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貧民街のレッテル

本日1回目の更新

「だからさっきから言ってんだろ!

 おれは仕事でこっちに来ただけだ」


 必死に弁明するフェブル。


「仕事?

 キミたちのような貧民街に住む者たちが?」

「身分が不確かな者を、誰が雇うと言うのですか?」


 だが、司祭たちは全く取り合ってはくれない。

 これでは何を言っても無駄だろう。


「ウソは言ってねえっ!

 そもそも、おれたちが子供を攫う理由がねえ!」


 三人組のリーダー各であるフェブルの言葉に。

 仲間たちはブンブンと首を縦に振る。


「貧民街には、奴隷売りという仕事があると聞いています」

「そんな仕事を生業としている者がいる。

 その事実に神はお嘆きです」


 アーリアラ教団の司祭たちは、時に神の代弁者として信徒たちに説教を行う。

 真っ当な信徒たちにとって、それはありがたいものであるのかもしれない。

 が、今この状況でそれを利用するのはいかがなものだろうか?


「おれたちは奴隷売りなんてやってねえ!

 そもそも、証拠がねえだろっ!」

「貧民街の住民であるというだけで十分な理由ではないですか?」

「っ――」


 心ない司祭の暴言に、フェブルは悔し気に歯を噛み締めた。


『勇者様、彼らの言っていることはおかしいです!

 出自が証拠になるはずありません!

 あんなの言い掛かりです!』


 カティは鼻息を荒くして、怒りを発露させている。

 確かに、司祭たちの発言はあまりにも理不尽だ。


『さぁ、勇者様!

 助けにいきましょう!』

『え、やだよ?』

『そうです!

 勇者らしく、パパッと解決――って、今やだって言いました!?』


 カティの甲高い声が、おっさんの脳裏に響いた。


『どうしてですかっ!

 フェブル君たちは知り合いですよ!』


 そして、身振り手振りを激しく振って不服を申し立てて来た。


『そうだな』

『もしこのまま捕まって罪に問われたらどうするんですかっ!』

『それは可愛そうだなと思うよ。

 だが、今はリリスが一緒にいる』

『……え?』


 おっさんの言葉で、妖精カティの視線がリリスに向いた。


『この子がいる時に、余計な騒ぎに首を突っ込みたくはない』


 おっさんだけならまだいい。

 だが万一にも、大切な娘を危険に巻き込みたくはない。

 見たところ、あの司祭たちはかなり頭に血が上っているようだからな。


『でも……でも……!』


 カティはギュッと下唇を噛む。

 その表情は本当にそれでいいんですか? と、語っているようだった。

 だが、おっさんの意志は変わらない。

 娘の為ならば、おっさんは非情にもなれるのだ。


『――あの子たちを見捨てるような勇者様は、きっと娘さんに嫌われますよ!!』

『……なにっ!?』


 嫌われる。

 しかも娘に。

 考えるだけで、おっさんの心が重くなる。


『リリス、お父さん、嫌い!

 大っ嫌い!』

 とか言われちゃうかもしれないんですよ!

 それでもいいんですか!?』


 カティのリリスの真似は全く似ていなかった。

 しかも可愛くないのがまた腹立たしい。


『おいカティ……』

『なんです?

 もしや、勇者的な行動を取る気になってくださいましたか?』

『娘の真似をするなら、もっと可愛くやれ。

 今のじゃ娘の可愛さも微塵も表現出来てなかったぞ!』

『そんなことどうでもいいんですよ!』


 どうでもいいとは何事だ。

 この妖精はうちの娘の可愛さをまるでわかっていない。

 後で三日三晩ほど語り明かしてやらねば――などと思っていると。


「とにかく、今からキミたちを教会に連行する。

 尋問はそこでゆっくりさせてもらおう」

「そんなもん、こっちは受ける気はねえっ!

 そっちがその気なら、おれらは無理にだってここを押しとおってやるよ」


 先程から穏やかではなかった会話が、より不穏に変わる。

 騒ぎ続けていたせいもあり、人々の視線が自然と集まっていた。

 活気に溢れていた町に、重々しい空気が伝染していく。


「おとさん……リリス、なんだか怖い……」

「リリス……!?」


 しまった。

 おっさんは自分のミスに苛立ちを感じた。

 なんでもっと、ここから早く立ち去らなかったのか。


「なんで、みんな、けんかしてるの?」

「それは……」

「なかよし、できないの?」


 脅えたような、不安そうな娘の姿を見た瞬間。 

 既に彼は、自分の行動を決めていた。


「……出来るさ。

 今からお父さんが、あいつらを仲直りさせてやる」

「ほんと?」

「ああ、任せろ」


 おっさんは、力強く頷き。

 安心させるように、優しく娘の頭を撫でた。

 そして娘をおんぶして、


「ちょっとすまない」


 人ごみを掻き分けて騒ぎの中心に向かう。


「おい、あんたたち――」


 そしてフェブルたちと司祭たちの仲裁に入ろうとした時だった。


「ちょっと、あんたたち!

 さっきから聞いてれば、確かな証拠もなく決めつけばかり!

 この子たちはやってないって言ってるじゃないっ!」


 凛とした女の声が響く。

 おっさんより一足先に動いていたその女性は、おっさんの妻――ソニアだった。

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『フライパン無双~とある呪いを解く為に、冒険者になりました~』
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