親馬鹿夫婦
お待たせいたしました。
本日から更新再開させていただきます!
本日1回目の更新。
町までの道を家族三人で歩く。
「リリス、疲れたらいつでも言うんだぞ」
「そうよ。
お父さんとお母さんが、おんぶでも、抱っこでもしてあげるから」
「うん!
でもねでもね!
リリス、だいじょうぶなの!」
そう言って、リリスは元気いっぱいの笑顔を見せて、
「もうリリスね、おっきくなったんだよ。
だから、まちまでちゃんとあるけるの!」
「――!?
聞いたかソニア!?」
おっさんはぐわっ! と目を見開き。
思わず足を止めて、妻の名を呼んだ。
するとソニアは大きく頷き。
「ええ、アンクル!
リリスったら、なんてがんばり屋さんなのかしら……!」
「ああ、俺たちの娘は立派に育ってるな!」
「ええ、ええ!
こんなちっちゃな身体で、しっかり町まで歩けるだなんて!!」
「凄いぞ、凄すぎるぞ!
こんなにも努力家で真面目な娘に育っているなんて」
「でも、嬉しくもあるけれど、少し寂しいわね……」
「だな。
子供の成長は早いな……」
おっさんとソニアは、娘の成長という感動を分かち合っていた。
二人とも瞳を潤ませている。
とんでもないほどの親馬鹿っぷりだ。
だが仕方ない。
この二人はとんでもない親馬鹿だ。
似た者カップルならぬ、似た者親馬鹿なのだ。
『勇者様ああああああ~~~~~~~~~~~~~!!』
涙腺を緩ませるおっさんの耳に、カティの声が届いた。
ちらっと目を向けると、びゅーん! と小さな妖精が飛んでくるのが見えた。
『どうして私を置いて行っちゃうんですかぁ!!』
『あ、すまん。
忘れてた』
『ちょ!?
忘れないでください!
私は聖剣の妖精。
勇者様の相棒なんですから!
それにソニアさんの件だって、まだ何もわかってないんですよ!』
正直なおっさんに、カティは涙目で反論した。
だが、おっさんは今、カティの相手をしている場合ではない。
『いやな……聞いてくれカティ』
『……勇者様、もしや何かあったのですか?』
真面目な顔のおっさんに、カティは気を引き締めて尋ねる。
もし重大な問題があったのなら、私のことを忘れていても仕方がない。
聖剣の妖精がそう思っていると。
『娘が町まで頑張って歩くって言うんだよ!
凄すぎないか!?』
『え!?
そんなことが――って、それだけですか!?』
『それだけとはなんだ!
がんばり屋ないい子なんだぞリリスは』
だらしない顔で、娘をなでなでするおっさん。
「よ~しリリス、頑張って歩こうな!」
「うん!
リリスがんばる~!」
「でも無理はしちゃダメよー。
お父さんもお母さんも、リリスのことが何より大切なんだからね」
仲良し家族が歩き出す。
見ているだけで微笑ましい光景。
だが、カティは気付いてしまった。
『あ~!?
待ってください!
勇者様、聖剣は!?』
カティは慌てて追いかけながら叫ぶ。
『置いてきた。
リリスとソニアがいるんだぞ?
あんな物騒な物を持ち歩けるか』
『なー!?
バカー!
この親馬鹿勇者様のバカー!
おたんこなすー!』
おたんこなすってなんだ? と疑問に思うおっさんだったが。
親馬鹿というのは、おっさんにとっては最上級の褒め言葉。
名誉なことなので特に気にもせず。
『まぁ、休みの日くらいお前もゆっくりしろって。
どんな仕事にだって余暇は必要だぞ』
『……余暇……ですか』
『カティ、妖精だってゆっくりする日があってもいいんだ。
魔王や魔物だって、休日を満喫する日があるはずだ。
しっかり休むことも、生きていく上で必要なことなんだ』
『う……た、確かにそ、その通りだとは思いますが……』
説得されかけるカティ。
だが、おっさんとしては真っ当なことを言っているつもりだ。
『だろ。
そして今日は俺は休みだ。
休みは樵じゃない。
リリスの父親だ。
だから剣はいらない』
『うう……なんだか勇者様、とってもいい父親っぷりです!』
『ということで、今日は父親としてリリスたちと余暇を満喫する。
いいな?』
『……むぅ……』
カティは悩んだ結果。
『……わかりました』
しぶしぶ納得して、カティはおっさんの肩に座った。
正直な話、カティもこの辺りであれば危険はないだろうと思っている。
ここ数日、何故か魔物の気配が異様なほど薄まっていたのだ。
理由がわからないからこそ、その原因が何かカティは気になっていたのが。
実はその理由は、おっさんが魔王軍幹部――魔生みのケネブを倒したことが関係している。
おっさんやカティに視認されることなく、聖剣一振りで無数の魔物と共に浄化されたあのケネブだ。
召喚魔術の使い手であり、魔物を生み出す役割を担っていたケネブがいなくなれば、そりゃあ魔物もいなくなる。
つまり、魔物の脅威は今のところほぼなくなったと言っていいのだった。
何気におっさんは、勇者としての仕事をこなしていた。
あくまであの戦いは、娘を守る為の副産物。
「リリス~、もう少しでストロボホルンの町だぞ~」
「は~い!」
「本当に町まで歩けたわね!
リリスは本当にすごいわ!」
だから、おっさんもカティも。
まさか自分たちが勇者としての使命を果たしているとは、微塵も思っていないのだった。




