↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
40/94

おっさん、娘たちと遊ぶ

本日更新1回目

           ※




 娘たちの微笑ましい一幕の後、おっさんたちは場所を移動して。

 ストロボホルンの町から少し離れた原っぱに来ていた。

 何せ今日の本来の目的は遊ぶことなのだ。

 ある程度の広さのある場所の方が、遊ぶには都合がいい。


「さて、リリス。

 そして、リルム。

 まずは、遊ぶ為の準備をするぞ!」

『勇者様、遊ぶのに準備とかいるんですか?』


 確かにカティの言う通り、普通は遊ぶ準備など必要ないだろう。

 だがしかし、身体を動かす以上は準備運動は必須。

 だから、おっさんは見本を示すように自らストレッチを始めた。


「じゅんびうんどう……あそびのまえには、そういうのをするんですね……」


 リルムは真剣な顔でおっさんを見ながら。

 遊ぶ為の流れを記憶する為に反芻(はんすう)した。


『勇者様。

 リルムちゃん、とても難しい顔をしていますよ……』


 遊ぶというのは、そんなに難しいことではないのだが。

 初めて友達と遊ぶリルムにとっては未知の体験だからこそ。

 一生懸命、遊ぶことを学ぼうとしているようだ。


「おとさん、リリスね~。

 とってもからだ、やわらかいんだよぅ」」

「おお~凄いな!

 お父さんも負けないぞ!」


 前屈でペタンと手の平を付けるリリス。

 おっさんも、アラフォーにしては身体は柔らかい。

 そんな仲良し親子を見て、リルムも真似するようにストレッチを始めた。

 奥様たちは原っぱに薄布を敷いて座って、おしゃべりをしながらおっさんたちの様子を見ていた。


「よし、遊ぶ準備は大丈夫か?」

「あ~い!

 だいじょ~ぶ!!」

「は、はい!

 で、でも、なんだかキンチョウします」


 準備運動を終えた。

 そしておっさんは、


「じゃあ今日は……――ブータさんが起き上がったをしよう!」

「わ~~~~~いっ!

 リリス、あれだいすきぃ~!!」

「ぶ、ブータさん……?」


 対極的な反応を見せる二人。


『私もやったことがあります!

 ちなみに、クルクアッド大陸から遥に離れた東の大陸にも、似たような遊びがあるんですよ。

 名前は違って、だるまさんが転んだと言うらしいですが』


 カティは自分の知識を自慢するように、えへんと胸を張る。

 偉そうだったので、おっさんはカティを無視した。


「初めてやるリルムの為にルールの説明をするぞ!」

「はい、ししょう!

 おねがいします!」


----------------------------


〇ブータさんが起き上がった。


 ルール説明。

 参加者は鬼と子に分かれる。

 鬼は一人。

 鬼は自分の陣地を決めて、その場に背を向けてしゃがむ。

 参加者である子は、その陣地からある程度の距離を取る。

 そして、「ブータさんが起き上がった!」という掛け声を口にする。

 その掛け声の間に、子である参加者は出来る限り鬼に近付く。

 掛け声が終わるのと同時に、鬼は振り向き、周囲を確認することが出来る。

 その時、子である参加者は動いてはならない。

 もし動いてしまったら、子は鬼の自陣に捕らえられて行動を禁止される。

 子は鬼に少しずつ近付き、鬼にタッチすることが出来れば勝利。

 鬼は子を全て捕まえることが出来たら勝利。


----------------------------


 おっさんは説明を終えた。


「な、なんだか……とても難しそうです……」


 リルムは、難しい顔をして狼耳(みみ)をピンと立てている。


「そんな緊張しなくていいぞ。

 遊びっていうのは、楽しいものなんだ。

 気軽に、気軽にだ」

「おねえちゃ!

 あのね、こ~やってね!

 バババババ! ってはしって、ピタン! ってとまるんだよぅ!」


 言葉と共に、原っぱの中を縦横無尽に駆け回り、ピタンと止まった。

 リリスなりに、ルールの説明をしているようだ。

 その純粋で無邪気な子供らしい姿に、おっさんもリルムも、そしてカティまでも思わず微笑んでしまう。


「まぁ、だいたいそんな感じで間違いない。

 実際に遊んでみれば、すぐに覚えられると思うぞ」

「はい」


 リリスの楽しそうな様子を見て、リルムも緊張が解けたようだった。

 ということで、おっさんたちは『ブータさんが起き上がった』をやってみることにした。

 鬼役のおっさんが適当に陣地を決めて。

 子供たちは距離を取る。


「おとさん、ここでい~い?」

「いいぞ~」

「こ、ここから、ししょうにむかっていって、タッチすればいいんですよね!」

「そうだぞ~。

 それじゃあ始めるぞ~」


 そしておっさんは背を向けて、その場にしゃがみ込み。


「ブ~タさんが……」


 掛け声を唱える。

 背後からはリリスとリルムがきゃきゃとはしゃぎながら、パタパタと駆け寄ってくるのが聞こえる。


「――起き上がった!」


 掛け声を終えるのと同時に、おっさんは立ち上がり振り返る。


「……!」


 それに合わせて、ピタッ!

 と、静止する二人。

 一生懸命に走ったのがわかるポーズで固まっている。

 絶対に動かないぞ! と、気合を入れている表情がまた可愛らしい。

 遊び始めたばかりなのに、もうおっさんは満足していた。

 しかし、一つ突っ込まなければならない。


『おいカティ。

 なんでお前が混ざってるんだ』


 いつの間にか、カティも参加していたのだ。


『折角なので、私も参加してみました!』

『だとしたら、もうお前は負けだぞ?』

『なんでですか!?

 ピタッと止まってますよ!』


 カティは空中で静止しており、身体は動いていない。

 だが、


『羽がさっきからパタパタしてるだろっ!』

『え――あぎゃ!?

 癖で飛んでしまいました』

『気付いてなかったんかい!』


 まぁ、ルールはルールだ。

 カティは早速、おっさんに捕まった。

 残るはリリスとリルムの二人だ。

 おっさんは背を向けしゃがむ。


「ブ~タさんが起き上がった!」


 そしてまた掛け声を唱え振り返る。


「っ!?」

「――!」


 リリスは再びピタリと静止。

 一生懸命に全力で遊びを楽しむ娘の姿を見て。

 改めておっさんは思った。

 か・わ・い・す・ぎ・る!!

 おっさんの頭はもうそればっかりだ。


 続けてリルムにも目を向けるおっさん。

 狼人(ウェアウルフ)の少女も一切動かない。

 おっさんと目があって、照れたように視線を逸らす。

 だが、身体は動いていないのでセーフだ。


 ああ……なんていい余暇なのだろう。

 おっさんにとって、娘たちと共に遊ぶ休日は最高に至福だ。

 そんな風に幸せ過ぎたせいで。

 遊びに対して集中力を乱していたおっさんは、


「ブ~タさんが起き……」

「た~っち!」

「タッチです」


 ペタンと小さな手が、おっさんの背に触れていた。

 つまり、あっという間の敗北である。


「むぅ……やるな二人とも」

『勇者様、弱いですね』


 最初に捕まっておいて、どの口がそれを言いやがる。

 娘たちがいなければ、おっさんはカティの頬っぺたをびろ~んと引っ張っていただろう。 


「えへへ~!

 おねえちゃ、リリスたちかったよぅ~!」

「そうだね。

 リリスちゃん。

 あたしたち、かったんだね」


 娘と弟子が手を取り合い喜び合う。

 一緒に遊ぶことで打ち解けられたのか、リルムの口調も敬語ではなくなり、自然なものに変わっていた。

 この調子で二人がもっと仲良くなってくれたら、おっさんとしても嬉しい。


「おとさん!

 つぎはね~。

 リリスがおにする~!」

「そうか!

 じゃあ次はお父さん、負けないからな!」

「あたしも、まけません!」

『私も負けませんよ~!』


 カティは自分がおっさん以外に見えていないのだが、すっかり忘れているようだ。

 そうしておっさんたちは、暫くの間『ブータさんが起き上がった』を続けたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新作公開しました。
『フライパン無双~とある呪いを解く為に、冒険者になりました~』
もしよろしければ、ご一読ください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。