おっさん、探索を開始する。
6月6日 更新1回目
『そ、そういえば、そうでしたね』
『お前、忘れてたのか?』
おっさんに、それで本当に聖剣の妖精か? という疑わしい目を向けられ、カティは両腕をぐるぐる回して反論した。
『わ、忘れてたなんて心外です!
突然のことで、混乱してたんです!』
まぁ、その気持ちはわからなくはない。
そもそも、この魔法道具を渡した奴は、何の為にザケルたちをこんな場所に転移させたのだろうか?
おっさんが考えに耽っていると。
「アンクルさん、これからどうしましょうか?」
「……さきに、すすみますか?」
「そうだな……」
リルムとミーアにそんなことを聞かれた。
リルムはどこか落ち着かない様子で、そわそわしている。
突然、こんなわけのわからない場所に来たのだから当然だろう。
『カティ、二人を連れて町に戻ろう』
『それがいいと思いますが……。
ただ……この邪悪な気配、やっぱり気になります』
この件を調査したそうなカティ。
『面倒だから放置じゃダメか?』
『ちょ!?
勇者様、あなたは外道ですか!』
妖精カティに、おっさんは外道扱いされた。
手のひら返しとはこのことである。
だが、それならおっさんにとっても好都合だ。
『じゃあ外道だからここの調査はしなくていいな』
『あ~嘘です!
勇者様冗談です!
勇者様は超勇者様ですから、どうかここの調査を!』
必死におっさんを引き留めるカティ。
『いや、だってここ不気味だろ?』
『それはそうですけど……。
考えてみてください!
人攫いの犯人を追ってここに辿り着いたんですよ!
もしかしたらここに犯人が隠れているかも!
それに、攫われた子供たちもいるかもしれませんよ!』
『……なるほど』
その可能性はゼロではない。
『……ムーブでここを出てから、また戻ってくることは出来るのか?』
『あ……』
カティは失念していたとばかりに声を漏らす。
ムーブで移動するには、その場所をイメージする必要がある。
つまり、ここがどこであるかわからない以上、再びここに転移することは出来ない。
『勇者様がここを出てしまうと、戻ってくるのは難しいかもしれません』
『だとすると……』
おっさんは自分のとるべき行動を決めた。
「リルム、ミーア。
お前たちを今から町に転移させる」
「え……?
あたしたちをって……。
ししょうは、どうするんですか?」
「俺はこの先を探索してみる。
もしかしたら、何か見つかるかもしれないからな」
おっさん自身が町に戻ってしまえば、ここに戻って来ることが出来ないのなら、それしか手段はないだろう。
「え?
ししょうは、いっしょにかえらないんですか?」
「少し探索した後、俺も直ぐに戻るさ」
「でも……」
少女の瞳が揺れた。
この場で一人残ることになるおっさんを、リルムは心配しているんだろう。
だが、
「リルム、アンクルさんの言う通りにしましょう」
「おかあさん……」
ミーアは娘を諭した。
自分たちがここに居ても足手纏いにしかならないということを。
「……わかった」
それはリルムも本当はわかっていたこと。
だけど、それでもリルムはおっさんが心配だったのだ。
自分の師匠は凄い人だとわかっているけれど。
「リルム、ありがとな。
でも俺は大丈夫だ」
おっさんはリルムの頭を撫でて優しく微笑む。
リルムはおっさんの瞳を見つめる。
おっさんは嘘は言わないことを、リルムはおっさんとの短くも深い付き合いで理解していた。
だから、
「ししょう、きをつけて……!」
「ああ!」
おっさんはリルムの言葉に力強く頷いた。
「よし、じゃあ町に転移させるからな」
「アンクルさん。
無理はなさらずに」
「遅くならないうちに戻るよ。
今からミランダの酒場の前に転移させるから、戻ったら店にいてくれ。
後で合流しよう」
「わかりました」
そして、おっさんはムーブを使い二人を町に転移させた。




