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遭遇

7月12日 更新1回目

 似たような通路が延々と続いているせいで、ソニアの心は焦燥感に満ちていく。


「ララーナ、本当にこっちで大丈夫?」

「間違いないわ。

 声が、だんだん近付いてる」


 本当に大丈夫だろうか? と、ソニアは不安に思ってしまう。

 だが、暫く進んでいくと、


「ソニア、あれって!?」


 通路の先に扉が見えた。


「こんなところに扉が……?」


 二人はその扉に近付く。

 すると、


「……け…………!」


 扉の中から声が聞こえた。


「この扉の先から、子供たちの声がはっきり聞こえるわ」

「じゃあ、ここで間違いないのね」


 ソニアは、扉の取っ手に手を掛けた。

 この先にリリスがいる。

 そう考えたら自然に体が動いてしまう。


「待って!」

「!?

 ど、どうして!?」

「……子供たち以外に、誰かいるみたい」

「……!?

 それって――」


 もし誰かがいるのだとしたら、それはリリスを攫ったあの男に違いない。


「気を付けてね、ソニア。

 何があっても冷静に対処すること」

「わかってる」

「本当に大丈夫ね?」

「ええ」


 親友の言葉に応えつつ。

 ソニアは一刻も早く、娘の無事をこの目で確かめたかった。

 そしてララーナも、そんなソニアの気持ちは理解している。

 娘を誘拐された母親が冷静でいられるはずはない。

 だからこそ、自分がソニア以上に警戒を強めねばならないとララーナは考えていた。


「まず約束して。

 もし戦闘になりそうなら全力で逃げること。

 一応、戦いに使える道具(アイテム)もあるけど……。

 私もあなたも戦いは苦手でしょ?」


 苦手というか、ソニアは戦いなんてしようと思ったことすらない。

 喧嘩であっても、暴力をふるったことはなかった。

 だが生まれて初めて――リリスを攫った犯人だけはぶっ飛ばしてやりたいと感じているのだが……。


「最優先事項は、リリスちゃんと子供たちの安全の確保」


 ソニアは頷いた。

 そして今更ながらに、ララーナが『リリス』ではなく、『子供たち』と言っていることに気付いた。

 どうやらララーナは、子供たちの声を聞いたようだ。


「いい、ソニア。

 まずは扉を開いて、隙間から様子を窺いましょう」

「……わかった」


 ソニアは音を立てないように、ゆっくりと扉を開いた。

 そして中を覗き込む。


「……!?」


 すると子供たちの姿が見えた。

 小さな隙間からなので見える位置は限られているが、間違いない。

 しかも、確認できるだけで10人以上は子供たちが幽閉されている。

 全員が疲弊しきった様子で項垂れている。

 中には地面に倒れ伏せる子供もいた。


「っ……」


 ソニアは取っ手を握っていた力が強くなっていた。


「……ソニア、待って」


 ララーナの手が、ソニアの手に添えられる。

 まだ扉を開くな――という意味だろう。

 さらに注意深く、室内を観察すると。


「……いったい……どこに……」


 男の声が聞こえた。

 だがこの位置からでは、男の姿は見えない。

 と思っていると、カツカツという足音が聞こえた。

 そして隙間から男の背が見えた。

 男は倒れ伏せている子供の元に歩み寄り、膝を落とした。


「っ……ララーナ、ごめんなさい」


 気付けばソニアは、


「もう限界みたい」


 そう言った時には既に扉を開け放っていた。


「やめなさい!」


 ソニアは敵意を込め声を上げた。

 倒れ伏す少年に伸びていた男の手がピタッと止まる。


「あ~もう!

 やっぱりこうなっちゃうのね!」


 言ってすかさず、道具袋に手を伸ばしているララーナ。

 だが、その目は男を注視していた。


「手をあげて、ゆっくりとこっちを向いて」


 ソニアは強い口調で命令した。

 そして男がゆっくりと振り向く。

 警戒を強めながら男を見据える二人だったが、


「……あなたは……!?」

「ぇ――し、司教……様……?」


 ソニアと司教は目を丸める。

 ここで顔を合わせることなど、互いに想定もしていなかったのだから。


「ど、どうしてあなたがここに?」


 先に口を開いたのは司教だった。

 同時に、ソニアはフェブルの言葉を思い出していた。

 司教が犯人を追って、地下に向かったと言っていたことを。

 そして、ソニアは室内を見回す。


「いない……」


 恐らく、ここにいるのは誘拐された子供たちだ。

 だが、この部屋にリリスはいなかった。


「司教様、私の娘は!?

 それに犯人は……!?」


 司教に掴みかかるソニア。


「ま、待ってください。

 私も今、ここに着いたばかりなのです」

「ソニア、ちょっと落ち着いてよ」


 ララーナに宥められる。

 だが、落ち着いてなどいられなかった。


「司教様は犯人を追ってここまで来たんですよね?

 じゃあ犯人をもう見つけてるんじゃ?」

「いえ……捜索を続けていたのですが、犯人の姿はどこにもなく。

 彷徨いながらも歩き続けていると、部屋に辿り着きました」

「そんな……じゃあ、あの男は……それにリリスは――」


 ソニアの顔は真っ青に染まる。

 その様子を見て、司教ははっとした様子でソニアを見つめ。


「まさか、犯人が連れていた娘さんは……」


 答えを返すまでもなく、司教は攫われた子供――リリスがソニアの娘であることに気付いたようだった。

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