はえてない彼女の死闘
~前回のあらすじ~
彼女は突然服を脱ぎ出し、その下には何もはいていなかった。
そして何もはえていなかった。
※注意※微エロ回
しくしくと幽霊がないている。
「あー、もう。とりあえず服を着ろ。」
俺はそう『指示』してみた。さっきまでの彼女はいったん自分で脱いだ漆黒のローブでなんとか体を隠そうともがいていたが、なぜか隠せなかった。しかしそう『指示』した途端、再びローブを着れるようになったようでいそいそとローブを着はじめた。
うむエロい。着替えはエロい。まじエロい。
小さいが自己主張の強い先端がゆれていた。そのせい?もあり、わりとしっかりとガン見してしまった。行動が唐突すぎてすぎて思考が一瞬停止したせいもあるが。思った以上にスタイルが良かったのもその理由になるだろう。後は、はえてないことにびっくりしてたという理由もある。え、理由になってない?
しかしはえてない32歳ってホルモンの病気とかじゃないよな?いや、そもそもここは地球じゃないし。肉体年齢は16とか言ってたから……あー分からん。思考が変な方向に行ったので無理やり戻す。
再び着替え終わった彼女は、顔を真っ赤にしてこっちを睨んでいた。そんな顔でみるなよ……また変な気分になるじゃないか。
「……うむ。で、なんで唐突に脱ぎ出したわけ?」
「し、知らないわよ。でも何か制約が働いていたみたいよ。あなたこっそりと変な制約かけてるでしょこのエロ!むっつり!」
「いや、そんな制約かけた記憶はないぞ。そもそもなんでローブ以外何も身に着けてないわけ?痴女なの?だったらそっちこそムッツリだろ。」
「は、はあー!話をそらすなこのむっつり!さっきあんたがどんな目で私をみてたか鏡で見せてやりたいわ。」
うむ、そこはこっちも否定出来ない。しかし俺は彼女が痴女ではないかと疑うに足る情報を持っている。
「おまえ、日記の中で雨に打たれたとき風邪引かないように素っ裸で服を乾かしたくだりがあっただろ。無人島で一人だったからとはいえ、流石にそれはないだろ。痴女以外の何物でもないわ!」
「い、命が関わる状況だったのよ!濡れたままでいると風邪引くし!ここには薬も治癒術師もいないし!だいたい誰か漂流者が急に出てきたら困るからちゃんと大事な所は全部葉っぱで隠してましたー。だいたい文章からなんて想像してるのよこのエロ!」
いや、葉っぱの方がエロそうじゃね……。と返しそうになったが、そんな事を言うのはむっつり以外のなにものでもないのでとりあえず他の状況証拠を提示してやる。
「いや、そもそも魂魄付与の儀式っていうならその時身につけていた物質全部が、ちゃんと全部魂魄化されてるはずだろ。つまりおまえは儀式の時、すでにはいてない女だったって事じゃねーか。ザックの中にもハンカチぐらいしかなかったし。おまえ、自分が儀式の前からずっとはいてないような女だった自覚が無いの?いくらこの島が暑いからってそれは痴女以外の何者でもないですー。」
フハハ、鬼の首とったり!完全なる論破とはこうするものなのだ。彼女は顔を真っ赤にして、
「ち、ちがっ、あの時の私ははいてないわけじゃ……ってもうイヤー!」
モゾモゾと見覚えのある動きをはじめたので急いで、彼女に対し背を向ける。それでもローブの隙間から白い肌がチラリと見えてしまった。目に毒すぎる。それもひどい猛毒だ。
「おい、またなのか。やっぱり制約っぽいのか。いいからさっさと着ろ。これは『指示』だ!」
そう叫ぶようにいう。ひーんと言う彼女の鳴き声とゴソゴソと衣擦れの音がする。音の感じからすると制約のせいかどうも一回脱がないと着込めないようだ。しかし幽霊の癖に衣擦れの音がするって……、魂魄の生み出す情報ってのはよく分からんな。
しかし、ある意味彼女が幽霊で良かったのかもしれない。いくら俺が紳士だとしても限界値というものはある。もし触れることができたら我慢できたかどうか……。くそっ、これだから美人は厄介だ……。そんなことよりこの状況をさっさとなんとかしないといけない。さっきの状況と比較してみるに……あ。
「おい、お前。さっきもも俺に嘘をつこうとしただろ。」
思い至ることがあり、音も止んでいたので確認のために聞く。
「嘘なんてついて……うそー!」
ああ、もうそれいいから。精神衛生上やばいから。と、モゾモゾ動きはじめた瞬間に言ってやる。
「『嘘つこうとしたらそのローブぬいでもらう』という制約は破棄する。」
ピタリ、と彼女の動きが止まった。さっきの会話中の冗談。魔力を込めたつもりはなかったが制約化していたようだ。やっぱり、と顔を真っ赤にしてこっちを睨んでくる。その目には涙が滲んでいるようだった。全然怖くない。むしろ只々、エロい。頼むからまじでその表情はやめてくれ。
しかしさっきの彼女の様子からすると、嘘をつくというより嘘に近いいいわけをしようとしている雰囲気だった。だとするとどうもさっきの制約は本人が事実と矛盾する事を言えば意図しなくても発動する節がある。こっちもさっきみたいに、勝手に変な制約が交わされてしまうとまずいので、会話の中で滅多な事は言わない方がいいだろう。まあいい。それより先に責任転嫁だ。
「で、やっぱり嘘をついていたわけだが……。痴女なの?」
これだけは確認しておく必要があった。今後に大きく関わる議題だ。
「そんなわけあるかー!」
がうっ、という感じで彼女が吠える。二番目にした『俺に嘘をつくな』と言う制約は消えていないはずなので、どうも痴女ではなかったようだ。よかった。……まあ素養は十分にありそうだけど。
「そうか、だとしたら問題なのはさっきの会話の『どの部分』が嘘として捉えられているかだな。」
と、相手にもわかるように言ってやる。
「おい、俺が言っている事の心当たりはあるか?いや、一回目のやつの方はいい。おまえが否定したがるのもわかるが、残念ながらお前は大天才死霊魔術師じゃないって事だろ……。」
死神には愛されてそうだが……、というツッコミはちょっとブラックすぎる意味になりそうだったので言葉にはしない。彼女はというと、何か葛藤があるのかうーうーとうなっている。何となく察した。
「いや、わかったわ。何らかの理由で、儀式の際に下着が紛失していたんだろ。あ、その件に関しては、肯定も否定もしなくていいから。そう睨むなよ。悪かったよ、デリカシーのない質問しちまって……。」
ほんと、睨まないでくれよ。いろいろ刺激的な状況の時にその表情を刷り込まれたせいでこいつに睨まれると背骨の奥の方が変に疼くようになってしまった。精神衛生上非常に良くない。
「ただこれだけは答えろ。その件に関しする情報で、俺に何か被害が及ぶ可能性はあるか?」
と真面目な顔して聞いてみる。命に関わる事態に陥ったらシャレにならん。こっちの真剣具合が伝わったのか彼女は珍しく真面目に考えてくれているようでこんどは首を傾げるようにして考えている。元来は素直ないいやつなんだろう。仕草や言葉遣いがやたらと残念な時はあるが。
「たぶん、命に関わる事は何も……。」
ん、その言い方だと命にかかわらない何かはあったって事ですよね?嘘はついてないが真実も言ってない、そのせいで危険性だけが残るそんな状況は避けたかった。
「よし、話せる範囲で話せ。」
「その……、試錬の祠で……。」
と、それきり黙ってしまう。まあ若い女が恋人でもない若い男に真面目に下着の話なんてしたくないよな。でも試錬の祠で俺が下着を失う可能性は絶対に避けなきゃならん。今の状況だとそこにいかないとこの状況を打開出来そうにないしな。俺はストリップみたいなことなんか人前でしたくないし。ので、心を鬼にして聞く。
「辛いとは思うが話せ。これは指示だ。俺は試錬の祠には積極的に参加するつもりだ。同じような状況に陥るわけにはいかないし、もしモンスターが絡む事ならなおさらだ。」
と、言うと彼女の顔は絶望に染まった。
「そんな顔するな、絶対に笑わないでおいてやるから。」
取り敢えず状況を理解しないと始まらんしな。そして彼女しばらく下を向いて黙っていたが、やがて観念したのか光を失ったような目をしてポツリポツリと語り出した。
「グリーンスライムリーダーよ……。」
「あん、あの日記にあった5階層のやつか?それがどうしたんだ?」
そういえばその辺の日記が何か変な感じだった気が……。
「知らないん……ですか?」
何かわかってる癖にみたいな雰囲気出さないでよ。知らないものは知らないよ。
「すまんな、実はスライムとは戦った事がなくてなそいつはそんなにやばいやつなのか?」
彼女はそんな風に答えた俺に信じられないものを見たとような目をする。仕方ないだろ。本当の事なんだから。取り敢えず俺が嘘をついていないというのが伝わったようで彼女はゆっくりと続きを放し始めた。
「本来は階層主のような強力な個体の魔物がグリーンスライム系統の魔物だったらその階層の主と戦える事は幸運以外の何物でもないのよ。なぜならグリーンスライムはほとんど人を傷つける手段を持たない事で有名な魔物だから。階層の主を倒せば有用な素材やマジックアイテムが手に入る可能性が高いし……。」
ほーん、で?という感じで続きを促す。
「あの時の私は飢餓状態で魔力も体力もそこをつきかけていたわ。しかしその時の状況を覆すにはもうあの事態を無理やりにでも打開できるような何かを手に入れる方法しか思いつかなかったの。つまり試練の祠の中に湧き出る宝箱を見つけることよ。そのためにあの試練の祠をさまよったのだから。
けどこのままだと祠の中で死にかねない状況になって仕方なく帰ろうとした時、階層主とおぼしきグリーンスライムリーダーを見つけたわ。周りに他の系統の魔物もいない。
要は凄いチャンスだったのよ。確実に命を落とさないで済み、かつ時間さえかければ相手を必ず倒せるの状況と言えたので当然よね。しかもいい素材かアイテムが高確率で手に入る状況。もう私の中では戦う以外の選択肢は残されていなかったわ。
でも忘れてた、いや冷静な判断力や経験が私にはなかっただけね……。私の体力も魔力もほとんど残っていなかったし。
戦闘開始と同時に私はまず得意の闇魔術の『失命呪法』を打ち込んだわ。この瞬間私の勝利が確定したわ。命尽きるまでじわじわと生命が失われて行くこの呪いを解く方法をグリーンスライムは持っていないもの。
しかしそこで油断してしまったのよ。奴が、分裂したのよ。それも4体に。そこは完全に予想外だったわ。勿論呪いは消えてなかったから彼らの死ぬ運命は消えていなかったけれど……。」
とそこで彼女は一度こっちを見たあとフッとため息を吐いて話を再開した。なんなの、別にここまでの話で変なとこなんて一つもないじゃん。
「さっき言ったグリーンスライムの習性の話よ。彼らは人には無害なことで有名なのよ。彼らは植物しか食べる事が出来ず、人に対する攻撃手段を持たない。そして彼らの主な進化先はキュアスライムという回復系の魔術を使うHPの高い感じのスライムになるの。だからグリーンスライムも回復の魔術こそ使えないけどHPは割りかし高めなのね。そのため呪い殺すまでにとても時間がかかる羽目になったわ。こっちも、もはや他の魔法を打つ余裕はなかったから、完全な泥仕合の始まりよ。
私は4匹のスライムたちにまとわりつかれました。スライム達は、4匹合わせてもそこまで大きくないので、。ふりほどけば少しずつは引き剥がせたわ。腕を動けなくさせられたり、窒息させられるような事態にはならなかったわ。でもそのためには彼らの命が尽きるまで腕を動かし続け顔付近を守り続ける必要があったの。」
ん?全然変な話じゃなくね?いや、かなり嫌な状況っていうのはわかるけど。
「ここでかれらの植物しか食べないという習性よ。その時私の着ていた下着類は全てユミリアという植物の綿から作られた植物性の製品だったわ。」
おい、まさか。
「スライム達は生命力が落ちてくると、自身が生き残るため、失って行く生命を補うように、その植物性の布地を食べ始めたわ。私も体力は限界に近く、もうほとんど動けなかった。しかし相手の方も、もうこちらを窒息させる余裕もないほどに追い詰められていたのかしら、口の方に覆いかぶさってくるのではなくローブの隙間に無理やり入り込んで一心不乱に布地を食べてなんとか回復しようとするの。
私は知らなかったのだけど、食事をする時のグリーンスライムは激しく小刻みに揺れるの。そのくせ食事のスピードがやけに遅いのよ。かれらが私のパンツ……「あーあーあー、ストップ。」……。」
「はい、ストップ、ストップ!もうしゃべらなくていいよー。その先のオチは予想できたからね。マジですみませんでした。別に興味本位で聞いたわけじゃないんです、勘弁してください。」
全力で土下座である。しかし顔をあげた俺の目に映った彼女は光を失った目で何処か遠くを見つめ続けながら、
「別にいいんです……もう。終わった事ですから。肉体的な尊厳が失われたわけではないですし……。ただ、初めて感じさせ……「だからもうこれ以上この話はすんな!これ『指示』だから!あと急に敬語になるのやめて!何かコワイよ。」……。」
勘弁してくれよ。この小説のタグはR-15なんだよ。某少年漫画の限界に挑戦するとかいいながらどーかんがえてもアウト内容なのに「トラブル」にならない漫画とは違うの。別に表現の限界にも挑戦してないの!
「いいか、日記もその部分は削除するぞ!お前、あんな日記をそのまま家族に届けたら絶対に突っ込まれるだろ!」
と言ってやった。やばい、本当に先が思いやられる。
「え?日記、届けるつもりだったんですか……。」
そこかよ、そんな意外そうな顔すんなよ。
「いや、届けて欲しかったんだろ?俺は特に目的もなく世界中を旅する男だからな。丁度いい暇つぶしになっただろうし……。」
そんな風に見つめられると何となく照れ臭いので無理やりごまかしてみたがよく考えるとひどいなさっきの俺の言い方は、なんか人生の目標がない浮浪者みたいじゃないか。
そこまで思い至った時、俺はこの世界の新たな情報をまだなに一つ手に入れておらず、ただ時間だけがすぎていた事に気づき某然とするのだった。
主人公設定はドMのはずなのに、この回に関してはSになっているような………。ま、両方いけるひとってことでひとつよろしく。




