↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
王家の諜報を担う旦那様とより良い結婚生活を送る方法  作者: たきわ優


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

30/33

第三十話

「‥‥‥」


 もうそろそろあの事件から一月が経つのだが、看過できない事態に陥っている‥‥。


 意識を失って目が覚めたら半日経っていて、旦那様が私を抱きしめながら無事を喜んでくれた。

 護れなくてすまないと、涙を滲ませながら抱きしめてくる旦那様に、旦那様からの愛を感じた。私も腕の中で安心と、恋情かどうかはわからないが、確かに旦那様に愛情を感じたものだ。


 だが、その感じた愛情も今や目減りしそうである‥‥。


 私の一日は、外出や来客がなければ、あまり行動は変わらない。

 その中で、屋敷にいる際に一人になる時間は限られている。

 朝食後の休憩―日記を書く―時間、書庫での読書の時間、屋敷の女主人としての執務の時間など。

 その殆どで、侍女のエリンが、度々様子を窺ってお茶を入れてくれたりと気を配ってくれるから完全に一人と言う訳でもない。

 しかも、あの客人二人ももう屋敷にはいないのだ。セオドアの魔術により強固となった屋敷の護りに――私の特能を除いて――死角はないし。お城よりも安全ではなかろうか。


 にも関わらず、私が辟易しているのには理由がある。


 現在、書庫でお義母様お勧めの恋愛小説の続きを読んでいる。心の中で溜息を吐きつつ、部屋全体に私の特能を発動すると‥‥。


 やっぱり‥‥。


 窓下の影になっている箇所に、特能が引っかかるような気配を感じる。読書中に不意に、何の気なしに窓の景色を見るふりをして、視線を巡らす。すると、窓下の影に、僅かに濃い影が重なっているのを確認した。


 はあああああああ。旦那様‥‥。

 心配なのはわかりますが、四六時中、自分の影を私の護衛に寄越さないで頂けますか!!

 私が、僅かでも一人になるだろう時間には、常に旦那様が影を密かに飛ばしてくるようになったのだ。

 もう勘弁して欲しい‥‥。

 限界よ!

 これは、エリンとロンにお仕置きしてもらうべき案件ね。


 私は、旦那様が確実に影を飛ばしてこない湯浴みの時間に、エリンに切実に訴えた。

 屋敷内で一人でいる時に、誰かの視線を感じる。最近ずっとそうだったこと。気味が悪いこと。

 肩を震わせ、少し涙を滲ませながら切実に訴えた。

 訴えてる内に、本当に切実だし、本当に涙も出てきたわ。


「奥様、このエリンが必ずお守りします。すぐに何故そのように奥様が怖がられる状況になっているかお調べします。お任せ下さい」


 その日は、旦那様はまだお仕事で先に寝台に入って寝ている日。

 いつもなら、こうして湯浴み後、寝台に入り一人になるが、エリンがその晩は寝ずにずっと側にいてくれたようだった。

 朝になり、目を覚ますと、側にエリンがいて、優しい笑顔でこう言ってくれた。


「奥様、おはようございます。原因がわかりました。きっともう奥様を怖がらせるようなことは起こらないでしょう」

「おはよう、エリン。原因がわかったの?どんな原因が‥‥?」

「屋敷に敷いている護りの魔術の誤作動でした。ですから奥様、もう大丈夫ですよ。安心なさって下さいね」

「そう‥‥。原因がわかって安心したわ」


 朝の支度を手伝ってくれた後、エリンは、目の笑っていない笑顔で「旦那様に魔(・)術(・)の(・)誤(・)作(・)動(・)についてお話して参ります」と、一人になると不安だろうと、代わりの侍女を置いて颯爽と部屋から出て行った。


 流石エリン!旦那様の影が潜んでいることを見抜いてくれたのだわ!


 わくわくしながらいつものように旦那様の執務室を盗み聞く。


『旦那様っ!!どういう事ですか?!!』

『な、なんだエリン。何があった?』

『え?どうしたの?旦那様、何かしでかしたの?』

『奥様が、涙を流され私に助けを求められたのです』

『シャロンが涙を‥!?何があった?シャロンは無事か?!』

『ええ、無事ですとも。奥様が涙を流されたのは、旦那様のせいです』

『え?私?』

『旦那様、何をしでかしたんですか?』

『奥様は、最近ずっと一人の時に、視線を感じて怖い思いをされていたようです。誰にも相談できず、勘違いかと思ったりもしたようですが、やはり視線を感じるのだと』

『‥‥』

『え?旦那様‥‥なぜ目を逸らすんです‥‥って、え?え?』

『昨晩、私は湯浴み後から朝までずっと奥様の側におりました。で、旦那様はその間何をされていらっしゃいましたか?』

『えっと‥‥その‥‥』

『何度も影を飛ばして様子を伺いに来ていらっしゃいましたよね?今まで、奥様が一人の時間に何度も何度も我々が知らない間に影を飛ばされていたのではないですか?』

『‥‥』

『うわー‥‥旦那様、そんな事を奥様にしてたってことですか‥‥過保護の域を超えてキモい‥‥』


 エリンに盛大に怒られ、朝食に呼びに来た侍女長もその後、事情を聞くや直ぐ様参戦し、その横でずっとドン引いていたロンも、なぜ旦那様の奇行を気付かなかったのだと詰められ‥‥。

 少しして、執事長が「旦那様は、急なお仕事が入りました。先にご朝食を」と、言ってくれたので、盗み聞きながら、私は晴れやかな気分でゆったりと一人の朝食を楽しむのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。