表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
無色の勇者と七色の約束  作者: 白猫サクラ
第2章 断たれる絆
6/39

第6話 選ばれし者の運命

 魔導学院への入学まで、残り二週間。

 入学の準備もほとんど終わり、僕とアミリアは期待に胸を膨らませていた。


 そんなある日の朝――孤児院の周りが、なにやら騒がしかった。

 「何があったの?」

 「なんだか……央都から偉い魔導士さんたちが来てるって。」


 胸がざわつき、嫌な予感がした。

 孤児院の門の前には、大きな馬車。

 そして――あの日、森で見たのと同じ、央都魔導師団の徽章をつけた魔導士たちが、十数人も整列していた。


 ただの訪問ではない。

 空気が張りつめ、孤児院の子どもたちが息をのんで見守っている。

 僕の背中を、冷たいものがゆっくりと這い上がっていった。


 門の前では、黄金の長杖を携えた上級魔導士が、ローレットさんと話をしていた。

 孤児院の周りには多くの人だかりができている。


 ローレットさんの声が震えながら響く。

 「それはあまりにも。両親を失ったアミリアには、せめて平穏な学校生活を送ってほしいのです。

  学院への入学も決まって、本人も楽しみにしています。」


 上級魔導士は静かに、しかし絶対の権威をもって返した。

 「シスターのお気持ちは理解します。

  確かにエルミナ魔導学院は、この国一のエリート校。

  しかし、アミリア様は“学生で終わる器”ではありません。」


 黄金の杖が、冷たい冬の光を反射する。

 「魔導学院は、我ら魔導師団の管轄する教育機関。魔導師団が直接アミリア様をお預かりします。」


 ローレットさんは必死に食い下がる。

 「アミリアは……何をするのですか。危険なこととか……」


 上級魔導師は一瞬だけ目を伏せ、そして静かに告げた。

 「この国は今、平穏に見えます。しかし、その実態は非常に危ういものです」

 声が低くなる。

 「およそ二千年前──大賢者ラズウェルが、世界を滅ぼさんとした“厄災”を封印しました。

  しかし、厄災は今も復活の機会を狙っています。」


 僕の心臓が跳ねた。

 (大賢者ラズウェル……? 絵本の中の英雄じゃなかったの……)


 上級魔導師は続けた。

 「この国の平穏を保っているのは、六人の賢者。彼らの魔力と、大賢者が残した結界が、厄災の復活を辛うじて抑えているのです。」


 そして、上級魔導師は言葉を静かに切り替えた。

 「しかし──大賢者ラズウェルの結界は弱まりつつあります。現・水の賢者も老齢により、もはや結界を維持できぬほどに力が衰えている。

  先の森での騒動は……弱った結界を破り、異界から潜り込んだ魔獣によるものです。」


 ローレットさんが息をのむ。

 上級魔導師は孤児院を見つめ、深く頭を下げた。

 「アミリア様には、六賢者の一角──水の賢者の後継者として、お役目についていただきます。」


 村中の人たちが言葉を失う。


 「アミリア様が森で魔獣を討伐してから、

  魔獣の死体と魔力の痕跡を、魔導師団が綿密に調査しました。    

  その結果、アミリア様の魔力は本物であると確信しました。

  ここにきて“水の賢者のたまご”が生まれた。これは光の女神様のお導きに他なりません。」


 ローレットさんは震える声で言った。

 「あの子はまだ12歳なんです。そんな危険なお役目に、あの子を出せません……

  両親を失い傷ついてきたのに……どうか……どうかご容赦を……!」


 ローレットさんは地面に膝と手をつき、必死に懇願した。

 僕は、その光景をただ静かに見守ることしかできなかった。

 

 「シスター……申し訳ありませんが、これは国の決定事項です。」


 黄金の杖が地面を軽く叩くと、従者が一枚の羊皮紙を差し出した。

 「こちらが、共和国議会印璽の押された辞令書です。偉大なる六賢者も承認しています。」


 上級魔導士は淡々と続けた。

 「国命に背いた場合は――極刑となります。」


 ローレットさんは、嗚咽をこらえるように口を押さえた。

 大粒の涙が、ぽたぽたと地面に落ちる。


 僕の頭は真っ白になった。

 何を言っているのか、理解できなかった。

 厄災……? 大賢者の結界……? 六賢者……?


 そんなことより、アミリアが連れていかれてしまう。


 僕の頭は、もう何も考えられなかった。

 いけないことなのかもしれない。

 それでも――アミリアを助けないと。


 アミリアはお転婆だけど、本当は泣き虫で、不安でいっぱいのはずだ。

 僕が助けないと……

 無我夢中で、アミリアの部屋へ向かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ