おっさん、娘たちと遊ぶ
本日更新1回目
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娘たちの微笑ましい一幕の後、おっさんたちは場所を移動して。
ストロボホルンの町から少し離れた原っぱに来ていた。
何せ今日の本来の目的は遊ぶことなのだ。
ある程度の広さのある場所の方が、遊ぶには都合がいい。
「さて、リリス。
そして、リルム。
まずは、遊ぶ為の準備をするぞ!」
『勇者様、遊ぶのに準備とかいるんですか?』
確かにカティの言う通り、普通は遊ぶ準備など必要ないだろう。
だがしかし、身体を動かす以上は準備運動は必須。
だから、おっさんは見本を示すように自らストレッチを始めた。
「じゅんびうんどう……あそびのまえには、そういうのをするんですね……」
リルムは真剣な顔でおっさんを見ながら。
遊ぶ為の流れを記憶する為に反芻した。
『勇者様。
リルムちゃん、とても難しい顔をしていますよ……』
遊ぶというのは、そんなに難しいことではないのだが。
初めて友達と遊ぶリルムにとっては未知の体験だからこそ。
一生懸命、遊ぶことを学ぼうとしているようだ。
「おとさん、リリスね~。
とってもからだ、やわらかいんだよぅ」」
「おお~凄いな!
お父さんも負けないぞ!」
前屈でペタンと手の平を付けるリリス。
おっさんも、アラフォーにしては身体は柔らかい。
そんな仲良し親子を見て、リルムも真似するようにストレッチを始めた。
奥様たちは原っぱに薄布を敷いて座って、おしゃべりをしながらおっさんたちの様子を見ていた。
「よし、遊ぶ準備は大丈夫か?」
「あ~い!
だいじょ~ぶ!!」
「は、はい!
で、でも、なんだかキンチョウします」
準備運動を終えた。
そしておっさんは、
「じゃあ今日は……――ブータさんが起き上がったをしよう!」
「わ~~~~~いっ!
リリス、あれだいすきぃ~!!」
「ぶ、ブータさん……?」
対極的な反応を見せる二人。
『私もやったことがあります!
ちなみに、クルクアッド大陸から遥に離れた東の大陸にも、似たような遊びがあるんですよ。
名前は違って、だるまさんが転んだと言うらしいですが』
カティは自分の知識を自慢するように、えへんと胸を張る。
偉そうだったので、おっさんはカティを無視した。
「初めてやるリルムの為にルールの説明をするぞ!」
「はい、ししょう!
おねがいします!」
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〇ブータさんが起き上がった。
ルール説明。
参加者は鬼と子に分かれる。
鬼は一人。
鬼は自分の陣地を決めて、その場に背を向けてしゃがむ。
参加者である子は、その陣地からある程度の距離を取る。
そして、「ブータさんが起き上がった!」という掛け声を口にする。
その掛け声の間に、子である参加者は出来る限り鬼に近付く。
掛け声が終わるのと同時に、鬼は振り向き、周囲を確認することが出来る。
その時、子である参加者は動いてはならない。
もし動いてしまったら、子は鬼の自陣に捕らえられて行動を禁止される。
子は鬼に少しずつ近付き、鬼にタッチすることが出来れば勝利。
鬼は子を全て捕まえることが出来たら勝利。
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おっさんは説明を終えた。
「な、なんだか……とても難しそうです……」
リルムは、難しい顔をして狼耳をピンと立てている。
「そんな緊張しなくていいぞ。
遊びっていうのは、楽しいものなんだ。
気軽に、気軽にだ」
「おねえちゃ!
あのね、こ~やってね!
バババババ! ってはしって、ピタン! ってとまるんだよぅ!」
言葉と共に、原っぱの中を縦横無尽に駆け回り、ピタンと止まった。
リリスなりに、ルールの説明をしているようだ。
その純粋で無邪気な子供らしい姿に、おっさんもリルムも、そしてカティまでも思わず微笑んでしまう。
「まぁ、だいたいそんな感じで間違いない。
実際に遊んでみれば、すぐに覚えられると思うぞ」
「はい」
リリスの楽しそうな様子を見て、リルムも緊張が解けたようだった。
ということで、おっさんたちは『ブータさんが起き上がった』をやってみることにした。
鬼役のおっさんが適当に陣地を決めて。
子供たちは距離を取る。
「おとさん、ここでい~い?」
「いいぞ~」
「こ、ここから、ししょうにむかっていって、タッチすればいいんですよね!」
「そうだぞ~。
それじゃあ始めるぞ~」
そしておっさんは背を向けて、その場にしゃがみ込み。
「ブ~タさんが……」
掛け声を唱える。
背後からはリリスとリルムがきゃきゃとはしゃぎながら、パタパタと駆け寄ってくるのが聞こえる。
「――起き上がった!」
掛け声を終えるのと同時に、おっさんは立ち上がり振り返る。
「……!」
それに合わせて、ピタッ!
と、静止する二人。
一生懸命に走ったのがわかるポーズで固まっている。
絶対に動かないぞ! と、気合を入れている表情がまた可愛らしい。
遊び始めたばかりなのに、もうおっさんは満足していた。
しかし、一つ突っ込まなければならない。
『おいカティ。
なんでお前が混ざってるんだ』
いつの間にか、カティも参加していたのだ。
『折角なので、私も参加してみました!』
『だとしたら、もうお前は負けだぞ?』
『なんでですか!?
ピタッと止まってますよ!』
カティは空中で静止しており、身体は動いていない。
だが、
『羽がさっきからパタパタしてるだろっ!』
『え――あぎゃ!?
癖で飛んでしまいました』
『気付いてなかったんかい!』
まぁ、ルールはルールだ。
カティは早速、おっさんに捕まった。
残るはリリスとリルムの二人だ。
おっさんは背を向けしゃがむ。
「ブ~タさんが起き上がった!」
そしてまた掛け声を唱え振り返る。
「っ!?」
「――!」
リリスは再びピタリと静止。
一生懸命に全力で遊びを楽しむ娘の姿を見て。
改めておっさんは思った。
か・わ・い・す・ぎ・る!!
おっさんの頭はもうそればっかりだ。
続けてリルムにも目を向けるおっさん。
狼人の少女も一切動かない。
おっさんと目があって、照れたように視線を逸らす。
だが、身体は動いていないのでセーフだ。
ああ……なんていい余暇なのだろう。
おっさんにとって、娘たちと共に遊ぶ休日は最高に至福だ。
そんな風に幸せ過ぎたせいで。
遊びに対して集中力を乱していたおっさんは、
「ブ~タさんが起き……」
「た~っち!」
「タッチです」
ペタンと小さな手が、おっさんの背に触れていた。
つまり、あっという間の敗北である。
「むぅ……やるな二人とも」
『勇者様、弱いですね』
最初に捕まっておいて、どの口がそれを言いやがる。
娘たちがいなければ、おっさんはカティの頬っぺたをびろ~んと引っ張っていただろう。
「えへへ~!
おねえちゃ、リリスたちかったよぅ~!」
「そうだね。
リリスちゃん。
あたしたち、かったんだね」
娘と弟子が手を取り合い喜び合う。
一緒に遊ぶことで打ち解けられたのか、リルムの口調も敬語ではなくなり、自然なものに変わっていた。
この調子で二人がもっと仲良くなってくれたら、おっさんとしても嬉しい。
「おとさん!
つぎはね~。
リリスがおにする~!」
「そうか!
じゃあ次はお父さん、負けないからな!」
「あたしも、まけません!」
『私も負けませんよ~!』
カティは自分がおっさん以外に見えていないのだが、すっかり忘れているようだ。
そうしておっさんたちは、暫くの間『ブータさんが起き上がった』を続けたのだった。




