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おっさん、闇の中を進む。

6月7日 更新1回目

「お、おい、あんた!

 今なにをやったんだ!?」


 ザケルが驚愕して、おっさんに詰め寄ってきた。

 ミーアとリルムが突然消えたことを驚いているようだ。


「ああ、転移させた」

「て、てんい?

 なんだそりゃ、あんた魔術でも使えるのか?」

「まぁ、そんなとこだな」


 おっさんが使っているのは、正確には魔法なのだが。

 このスキンヘッドの凶悪顔に、それを説明しても仕方ないだろう。


「だ、だったらオレも助けてくれ!

 いや、助けて下さい!」

「お、おい!

 引っ付くな!」


 ザケルはこの場に跪(ひざまず)き、おっさんの足にしがみ付いてきた。


「旦那が助けてくれるなら、オレは一生あんたに付いていきますぜ!」


 なんだか調子のいいことを言っている。


「お、おい、お前!

 一人で助かろうってのか!」

「た、頼む。

 あんた――いや、あなた様。

 どうかおれたちも助けてください!」


 ザケルに追随して、冒険者たちもおっさんに助けを求めた。

 彼らの四肢は未だにカティの魔法により拘束されている。


『見捨てるのは、流石に可哀想ですよね……』

『まあなぁ……。

 とはいえ、犯罪者に協力しようとした結果だからなぁ……』


 身から出た錆というか、自業自得な気もするが……。

 ここはどこかもわからない上、出口があるかすら不明。

 今はカティの魔法で明かりを確保しているが。

 おっさんがいなければ、恐らく彼らはここで生涯を終えることになるだろう。


「お前ら、本当にここがどこか知らないんだな?」

「勿論でさぁ、旦那!」

「お、おれたちもです!」

「貧民街の奴を誰でもいいから、墓場まで連れて来いと依頼されただけなんです」


 巨漢の男たちが立ち並び、一斉におっさんにへ~こらする姿は少しばかり不気味だった。


『このまま町に転移させたら、彼らは逃げちゃいますよね。

 悪いことをして、無罪放免はダメです!

 彼らには罪を償ってもらわないと』

『それはそうだが……』

『この際、探索に付き合ってもらいましょうか』


 カティがそんな提案をしてきた。


『マジか?』

『はい。

 何か役に立ってくれるかもしれません。

 探索を終えたら一緒に町に戻ればいいですし。

 その後は衛兵さんに捕まえてもらいましょう』


 カティの話を聞きながら、一瞬、牢屋に直接転移させるという荒業も思い浮かんだが。 おっさんは牢屋の場所を知らなかった。


『……ま、それでいいか』

『はい。

 それに彼らの依頼人がここに来ないとも限りません。

 彼らをここに転移させたのも、何か理由があるかもしれませんから』


 抜けているようで、カティは色々と考えていた。

 おっさんは依頼人の顔を知らない以上、もし顔を合わせてもそいつが犯人であることがわからない。

 そうなると、確かに依頼人の顔を知っている者の存在は必要だろう。

 まぁ、そもそも、こんなところで人と顔を合わせたとしたら、問答無用に怪しい奴であるだろうが。

 そんなことを考えつつ、


「俺はここの探索をする。

 置いて行かれたくないなら付いてこい」

「た、探索ー!?

 こ、こんなところをですか!?」

「バカ野郎!

 旦那がやるって言ってんだから、付いて行きゃいいんだよ!」

「そうだそうだ!

 文句言ってんじゃない!」


 不服を口にする冒険者1を、ザケルと冒険者2が大慌てて諭した。

 おっさんの機嫌の損ねないようにという配慮だろう。

 そもそも、この程度のことで不機嫌になるおっさんではないのだが。


「それじゃあ行く――と、その前に――」


 おっさんは冒険者たちの足を見て、


『カティ、両足の拘束だけ解いてやることは出来るか?』

『はい』


 カティに頼んで両足を拘束していた光の輪を解除してもらった。


「うおっ!?」

「き、消えた!?」


 突然、拘束が解除されたことに二人は驚愕していた。


「よし、これで普通に歩けるな。

 それじゃあ行くか」

「へい!

「お供いたします!」

「ま、待ってくださいよ!」


 そして、おっさんを先頭に闇の中を進んで行く。


「そういや、旦那の名前を聞いてませんでしたね」

「うん?

 そうだったか?」


 まぁ、こいつらに名乗っても仕方ないしな。

 などとおっさんが思っていると。


「おれはウェルトです」

「オレはグラニー」


 二人の冒険者が名乗った。


「オレは旦那とは長い付き合いですが、一応。

 ザケルと言います。

 改めてよろしくお願いします、旦那」

「知ってるが、長い付き合いじゃないだろ」


 何より、彼らの名前など、おっさんは全く興味なかった。

 しかもこいつらは、リルムやミーアに酷いことをしたのでいい印象もない。

 だが……名乗られてしまった以上は一応。


「アンクル・フレイルだ」


 おっさんも、自分の名前を伝えた。


「アンクルの旦那か!

 いい名前だ!

 旦那、オレァもう一生旦那に付いていきますぜ」

「いや、来なくていいぞ」


 おっさんは割と本気でそう思った。


「はははっ!!

 またまた旦那ってば!」


 だが、ザケルは気にもせず豪快に笑った。

 その笑い声が闇の中に反響する。


『やはり、かなり深いみたいだな』

『はい。

 周囲に何かあるかもしれませんから、私はしっかりと目を凝らしておくことにします!』


 それから暫く、おっさんたちはこの不気味な空間を進んだものの。

 目を見張るような物は何もなく、何の成果も得られぬまま、時間が過ぎていった。

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『フライパン無双~とある呪いを解く為に、冒険者になりました~』
もしよろしければ、ご一読ください。
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