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おっさん、犯人を追う。

6月15日 更新1回目

「……きょ、教団の関係者が人攫い!?」

「そりゃマジな話かよ!?」

「な、なんで教団関係者が子供を……!?」


 ザケル、グラニー、ウェルトの三人が声を揃えて驚愕した。


「まだ可能性があるってだけだ」

「ええ。

 断定は出来ません。

 しかし……」


 司教自身、可能性は高いと考えているのだろう。


「思い当たる相手はいるのか?」

「……それもまだ断定は出来ませんが……」


 その名を口にすることを憚(はばか)っているようだったが。

 どうやら心当たりはあるようだ。


「とにかく、私はこのまま探索を続けます。

 今は一刻も早く、攫われた子を早く救出しなくては……!

 あなた方は直ぐにここから避難を。

 ここを真っ直ぐに進んだ先にある階段を上れば礼拝堂に出ます」


 司教の言葉にザケルたちは表情を明るくした。


「だ、旦那、早く行きましょう!」

「お、おれたち、助かったんだ!」

「一時はどうなるかと思ったぜ……」


 三人組はすっかり助かった気でいた。


『ゆ、勇者様、まさかここで帰るとか言いませんよね?』


 カティは少し不安そうだった。

 だが、おっさんもこの状況を放置するつもりはない。


「司教さん、俺も手伝うぞ」

「「「……ぅェ!?」」」」


 おっさんの返答に三人は声にならない悲鳴を漏らした。


『流石は勇者様です!

 悪人は容赦出来ない。

 そういうことですね!』


 対してカティは嬉しそうだ。

 おっさんに、徐々に勇者としての自覚が芽生えている。

 そう思っているようだ。


「だ、旦那、正気ですかい?」

「ああ。

 実際に犯人を捕まえられるなら、その方が今後安心だろ?」


 ちなみにおっさんには、勇者の自覚などこれっぽちも芽生えていない。

 子供を攫う犯人を捕まえるのも、全ては娘の為だ。


「あ、安心って、こんな怪しげな場所を探索してたら、犯人を捕まえる前に自分が死んじまうかもしれないじゃないですか!」

「そ、そうですよ。

 もしこの辺りに、罠(トラップ)でも仕掛けてあったら……」


 ウェルトとグラニー。

 二人の冒険者はやたら臆病だ。

 冒険者なのに、冒険をするつもりは全くないのだろうか?


「いや、お前らを助けるより子供を助ける方が優先だ」

「ん、んなバカなっ!?」


 ザケルが不服そうに叫んだ。


「あ、アンクルさん。

 お仲間に対してそれは……」

「仲間……?」


 どうやら司教は、おっさんとザケルたちが仲間だと思っているらしい。


「いや、仲間でもなんでもない。

 それどころか、こいつらは犯罪者だ。

 こっちが盗人で、こっちの二人組は貧民街の人たちに冤罪を掛けようとしてたんだ」


 おっさんが司教に事実を伝える。


「……なるほど。

 であれば、気遣う必要はありませんね」


 すると司教は、断罪の言葉を口にした。


「ちょっ!?

 あんたら冷たすぎないか!?」

「罪人にも人権があるだろ!」

「そうだそうだ!

 酷過ぎるぞ!」


 三人は完全に開き直っていた。

 自分が罪を犯した犯罪者であるという立場をすっかり忘れているようだった。


「そ、そうだ!

 ははっ!

 出口はこの近くにあるのなら、もうあんたの助けは必要ねえ!」

「た、確かにそうだな!」

「お、おれたちだけで、ここを出ちまえばいいんだ!」


 ザケルたちは顔を見合わせる。

 そして――ダダダダダダダ! と大慌てでこの場を走り去って行った。

 ちなみに、彼らは明かりもない為、走ると危険だと思うのだが……。

 これ以上は、おっさんが気にすることでもないだろう。


『勇者様、逃がしちゃっていいんですか?』

『良くはないが……子供が優先だろ。

 子供を攫っていた犯人がいるのはほぼ確定してるんだからな』


 おっさんとカティが話していると。


「アンクルさんも、どうか一刻も早くこの場を離れてください。

 どんな危険があるかわかりません」


 司教は言った。

 が、それは不要な心配だ。

 おっさんが勇者――もとい樵勇者であることを、司教は知らない。

 戦闘になれば、司教をワンパンしてしまうくらいにおっさんは強いのだけど。

 アーリアラ教団の司教という立場上、一般人を巻き込むわけにはいかないと考えているのかもしれない。


「俺のことなら心配はいらないぞ。

 一応、少しは戦えるからな」


 少しというか、実はこの世界で最強だったりする。

 おっさんにその自覚はないけれど。


「ですが……」

「自分の身は自分で守るさ。

 それよりも攫われた子が心配だ。

 急ごう」

「……わかりました。

 ですが決して無理はなさらぬように。

 既に教会の司祭たちにも知らせが届いている頃なので、時期に衛兵たちも来るはずなので」

「そうだったのか」


 だとしたら、犯人が捕まるのは時間の問題かもしれない。

 そうなると問題は子供の安否だが。


「それでは犯人を追いましょう」

「ああ」


 司教の言葉に返事をした。

 が、司教が進もうとした方向は、おっさんたちが進んで来た方向だったのだ。


「待ってくれ司教さん。

 俺たちはそっちから進んで来たが、何もなかった。

 何かあるとするれば、司教さんが進んで来た方向だと思うぞ」


 おっさんの言葉に司教は足を止める。


「……いえ、私が進んで来た方向には分かれ道すらありませんでしたが」

「え……?」


 それが事実なら。

 この地下は一本道の通路があるだけということになる。

 だとしたら犯人はどこに――。


「まさかとは思いますが……」


 何かわかったのだろうか?

 司教が何かを言いかけた、その時――。


「「「ぎゃあああああああああああっ!?」」」


 おっさんの思考を吹き飛ばすように、通路に叫び声が響いた。

 それは階段――出口へと向かったザケルたちの声だった。

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『フライパン無双~とある呪いを解く為に、冒険者になりました~』
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