↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
76/94

おっさん、犯人に近付く

6月11日 更新1回目

「なんで……と言われると、説明が長くなるんだが……」


 おっさんも、そしてルドルフも。

 まさか知った顔と出会うことは想定外だったのだろう。

 互いに窺うように相手の言葉を待ってしまう。

 その間、周囲を照らすようにぷかぷかと小さな光球が二つこの場を漂う。

 おっさんが見た光の正体はこれだった。

 ルドルフは光の魔術で周囲を照らしながら、ここまで歩いてきたのだろう。


『勇者様……どうしてここに司教さんがいるのでしょうか?』

『いや、俺が聞きたいわ』


 こんな状況で出会ったのだ。

 聞きたいことが色々ありすぎた。

 どうやってここに来た?

 ここはどこか知っているか?

 まさか司教が人攫いなのか?

 様々な考えがおっさんの頭の中を駆け巡る。


「お~い、アンクルの旦那~!

 待ってくれ――あだっ!?

 こ、こっちは暗くて何も見えねえんだよぅ~!」」


 背後から声が響いた。

 そしてバタバタと足音が近付いてくる。


「……他にも人が……!?」

「ああ。

 どういうわけかこんなところに飛ばされてしまってな」

「飛ばされた……?

 どういうことですか?」


 司教ルドルフが尋ねた。

 その表情には、明らかな戸惑いが浮かんでいる。

 少なくとも惚(とぼ)けているようには見えない。


「あ、旦那!

 やっと追いついたぜ……」


 考えている間に、ザケルたちがおっさんに追いついた。

 そして司教を見て、


「――って、人!?

 まさかこいつが犯人……!?」

「てめぇ~があの時の依頼人か!」

「よくもおれらをハメやがったな!!」


 口々に怒りをぶちまけた。

 まぁ、こんな状況で自分たち以外の人を見たら、犯人だと思い込みたくなるのもわからなくはないが。


「は、犯人……?

 ど、どういうことです……?」


 ルドルフの顔には強い戸惑いが浮かんだ。


『勇者様。

 司教さんは犯人なのでしょうか?』

『どうだろうな……』


 あまり腹の探り合いはしたくないが。


「……ルドルフ司教、あんたはここがどこか知ってるか?」

「いえ……。

 ここを見つけたのは、私も本当に偶然で……。

 ただ、人攫いがここに逃げ込んだようで追ってきたのですが……」

「なんだと……?」


 人攫いがここに……?


「テメェが実は犯人なんじゃねえのかっ!」

「……猜疑心に囚われる気持ちは理解します。

 正直なところ、私も同様の考えがないわけではありません」


 ザケルの目を見て、司教ははっきりと答えた。

 疑われるのは当然だ。 

 そしてお互い様でもある。


「だな。

 疑うなというのは無理がある」

「ええ、その上で提案です。

 互いに持っている情報を交換しませんか?」


 司教は、最初から疑い合っているのなら、腹の探り合いをしても仕方ない。

 そう言いたいのだろう。


「だ、旦那……どうしますかい?」

「確かにこの状況なら……」

「協力するのも手じゃ……」


 ザケルたちがおっさんの言葉を待つ。

 だが、おっさんの答えは決まっていた。


「わかった」


 そしておっさんたちと司教は、互いに持っている情報を交換した。




           ※




「礼拝堂の祭壇の下に隠し階段……?」

「転移の魔法道具(マジックアイテム)ですか……?」


 交わした情報は、互いにとって信じがたい話ではあった。

 だがそれは、嘘を吐くなら互いにもっとまともな嘘があるだろう。

 そう思えるからこそ、信じる価値はあると思えた。


「いやぁ、しっかし。

 出口があるってだけで安心したぜ」

「だな……。

 一時はどうなることかと思った……」


 ウェルトとグラニーは言葉のまま、ほっとした顔を見せる。


「あなた方は直ぐにここを離れてください。

 危険があるかもしれませんから」


 そうは言うが。


「実際に攫われた子供がいるんだよな?」

「……情報提供者である少年の話が事実であれば」


 先程の情報交換で、司教自身がその男の姿を目撃したわけではないことは聞いている

 だが、


「司教は信じてるんだろ?」

「……はい。

 この地下階段が見つかったことが、何よりの証拠だと思っています」


 教会で見つかった謎の地下への階段。

 そしてどこまでも続くこの通路――。

 こんな大規模な物まで用意して犯行に及んでいるのだとしたら、犯人はどれほどの権力や力を持っているのだろうか?

 そもそも、そんな権力を持っている者などこの世界には限られているはずだ。


「……なぁ、ルドルフ司教。

 ここが教会の地下にあるってことはさ。

 この地下通路を作ったのは、教団関係者って可能性はないか?」

「……それは……。

 信じがたいことではありますが……」


 司教は重々しい表情を見せた後、


「……子供を攫っている犯人が、教会の関係者って可能性もあるわけだ」


 おっさんの言葉に静かに頷いたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新作公開しました。
『フライパン無双~とある呪いを解く為に、冒険者になりました~』
もしよろしければ、ご一読ください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。