げるための場で、相手を倒し、その魂魄を吸収し、魂を鍛えあげることで不完全な魂を補っていく場である。
古白は、俺のようにこの世界の成り立ちを知っている生命体は少なからず存在していると言っていた。そういった連中は特に積極的に試練の祠に潜り己を鍛えるそうだ。まあ当たり前のことだろう。この世界で位階が高いことは生きていく上で色々と有利だ。位階が高いとはそれだけステータスが高いという意味でもあるのだから。だからそれを知る多くの者達や位階を上げたい者達が試練の祠に挑む。ついでに踏破して祭壇を使って儀式を行えばさらなる力や富、名誉が手に入る事もそれを後押ししている要因だろう。
構造としては、一種の特殊空間のような場所でこの世界の輪廻の一部と直結している。そのため、一定期間で構造が変わったり、様々な魔物が出たり、様々な魔法具が生み出される。様々な形の試練の祠があり、今回のような洞穴タイプはダンジョンと呼ばれる。迷路くささが増すとラビリンスと呼ばれたりする。草原や森のような場所が試練の祠になることもあり(もはや祠じゃないが……)フィールドラビリンスとよばれたりする。ダンジョン内に出現する魔物は、ダンジョン内で具現化するために核つまり魔石と、依り代である素材かアイテムを持っている。倒すと霧散し、素材や、魔石だけになってくれるので非常に便利らしい。地上産の魔物は魔石を持っていたり持っていなかったりするらしい。またダンジョン内で生まれた魔物はそのダンジョンから出ることはできない。もしダンジョンから外に出るような魔物は、地上産の魔物が迷い込んで中で戦い抜いた後に出てくる場合がほとんどでそういうやつは位階が高いので特に注意しないといけないそうだ。
淡い光を放つ世界を見据える。正にどこまでも続いている迷宮といった雰囲気だ。ここに、俺がこの島から出るのに役立つ何かがあるのだろうか……。
よし、いっちょ頑張ってみますか。
俺は気合を新たにペンと紙を出し地図を書きながら通路を歩き出した。
どうしてもサバイバルパート的なのが助長になっている気がする。もう少しストーリーの構成を練ったほうがいいのかもしれないとも思うがもう色々と書いちゃってるしなあ。伏線投げっぱなしだけは避けたいとは思うけど、精進あるのみかなぁ。




