アーリアラ教団
本日2回目の更新です。
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「うわぁ~!
いっぱいだねぇ!」
「そうね。
人がいっぱいね」
正門に入って直ぐ。
多くの人々にリリスは感嘆を漏らした。
いそいそと帰路に着く者もいれば。
立ち並ぶ露天商で買い物をする客で、町は賑わいを見せている。
「リリス。
お父さんたちの手を放しちゃダメだからな」
「あい!」
言われて、リリスはおっさんの手をぎゅっと掴んだ。
『ご安心ください勇者様!
私もしっかりと、娘さんのことを見守りますから!』
『おお、頼もしいぞカティ!』
『はい!
お任せください!』
おっさんに『頼もしい』と言われたことが嬉しかったのか。
カティは、おっさんの娘を真剣な面持ちで見つめる。
最早、瞬きすらせず凝視していた。
目が渇いて涙が出るのは時間の問題に違いない。
「さて、どこから見て回ろうかしら?
昼食は奮発し過ぎたから、なるべく安いお店で買って節約しないとね」
主婦らしいことを言うソニア。
一つ一つ立ち並ぶ露天商を見て回る。
「あ、あっちが安いみたい!
アンクルちょっと行ってくるわね。
その間だけ、リリスをお願い」
ソニアは迅速果断に突っ走り。
奥様方の買い物争奪競争に参戦した。
真剣な顔で値段を比べている姿は正に、家庭を預かる主婦だった。
その様子を眺めつつ、おっさんと娘は辺りを見て回っていると。
「――であるなら、神が罰を与えるだろう!」
喧しく偉そうな声が、町中に響く。
「……?
おとさん、あれなに~?」
「あれは……」
目を向けると、アーリアラ教団の司祭が数人立っていた。
しかも、随分とひとだかりが出来ている。
何かあったのだろうか?
疑問に思い、
「なあ、すまない」
おっさんは道を歩いていた衛兵に声を掛けた。
「なんだ――って、あれ?
あんた……」
「うん……?
ああ――あの時……!」
おっさんが声を掛けたのは、以前にも顔を合わせたことがある衛兵だった。
正確にはスキンヘッドの暴漢をおっさんがぶっ飛ばした後、リルムに連れて来てもらったのが出会いの切っ掛けだったわけだが。
「この間は世話になったね。
この間の男は、盗難事件の犯人だったよ」
「そうだったか」
「あんたのお陰で手柄になったよ。
後で一杯奢るって約束だったよな?」
そんな約束したことを、おっさんはとっくに忘れていた。
「どうだい、今からでも――」
「すまない。
今は家族が一緒なんだ。
ところで聞きたいんだが。
あそこにいるアーリアラ教壇の連中だよな?
教団の信徒に説教を……ってわけじゃなさそうだけど?」
尋ねたかったことの本題に入った。
「ああ、実はな。
人攫いにあったらしいんだ。
それも攫われたのは司祭の子供だって話でな」
「……なに?」
「それだけじゃない。
信徒の子供も何人か攫われたらしいんだわ」
子供を狙った人攫いというだけで、おっさんは怒り心頭だ。
どんなクソ野郎なんだ?
まさか今もこの町にいて、俺の娘を狙っているんじゃないだろうな?
超可愛いリリスのことだから、誰に狙われてもおかしくない。
そんな風に考えるおっさんの娘贔屓はともかくとして。
『アーリアラ教団はこの大陸では最も信徒の多い教団ですよね?
しかも教団の司祭のお子さんを狙っているということは、明らかに確信犯でしょうか?』
『そう考えるのが自然だろうな』
まともな神経なら、アーリアラ教壇を敵に回そうとは思わないだろう。
バレれば、ただで済むはずがない。
リスクが高過ぎるのだ。
となると、教団と敵対する邪教徒が?
「そんな難しい顔をさせちまって悪いんだがな。
実はさっき捕まったらしいぞ」
「なに?」
「それで騒いでいるみたいなんだよ」
なんだ。
捕まったのか。
良かった……。
おっさんは安堵した。
だが、衛兵さんにはもう少し早くそれを教えて欲しかった。
余計なことで気を揉んでしまった。
「なんでも貧民街出身の男が犯人だったらしい」
「そうか……」
生きていく為に、奴隷売りに成り下がったのだろうか?
いや――既に使ったというのなら。
これ以上はおっさんが考えることではない。
何より、あまりリリスに聞かせたい話題ではなかった。
早くこの場から退散しよう。
「急に声を掛けて悪かったな」
「いや、大丈夫だよ。
市民の安全を守るのがおれたち衛兵の仕事だからな」
「そうか。
それじゃあ――」
おっさんが踵を返そうとすると、
「だから、おれたちは関係ねえって言ってんだろうがっ!」
「――神は嘘を許しはしない。
正直に吐かねば、天罰が下ろう!」
うん?
おっさんは、思わず立ち止まる。
この挑発的で強気な声音。
まさか……と思い、おっさんは人だかりにもう一度目を向ける。
すると、
『え!?
勇者様、あの子たちって……』
教団の司祭たちに問い詰められていたのは、三人組の少年たちで。
その中の一人――鋭い目つきをした犬人の少年のことは、名前もしっかり覚えている。
何せおっさんは、弟子であるリルムの護衛をその少年に頼んだのだから。
「なんで、フェブルが……」
驚愕……というよりは、あまりの戸惑いに。
おっさんは少年の名を声に出していた。




