饅頭怖い
入ってきた神薙は縁が横になっている寝台の近くにある椅子に腰掛けた。
「ご気分はいかがですか? 白水殿」
「身体が少しダルいけどそれ以外は問題ないよ」
白水とは縁が彼らに名乗った偽名だ。
偽名は縁が家から出てくる際にテレビでやっていた占い番組を思い出してつけたものだ。
九曜星という占いで縁は一白水星なので、その2つを取った。縁は即興で思いついたにしては良い名前だと思っている。
一つ気になることと云えば縁が名乗った時の神薙の様子が少し変だった。まるで有り得ないとでもいうような顔をしていたのだ。
縁は彼らが信用するに値する人達だとは思えど、異世界トリップやら祟り神やら不可思議な事が立て続けに起こっているのでライトノベル定番の名前による束縛や従属化を防ぐため本名は敢えて隠すことにしたのだ。
本当にそんなものが有るのかは分からないが。念のため。
「そうですか。それではまた近いうちに医師を呼び観てもらいましょう」
神薙が微笑みながら縁の前にホカホカと湯気の出している小山に盛られた饅頭の乗った皿を差し出してきた。
「……………」
見舞いの品であろうソレに、縁はやや顔が引きつるのが分かった。
神薙は毎回毎回、縁の見舞いの品には出来立ての饅頭を持ってくる。占いでもラッキーアイテムだった饅頭を神薙が持ってきた時、余りに出来過ぎる符合に縁は勘ぐったものだ。
今は単なる偶然だったと分かっている。でも、考えてみて欲しい。同じものを毎度持ってこられ、そして縁が食べるまで神薙はニコやかに笑って待っているのだ。必然的に縁は饅頭を毎日口にすることにかる。
衣食住を保証してくれている恩もあるので大人しく食べているが、いい加減、一言いっても良いだろうか。キツい。そして飽きた。
「どうしたんですか? さぁ、どうぞ」
「…………………………………………………」
悪気のない、笑顔で饅頭を差し出してくる神薙の姿に、縁は諦めて饅頭を手に取るのだった。
誰か胃薬をくれ。




