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再びリリスの捜索へ

7月19日 更新一回目

「司教様のおっしゃる通り、攫われたのはソニアの娘なんです」


 言葉を失っているソニアの代わりに、ララーナが返事をした。

 その言葉にルドルフ司教は頷くと、ゆっくりと口を開いた。


「……もしここに、娘さんがいないのだとすれば、まだ犯人と共にいる可能性が高いと思います」


 そんなことはソニアとてわかっていた。

 だがその犯人はどこにいるのかがわからない。

 何よりリリスは無事だろうか?

 もし……の子の身に何かあったら……。


(――ダメ!)


 悪い方向に考えるな。

 ソニアは弱気を吹き飛ばすように、頭をぶんぶんと振った。

 リリスは今も助けを待っている。

 それなのに、私が挫けてる場合じゃない。


「……司教様、私は直ぐに娘を探しに戻ります。

 どうか、この子たちをお願いします」


 ソニアの言ったこの子たち――というのは、ここに攫われていた子供たちのことだ。


「それは勿論ですが、あなた一人では……」

「危険は承知の上です」


 本当は、ここで捕らえられていた子供たちの安否を気遣う余裕すら、今のソニアにはない。

 ここで話している時間が惜しい。

 今直ぐにでも部屋を飛び出したい。

 そう思ってしまっている。

 ソニアにとって最も大切な者――人生の中で得た宝物は、間違いなくリリスなのだ。

 でも、それでも――ソニアには、子供を攫われた親の気持ちが痛いくらいにわかってしまう。

 だからこそ、この子たちを無事に両親の下へ帰してあげたい。


「ララーナも、司教様を手伝ってあげて」

「え……で、でも――」

「これだけの子供たちがいるのよ?」

「それは、そうだけど……」


 答えに窮するララーナが、子供たちの姿を見つめる。

 疲弊し立ち上がることすら難しい子供もいる。

 そんな子供たちを連れ、ここから脱出するのがどれだけ難しいことかは想像に難くない。


「ソニアさん、どうしても直ぐに行かれるのですね?」

「はい」

「……わかりました。

 であれば、ララーナさんはソニアさんに付いてあげてください」


 司教はそんな提案をした。


「ですが司教様、それでは子供たちが……」

「どちらにしても、わたしとララーナさんの二人だけでは、子供たちを無事に連れ帰るのは難しいでしょう」


 弱気にも思えるが、これは司教が冷静に状況を分析しているからこその発言だ。


「もう直ぐ、町の衛兵や司祭たちが救援に駆け付けるはずです。

 この子たちを無事救出するという意味では、それが確実だと考えます」


 救援――と言われて、ソニアはフェブルのことを思いだした。

 彼がもし、ソニアの言葉を頼りに竜撃亭に向かったのなら、もう直ぐ救援が来るに違いない。


「わかりました。

 この子たちをお願いします」

「任せてください。

 必ずこの子たちは無事に救出してみせます。

 何も力になれないわたしが、こんなことを言うのも気が引けますが……お二人とも、決して無理はなさらずに」


 申し訳なさそうに視線を落とす司教に、


「力になれないなんてことありません。

 司教様がいてくれたから、私は娘の捜索に出られます。

 どうか、司教様もお気を付けて」

「私が付いていく以上、ソニアには決して無理はさせませんから」


 軽口のような親友の言葉だが。

 きっとソニア一人では、無謀な行動を繰り返していただろう。

 ララーナが付いて来てくれたことを、心の中で感謝して。

 ソニアたちは部屋を出て、リリスの捜索に戻るのだった。




           ※




 部屋を出たソニアたちだったが、猪突猛進にリリスを探し回るような真似はしなかった。


「ララーナ。

 この部屋を探し当てた魔法道具(マジックアイテム)ってまだ使えるかしら?」


 あの道具(アイテム)を使えば、娘を見つけられるのではと、ソニアは考えているのだ。


「……ちょっと待ってね」


 再び魔法道具(マジックアイテム)を取り出すララ―ナ。

 そして意識を集中するように目を閉じた。

 すると、


「……うん。

 大丈夫!」


 どうやらまだ効果は切れていないようだ。


「リリスの声が聞こえたりしない?

 何か人の声とか……?」


「いくつか聞こえて来るわね。

 一つはこの部屋の中だけど、少し離れた場所かな……女の子の声が聞こえる。

 しかも男の人の声も……」


「犯人とリリス……?」


「ごめんなさい。

 まだそこまではわからないわ……」


 でも、可能性があるのなら。


「ララーナ、行きましょう!」

「ええ!」


 今度こそ、リリスに会えることを信じて。

 二人は通路を駆け出した。

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