リルムたちと合流
2017/0501
本日更新2回目となります。
そしてようやく、町の正門に到着。
「ついた~!
おとさん、おかさん!
リルム、あるいてこれたよ~!」
おっさんとソニアは手を取り合って、再び感激タイム。
その時、カティは――『もう好きにしてください』と呆れていた。
「どうしましょうアンクル?
私、リリスをとっても抱きしめたいわ!
抱きしめたい衝動に晒されてるわ!」
「ソニア、既に抱きしめてるぞ」
「あら!?
本当ね。
でもアンクル、あなたも同じよ」
「はっ!?」
どうやら、身体が反射的に動いていたらしい。
「おとさんとおかさん、なかよしだね~!」
二人にぎゅっとされて、リリスはなんだか満足そうだ。
だが、おっさんは少しドキッとした。
気付けば今を、当たり前のように受け入れている。
「そうね。
でも、リリスも一緒よ。
三人で仲良し」
娘の笑顔に、満面の笑顔で答えるソニア。
「そうだな。
俺たちは家族だからな」
ソニアがどういう経緯でここにいるのかはわからない。
何か目的があるのかもしれない。
だとしても、彼女――ソニア・フレイルが娘を見守るその慈しみの眼差しは、間違いなく本物だ。
だからおっさんはもう悩むのをやめた。
少なくとも今は――家族として楽しもうと決めた。
『そういえば勇者様、リリスさんとは正門で待ち合わせでいいんでしたっけ?』
『ああ。
もう直ぐ来るんじゃないか?』
心に語り掛けてくるカティに答えると。
「――ししょう!」
ちょうどリルムがやってきた。
隣には少女の母であるミーアも一緒だ。
「はぁはぁ……おそくなっちゃって、ごめんなさい……!」
息を切らせながら、狼人の少女がおっさんに駆け寄って来た。
「大丈夫だ。
俺たちも今来たところだからな」
「す、すみません……」
ゆっくりと、息を整えるリルム。
少し遅れてミーアがやってきた。
「ミーア、動いて大丈夫なのか?」
「はい。
自分でも、不思議に思うくらい体調が良くて。
これもアンクルさんのお陰です。
本当にありがとうございます」
フィアラ病が治癒した為か、ミーアの顔色は随分と良くなっている。
先日まで床に伏せていたとは思えないほどだ。
だが、元気になったのは何よりだ。
と、おっさんが思っていると。
「あの、ししょう。
きのうは、ほんとうに――」
「リルム、お前の気持ちは伝わってるよ。
だから大丈夫だ」
「だけど……」
リルムは、自分の母親を助けてくれたことを感謝したかった。
本来なら、感謝してもしたりないくらいなのだ。
どうやってこの恩を返せばいいだろう?
少女はずっと考えていた。
だがおっさん的には、リルムの誠意は十分なども伝わっているのだ。
だからもう十分で、この話は終わりだ。
「リルム、ミーア。
紹介するぞ」
おっさんの言葉に、リルムの視線が動いた。
狼人の少女が窺うような見ているのは、リリスとソニアだ。
「リリス。
自己紹介できるか?」
「うん!
できるよ~!
あのね、リリスはね!
リリスっていうの!」
元気いっぱいの自己紹介。
「お~、ちゃんと言えたなリリス。
流石は俺の娘だ。
偉いぞ~」
「元気いっぱいで、可愛らしいわ~」
弟子と、ミーアに見られていても。
おっさんとソニアは、気にせず親馬鹿っぷりを披露していた。
「ししょうの……」
だが、リルムはおっさんたちの親馬鹿っぷりを気にしている余裕などなかった。
多分、師匠の娘さんだとは思っていた。
でも実際に会うと、どう接していいか悩んでしまう。
そんな弟子の心の内に気付くことなく、
「それでこの女神のような美人が、妻のソニアだ」
「アンクルさんの、奥さんだったんですね。
初めてしてミーアと申します」
「初めまして。
ミーアさん、リルムちゃん。
アンクルがお世話になってます!
これからも、娘共々、仲良くしてあげてね」
「勿論です。
アンクルさんには、本当にお世話になりましたから」
「ミーアさん、気にしなくていいのよ。
この人がしたくてしたんだから」
奥様同士の交流はすんなりだった。
美しさの中に無邪気さを内包するソニアと。
物腰柔らかで大人っぽい雰囲気のミーア。
性格的には反対な二人だけれど、根っ子にある物は通じ合うところがあったのかもしれない。
なんというか、この二人はどちらも育ちの良さのようなものがあるのだ。
価値観が似ているのかもしれない。
そして、ソニアとミーアが話を弾ませる中、
「おねえちゃ、おなまえは?」
興味津々にリリスが尋ねた。
「あ、あたしは……ししょうの、でしで……。
えと、リルム……です」
リルムはガチガチに緊張している。
尊敬する師匠の娘さんと聞いて、どう対応していいのか戸惑ってしまったのだ。
しかし、
「リルム……おねえちゃ?」
「は、はい……」
「おとさん、おかあさん!
リルムおねえちゃ、リリスとおなまえにてるね~!」
リリスはそんなこと全く気にせずに、きゃっきゃと喜んでいた。
天真爛漫なおっさんの娘は、人見知りはしない子のようだ。
実はおっさんは、ちょっぴり心配していた。
リリスは、歳の近い友達がいない。
だからリルムと会った時に、仲良く出来るかなぁ? と思っていたのだが。
どうやらその悩みは杞憂だったようだ。
「そうだなぁ~。
似てるなぁ~」
「そうねぇ~。
似ているわねぇ~」
悩みもなくなったことで、心もすっきり。
おっさんは、一切の憂いなくソニアと共に娘にデレデレしていた。
「あのねあのね、リルムおねえちゃ!」
「な、なんでしょうか?」
「あのね!
リリスと、おともだちになってほしいの!」
「え……!?」
リルムはさらに困惑。
少女の心の内はこうだ。
お友達になって……いいのかな?
相手は、大恩人の師匠の娘さんだ。
そんな気軽な関係で、いいのかな?
真面目にそんなことを考えている。
「おねえちゃ、リリスとおともだち、いや……?」
「いやじゃないです!」
リルムは即答した。
いやなわけがない。
これはリルムの本心だ。
リルムだって、今まで歳の近い友達がいたことなんてない。
だから友達が出来ることは、心の底から嬉しいのだ。
そして少女は、意を決しておっさんを見上げる。
「ししょう……!
リリスちゃんと、おともだちになっても、いいでしょうか?」
「リルム。
それは俺が決めることじゃないよ。
大切なのは、二人の気持ちなんだからな」
「ぁ……」
リルムはまた、師匠に教えられた。
友達は、誰かに言われてなるものじゃない。
確かにリルムにとって、おっさんは師匠で大恩人だけれど。
自分がリリスと友達になることは別問題だ。
「でも、父親としては娘にリルムみたいないい子の友達が出来るのは、大歓迎だ」
おっさんは、力強く微笑んだ。
「……ししょう、ありがとうございます。
リリスちゃんも、ありがとう。
あたしとおともだちに、なってください!」
口調は今も敬語のままではあったが。
リルムは自分意志を、リリスにしっかりと伝えた。
そして、
「わ~~~~い!
やったぁ!
おとさん、おかさん!
リリス、おねえちゃとおともだちになったよ~!」
リリスは大喜び。
ぴょんぴょーん! と飛び跳ねてバンザーイをしている。
初めて友達が出来たことが、心の底から嬉しいようだ。
そんなリリスを見て、リルムは安心したように笑顔になっていた。
「ああ……幸せね。
娘の初めてのお友達が出来る瞬間が見られるなんて」
「そうだなぁ。
幸せだなぁ」
「ええ。
本当に……」
娘たちの様子を見守る親三人もまた、幸せそうだった。
これは当たり前の幸せかもしれない。
でもそんな日常が、本当に幸せなこと。
少なくとも、おっさんはそう思っているのだ。
『うぅ……私まで涙が。
なんだか、子供を持つ親の気持ちになってしまいますぅ……!』
なんでお前まで。
と、おっさんは思ったが。
この幸せな光景の前で、そんな無粋なことは口にしなかった。




