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『召喚した地球文明で異世界を遊び尽くす――無限魔力の少年と七人の影姫が築く大帝国』  作者: Ren Hazumi


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第2章「車を出す前に、まず世界を知る」

第2章「車を出す前に、まず世界を知る」


朝は薄い霧とともに訪れた。


朔臣は、昨夜身を寄せた大木の下で目を開ける。


数秒の間、ただ空を見つめた。


やがて、昨日の記憶が戻ってくる。


事故。


死。


新しい体。


システム。


Cola。


魔物。


そして、本来ならすでに去ったはずの世界にある1台の車。


朔臣は息を吐いた。


「……夢じゃない、か」


手を上げる。


その手のひらは、やはり若すぎる。


指を握る。


痛みはない。


傷もない。


そして何より奇妙なのは、27歳だった頃の体よりも、はるかに体が軽く感じられることだった。


「15歳……」


立ち上がる。


少し腹が減っていた。


だが、食事を考える前に、朔臣は昨日立っていた丘のほうへ目を向ける。


遠くには、昨日見つけた集落がまだぼんやりと見えていた。


あの村。


レスタラ。


少なくとも、人口のある地域へ十分に近づいた後、システムから得た情報によれば、そういう名前だった。


朔臣はすぐには丘を下りなかった。


むしろ、再び腰を下ろす。


「いきなり入っていくのも馬鹿だな」


身分証はない。


金もない。


この世界に合った服もない。


どこから来たのか、まともな説明もできない。


そして何より厄介なのは――


頭の中でいくつかの選択をするだけで、この世界の均衡すら変えかねないものを持っていることだ。


朔臣は手を上げる。


薄い光が目の前に現れる。


【世界召喚システム】


何にも触れない。


メニューは開いたままだ。


「昨日は、生き残る方法に集中しすぎた」


システムの能力一覧を見る。


「今度は、この世界のルールを覚える時間だ」


メニューを閉じる。


朔臣は丘を下り始めた。


目的は単純だった。


エルヴァーン川。


その後、東側へ向かい、レスタラへ安全に通じる道を探す。



---


その朝の旅は、想像していたよりもはるかに遅かった。


ルスクヴェイル森林は、まっすぐ進めるような場所ではない。


木の根、湿った土、棘のある茂み、滑りやすい岩、小さな斜面。


それらを避けるため、朔臣は何度も進路を変えなければならなかった。


時折立ち止まり、太陽の位置を確認する。


「東はあっち……なら、川もそう遠くないはずだ」


再び歩く。


数時間後、水の音が聞こえ始めた。


近づく。


次第に、はっきりしてくる。


朔臣が最後の茂みをかき分けると、エルヴァーン川が目の前に広がった。


その川幅を見て、状態も分からないまま渡るのは考え直したほうがいいと思うほどだった。


「結構あるな」


場所によっては、水の流れも速い。


しゃがみ込み、手を水に浸す。


冷たい。


見たところ、きれいだ。


それでも朔臣は、すぐには飲まなかった。


技術職としての経験から、他人が見落としがちな単純なことを考えるのには慣れている。


「きれいに見えるからって、安全とは限らない」


少量の水を手ですくう。


匂いを嗅ぐ。


変な臭いはない。


それでも、朔臣は以前ITEM BOXに保存しておいた水を使うことにした。


立ち上がる。


「この世界で暮らすなら、昔からの習慣はなくさないほうがいいな」


数歩進んだところで、木々の向こうから音がした。


パキッ。


朔臣は足を止める。


パキッ。


風で枝が揺れた音ではない。


何かが動いている。


手がゆっくりと体の横へ下がる。


剣はない。


武器もない。


朔臣は周囲を見渡した。


「……またじゃないだろうな」


木々の間から、2つの目が現れた。


続いて、頭が姿を現す。


粗い濃い茶色の毛。


頭上には小さな角。


ホーンドウルフ。


朔臣はすぐにそれだと分かった。


だが、今回は――


1体ではない。


木の陰から2体が出てくる。


さらに、その後ろからもう1体。


朔臣は半歩後退した。


「3体か」


1体の狼が唸る。


最も大きな個体が左へ動く。


残りの2体が、それぞれ別の位置につく。


朔臣は眉をひそめた。


「ただ一直線に襲ってくるわけじゃない」


最も大きな狼が身を低くする。


その瞬間、朔臣は理解した。


「……囲むつもりか」


待たない。


体を翻す。


走る。


「くそっ!」


動きは速い。


特別な訓練をしていない15歳の体とは思えないほどだった。


それでも3体のホーンドウルフが追ってくる。


爪が地面を叩く音が、どんどん近づく。


朔臣は木の根を飛び越える。


横から1体の狼が跳びかかってきた。


「うわっ!」


体を地面へ投げ出す。


爪が頭上をかすめた。


転がって、すぐに立ち上がる。


だが、別の1体がすでに前へ回り込んでいた。


「速すぎるだろ!」


後退する。


背後には川。


逃げる場所がない。


最大の角のあるオオカミがゆっくり近づいてくる。


朔臣は右を見る。


次に左を見る。


ない。


こんな場所でランドクルーザーを出すこともできない。


あの車を、無闇に出すわけにもいかない。


「ここで車を出したら、逆に死ぬな」


狼たちが動く。


朔臣は息を吸う。


その瞬間、何かが自分の中で切り替わった。


慌てることはない。


ただ、計算する。


距離。


方向。


地形。


時間。


「……よし」


地面から石を拾う。


最大の狼が唸る。


朔臣は石を左へ投げた。


カッ!


3体の狼が、一瞬だけそちらへ顔を向ける。


それで十分だった。


朔臣は右へ走る。


1体が追ってくる。


「まだ来るか!」


わざと2本の木の間にある狭い斜面へ向かう。


追ってきた狼が方向を変えようとする。


遅い。


体が木の幹へ激突した。


朔臣はすぐに振り返り、その隙に走って距離を取る。


残りの2体が追ってくる。


「そこまで追ってくるなよ……」


朔臣は走り続けた。


やがて足元の地面が変わる。


森林の土から、石の多い道へ。


その先に――


道があった。


現代の道路ではない。


荷車が通れるほどの幅を持った土の道だ。


朔臣は足を止める。


森から2体のホーンドウルフが姿を現した。


だが、すぐには出てこない。


木々の境界から唸っているだけだった。


朔臣は道を見る。


それから、狼たちへ視線を戻す。


「外には出たくないのか?」


そこで初めて気づいた。


道沿いには、簡素な木製の柱が立っている。


いくつかには、彫刻された印が刻まれている。


すべては理解できない。


それでも、1つだけ明らかなことがあった。


この道は人間が使っている。


角のあるオオカミは近づこうとしない。


朔臣は薄く笑った。


「つまり、ここがあいつらの縄張りの境界か」


それ以上待たず、道に沿って早足で歩き始める。


数百mほど進んだところで、振り返る。


角のあるオオカミは、もう姿を消していた。


「……よし」


首をさする。


「今朝の最初の問題は片付いたな」


だが、本当の問題は始まったばかりだった。


なぜなら、今度はもっと気になるものが目に入ったからだ。


荷車の轍。


いくつもある。


中には、まだ新しいものもある。


馬蹄の跡もある。


そして道の近くの地面には――


もっと重い車輪の跡が残っていた。


朔臣はしゃがみ込む。


「商人か、兵士か」


地面に触れる。


まだ少し湿っている。


それほど古い跡ではない。


朔臣は立ち上がった。


「ここを人間が通るなら、異世界から放り出されたばかりの人間みたいな振る舞いはやめないとな」


歩き続ける。



---


昼が近づく頃、朔臣はエルヴァーン川の東側にある低い丘へ到着した。


そこからは、より広い景色が見渡せた。


土の道が草原を横切っている。


何台かの荷車がゆっくりと進んでいる。


人間がいる。


長い耳を持つ者もいる。


さらに、背中に斧を担いだ、より大きな体格の者もいた。


朔臣は遠くから彼らを観察する。


近づかない。


「エルフ……」


目を細める。


「それに、たぶんドワーフか」


やはり、異なる種族が共存しているらしい。


システムから予想はしていた。


だが、実際に目にすると感覚が違う。


朔臣は木の下に座る。


「村に入る前に、言葉が必要だな」


ワールド召喚システムを開く。


【言語データベース:完備】


「これは自動で有効になってるのか」


システムは答えない。


メニューを閉じる。


しばらくして、朔臣は遠くから聞こえた会話を思い出そうとした。


妙だった。


言葉が理解できる。


「そういうことか」


言語能力は、単に文字を翻訳するだけではない。


この地の住民が使う言葉そのものを理解できる。


それでも、朔臣は安心しきらなかった。


「言葉は分かっても、文化まで分かるわけじゃない」


小さく笑う。


「そこが、だいたい問題になるんだよな」


遠くから荷車の音が聞こえる。


「止まれ!」


朔臣が振り向く。


道の警備兵が、商人に話しかけている。


「何を運んでいる?」


「小麦と布だ」


「目的地は?」


「レスタラ」


朔臣は注意深く聞く。


しばらくして、荷車は通行を許された。


近づくことはしない。


聞くだけで十分だった。


地名。


レスタラ。


つまり、昨日見た集落は本当にこの道沿いにある。


朔臣は決めた。


近づく。


ただし、怪しい物は持ち込まない。



---


夕方が近づく頃、朔臣はようやくレスタラをはっきりと見ることができた。


遠くから見た予想よりも大きな村だった。


木製の柵が、集落の大部分を囲んでいる。


石造りの家もある。


外側には麦畑が広がっている。


見張り塔。


そして、2つの門。


朔臣は小さな丘の陰で立ち止まった。


「ここがレスタラか」


すぐには動かない。


門の近くには何人かの人がいる。


荷車が出入りしている。


警備兵が荷物を確認している。


何人かの農民が警備兵と話している。


1人の女性が籠を運んでいる。


子供たちは家の近くを走り回っている。


すべてが普通に見える。


だからこそ、朔臣は警戒した。


この世界は生きている。


そして、あそこにいる人々には彼ら自身のルールがある。


服装を見る。


布の素材。


仕立て。


靴。


警備兵が持つ武器。


現代の時代から来たような物は、1つも見当たらない。


朔臣は息を吐く。


「ランドクルーザーで入ったら、たぶん二度と出られないな」


アイテムボックスを開く。


ランドクルーザー300はまだ中にある。


壊れていない。


変化もない。


いつでも出せる。


だが――


ここではない。


朔臣はアイテムボックスを閉じた。


「これからは、あの車は普通の移動手段じゃない」


村を見る。


「あの人たちからすれば、アーティファクトか、鉄の魔物か、あるいは貴族しか持てないものだと思われるかもしれない」


昨日聞いたエンジン音を思い出す。


ホーンドウルフの反応。


技術的な知識がなくても、生き物ならあれが普通の荷車ではないことくらい分かるだろう。


「それが知られたら、問題は値段だけじゃない」


朔臣は木に背を預ける。


「誰の持ち物なのか聞かれる」


そして、聞かれたら――


まともな答えがない。


「俺は貴族じゃない」


指を折る。


「商人でもない」


次の指。


「冒険者でもない」


さらに次の指。


「ここには家族もいない」


止まる。


「それに、金もない」


朔臣は小さく笑う。


「……自分の社会的な立場、思ったよりひどいな」


再びアイテムボックスを開く。


中には、アースアーカイブからすでに召喚した様々な物が入っている。


食料。


衣服。


装備。


車両。


朔臣は周囲の世界に合った簡素な服を選ぶ。


目立ちすぎる服を着替える。


大きなロゴはない。


現代的だとすぐ分かるデザインもない。


着替え終えると、必要のない物を再び収納する。


「これでいい」


立ち上がる。


だが、動く前に、門へ続く道に目が留まった。


1人の男が、警備兵に声を荒らげている。


「だから、商品しか運んでいないと言ってるだろ!」


「それでも確認する必要がある」


「前の検問所でも調べられたぞ!」


「今、お前がいるのはレスタラの領域だ」


会話の声が次第に大きくなる。


朔臣は近づかない。


ただ聞く。


「場所によって規則が違うのか……」


息を吐く。


「なるほど。1つの場所のルールが、別の場所でも通用すると思わないほうがいいな」


しばらくして、商人はようやく荷物を検査に差し出した。


争いは起きない。


大きな騒ぎにもならない。


だが、朔臣にとっては十分だった。


この世界には法律がある。


そして法律があるということは、結果が伴う。


朔臣は門を見る。


「入る前に、何をしたら捕まるのか知っておかないとな」


門へ向かって歩き始める。


急がない。


だが、門まで数十mほどの距離になった時――


1人の警備兵が朔臣に気づいた。


視線が合う。


警備兵はすぐに手を上げた。


「おい! そこの!」


朔臣は止まる。


「俺ですか?」


「ああ。1人か?」


「……はい」


警備兵が近づいてくる。


手は剣の柄の近くにある。


「どこから来た?」


簡単な質問。


だが、朔臣はすぐに気づいた――


これは危険な質問だ。


日本と答えるわけにはいかない。


Earthと言うこともできない。


それに、使える現地の姓も持っていない。


警備兵がもう1度尋ねる。


「若いの。どこから来た?」


朔臣は数秒黙った。


そして、落ち着いて答える。


「この地域の外からです」


警備兵が眉をひそめる。


「どこの地域だ?」


「……旅をしています」


「答えになっていない」


朔臣は警備兵を見る。


敵意はない。


ただ任務を遂行しているだけだ。


だからこそ厄介だった。


朔臣は薄く笑う。


「詳しく答えすぎると、かえって面倒なことになりそうなので」


警備兵が目を細める。


「何を隠している?」


「何も」


「武器を持っているか?」


「いいえ」


「商品は?」


「ありません」


「家族は?」


「いません」


警備兵は息を吐く。


「なら、レスタラに何の用だ?」


朔臣は背後の門を見る。


それから警備兵へ視線を戻す。


「食事と、泊まる場所を探しています」


警備兵はしばらく朔臣を見つめた。


やがて、視線が朔臣の服へ落ちる。


「近くの村の者ではないな」


「はい」


「それに、1人だ」


「はい」


「……妙だな」


朔臣は笑う。


「よく言われます」


警備兵は笑いかけたが、すぐに表情を戻した。


「入れ。ただし、問題を起こすな」


朔臣は頷く。


「ありがとうございます」


警備兵の横を通り過ぎる。


数歩進んだところで――


朔臣は立ち止まった。


振り返る。


警備兵はまだ彼を見ている。


怪しまれているわけではない。


まだ。


朔臣は再び門へ向き直る。


「これが、新しい世界に入るってことか」


息を吸う。


門の向こうには村がある。


その村には、食料、金、宿、情報、法律、そして人間がいる。


この世界を理解し始めるために必要なものが、すべて揃っている。


だが、1つだけ足りないものがある。


身分だ。


朔臣はポケットに手を入れる。


「……これからは、必要のない技術は使わない」


歩き出す。


「少なくとも、この世界がどういう仕組みなのか分かるまでは」


ヴェルセラで目を覚ましてから、初めて――


朔臣は人間の文明へ足を踏み入れた。


そして、1つ分かったことがある。


ITEM BOXに収納されている車は、すべての答えではない。


むしろ、あの車を再び出す前に――


その車が走ることになる世界を、理解しなければならない。


【次章 第3章――「村人から買った、一杯のスープ」】


レスタラで、朔臣は普通の旅人として暮らそうとする。食料、簡素な衣服、水、そして一晩を過ごすための道具を購入する。


だが、村人たちとの会話を通じて、彼はヴェルセラでの暮らしが、外から見えるほど単純なものではないことを少しずつ理解していく。


【第3章へ続く……】

もし間違った表現があったり、批判や提案があれば、すぐに良いコメントをください。私は現在日本語を勉強中で、皆さんのために良い日本語を書けるよう努力しています。•́‿,•̀

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