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無色の勇者と七色の約束  作者: 白猫サクラ
第14章 魔導大戦の怨霊
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第73話 動き出した邪教

 ――――


 僕は、大きな雨音で目を覚ました。


 (なんだろう‥‥ジーンと響く音が聞こえた気がする…)


 学院寮の窓の外は、まるで空が怒っているかのように、大嵐が暴れていた。

 雨が窓を叩きつけ、風が建物を揺らす。


 「……すごい雨だ」

 

 そう呟いた瞬間──ぴかっ

 

 部屋の中が一瞬、昼のように白く閃き、続く雷鳴が腹の底を震わせた。


 ごろろろろ……ッ


 胸がざわついた。目を閉じても、嵐の音が耳にまとわりついて眠れない。

 僕は寝台を抜け出し、そっと寮のラウンジへ向かった。


 ――深夜のラウンジは、しんと静まり返り、薄いランプの灯りが、雨に濡れた窓ガラスを淡く照らしている。


 外の嵐の音だけが、しとしとと、時に激しく、静寂の中に溶け込んでいた。


 僕は窓辺に立ち、外をのぞきこむと大雨の中で明かりが揺れた


 「……魔導師団?……こんな大嵐の真夜中に何をしているんだろう…」


 魔法師団が慌ただしく走り回っており、胸のざわつきが、さらに強くなる。


 嵐の音が、さっきよりも近く、重く響いた。


 その時――


 雷光が一瞬、彼らの顔を照らす。


 ドォンッ!!


 腹の底に響くような衝撃音が、嵐の音を突き破って響き渡った。


 窓ガラスが震え、ラウンジのランプが揺れる。


 「っ……!?」


 外を見ると、学院の向こう側──聖浄院の方向に、黒い煙が立ち上っていた。


 青い雷光がその煙を照らし、一瞬だけ、"巨大な影"が揺らめくのが見えた。


 「今のは?……聖浄院が攻撃されてる……?」


 聖浄院は六賢者が守るこの国で最も神聖な場所。


 そんな場所が、攻撃されるなんて、ありえない。

 

 ――再び、雷鳴が夜空を裂く。


 ドォンッ!!


 今度は、学院全体に響き渡るように、魔導サイレンが鳴り響いた。


 ウウウウウウウ……!!


 突然の騒ぎに、学院の生徒たちが寝間着姿のまま、ぞくぞくとラウンジに集まってくる。


 「なに……? なにが起きてるの……?」


 「聖浄院の方角、光ってなかった……?」


 ざわめきが広がる。


 雷光が窓を照らすたび、生徒たちの顔が青ざめていく。

 

 ――何かとんでもないことが起きている。


 サイレンが鳴り響く中、外では魔法師団の団員たちが、地上から上空へ向けて魔法を撃ち上げていた。

 炎の矢。風の砲弾。水の刃。


 あらゆる魔法が夜空へ向けて放たれる。


 だが――


 その上空には、ありえない光景が広がっていた。

 無数の魔法陣が、空を覆っている。


 そこからものすごい数の飛行魔獣が召喚されていく。


 地上でも、黒マントの影が動き回り、魔法師団の隊員を次々と襲っていた。

 建物の陰や路地の隙間──どこからともなく現れ、どこへともなく消えていく。


 空と地上の両方で、敵が同時に動いている。

 まるで街そのものが、静かに侵食されていくようだった。


 ――雲の影、巨大な何かから青い雷光が降り注ぐ。


 バチィィィィィッ!!


 聖浄院を囲む魔法障壁が雷撃を防いでいる。


 ドォォォォン!!


 火柱が上がった。その炎の向こうに“それ”の姿が見えた。


 「……何? あれ……」


 誰かが震える声で呟く。

 雷光が夜空を照らした瞬間、“それ”の全貌が一瞬だけ浮かび上がった。


 巨大な花の"つぼみ"のようだ。


 だが、花ではない。


 白く輝く胴体は甲殻と金属が混ざったような質感で、つぼみの横筋に沿って、青い光が脈動するように走っている。


 脈動がひとつ走るたび、表面に刻まれた魔法陣が青白く光り、雷光を放つ。

 その姿はまるで、世界を焼き払うために生まれたかのようだった。


 学生たちは目を見開く


 「何なんだよ、あれ」

 「聖浄院から煙が‥‥」


 その脈動がまたひとつ鼓動し、空に新たな魔法陣が展開される。

 

 そして――


 稲妻の槍が雨のように降り注いだ。


 「キャアアアアッ!!」


 流れ弾のひとつが、学院の庁舎に直撃した。


 ドガァァァン!!


 爆発、炎、黒煙が立ち上る。


 「うそ……うそだろ……!俺たちの学院が……!」


 学生たちは何が起きているのか理解できず、呆然と立ち尽くしていた。


 ラウンジは、恐怖と混乱で満たされていく。


 ――――


 聖浄院 結界の間


 結界室は青白い光に満たされ、六賢者の影が揺れていた。


 雷の賢者 ライゼル が険しい顔で問う。


 「奴ら、本気で聖浄院を潰す気らしいな。……さらわれた子供の数は」


 魔導師団長ラミルが、焦りを隠せない声で答える。


 「把握しきれません。央都の子供が100人以上、行方不明です。」


 空気が凍りつく。


 闇の賢者 ノクス が、低い声で続ける。


 「闇の隊の報告によれば、東方ラーカンクス国の封印された禁足地で、大量の工夫が往来していたと

の情報がある。

  “ワルキューレ”の出どころは、そこだろう」


 土の賢者ガルドが重い言葉を落とす。


 「ラーカンクス国も教団と繋がっていたということか……

  古代兵器まで持ち出すとは、本気で大結界を破壊するつもりのようだな」


 火の賢者 イグナ が一歩前に出る。


 その動きだけで、結界室の空気がわずかに揺れた。


 「いずれにせよ、このままでは結界が破られる。――俺が出る」


 水の賢者 アミリア が静かに口を開く。


 声は落ち着いているが、その奥に強い意志が宿っていた。


 「……子供たちを犠牲にはできません。私も行きます。」


 だが、雷の賢者 ライゼル が低く制した。


 その声音は揺らぎなく、判断の重さだけが滲む。


 「待て、イグナ。アミリア。このタイミングは“罠”だ。こちらが動けば、大結界の守りが崩れる。」


  その言葉が落ちた瞬間、会席の間に張りつめた空気が、さらに重く沈んだ。

 

 魔導スクリーンには、夜空に浮遊する巨大な”つぼみ”が映し出されている。

 白い外殻が青く脈動するたび、スクリーン全体が淡い光に染まる。


 青い光が明滅し、そのたびに雷撃で床が震える。


 ――――――


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