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無色の勇者と七色の約束  作者: 白猫サクラ
第6章 魔工科の友情
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第30話 魔道具工房の魅力に触れて

 週明けの月曜日。

 また魔導学院での生活が戻ってきた。


 授業開始を告げるチャイムとともに、ミール先生が教室の扉を開けて入ってきた。

 黒板にチョークを走らせながら、先生は説明する。


 「今日から、魔道具制作と魔法薬生成を本格的に行っていく。

 午前中は座学、午後は街の工房を見学する。」


 ミール先生は黒板に次々と魔道具の名前を書きながら、その用途と重要性を説明していく。

 魔道具には、属性魔力を込めたオーブ、エンチャントの付与石──

 魔法薬には、回復薬、魔力回復薬、解毒薬など、戦場で必要とされる様々なものがあるようだ。


 僕たちの制服のマントも、実習を想定して魔力攻撃を半減させる効果があるらしい。

 上質な生地だとは思っていたけれど、まさかそんな良いものだったとは。

 魔道具も魔法薬も、すべてが“誰かを守るための力”なんだということに気づいた。


 魔工科の学びは、僕が前に進むために確かに必要なものだった。


 僕は必死に耳を傾けた。


 ――ミール先生が黒板を軽く叩き、講義を締めくくった。

 「午後は、街の魔道具工房や魔法薬工房を見学する。出発までに支度を整えておくこと。」


 僕たちは、食堂のいつもの席で昼食をとっていた。

 「午後も楽しみだな!」

 魔道具作りが好きなニールは、ワクワクが抑えきれない様子だ。

 

 「ミール先生って、渋くてかっこいいよな」

  ニールが突然そう言った。


 僕も男だけど、ミール先生が“男として”かっこいいのは本当だ。

 あの落ち着き、あの包容力。僕も、少し憧れてしまう。


 そんなたわいもない雑談をしながら昼食をすませ、僕たちは教室へ戻った。


 ――午後、僕たちはミール先生に引率され、校舎を出た。

 学院の正門を出て五分ほど歩いたところに、央都でも有名な魔道具工房が見えてきた。

 

 店の看板には《リワード魔道具工房》と書かれている。


 店主のリワードさんは、少し小太りで優しそうな笑顔の男性だった。

 「ミール先生、いらっしゃい。この子たちが今年の学生さんですか?」

 「そうです。おい、みんな。自己紹介しなさい」


 僕たちは順番に自己紹介した。

 

 「私はリワード。この工房の店主をしています。

 先々代が店を構えてから……そうだな、もう百年は続く老舗だよ」


 工房の奥からは、金属を叩く音や、魔力の火花が弾けるような音がかすかに聞こえてくる。

 その音だけで、胸が少し高鳴った。


 百年続く工房。魔道具の歴史そのものみたいな場所だ。

 ニールは目を輝かせながら工房内を見回している。

 本当に魔道具作りが好きなんだと、横顔を見るだけで分かる。


 棚には大小さまざまな魔道具が並び、奥では職人たちが黙々と作業を続けていた。

 金属の匂いと、魔力の微かなざらつきが空気に混じっている。


 リワードさんがいくつかの魔道具をひと通り見せてくれたあと、オーブを手に持った。


 「実際に魔力オーブを試してみるかい?」


 ミール先生が少し驚いたように眉を上げる。

 「よろしいのですか? 事前にお願いしていたわけでは……」


 リワードさんは胸を張って笑った。

 「職人は実践してこそだよ。作って、試して、失敗して、成功する。その繰り返しで腕が磨かれるんだ」


 その言葉に、僕たちは思わず感嘆した。


 ――案内されて工房の裏へ向かうと、そこは広い実験場になっていた。

 都市の中心街にこんな場所があるなんて驚きだ。


 だが、危険な魔道具を試すには、少し不安を感じる。

 その不安を察したのか、リワードさんが説明してくれた。


 「ここは魔道具で魔力障壁を張ってあるんですよ。それと、防音石も設置してます。本来は大型モンスターの咆哮から鼓膜を守るためのものだけど、応用すれば爆音も吸収できるから、近所迷惑にはならないよ」


 リワードさんの落ち着いた声に、胸の不安がすっと消えていく。

 僕たちは、魔道具がこんな応用もできるのかと目を輝かせた。


 ――魔力オーブは、思ったより軽くて投げやすいようだった。

 

 力のないルミが投げても、十メートル先の的にしっかり当たった。


 直後――


 火球が爆ぜた。


 ファイヤーボールだ。

 爆ぜた炎がすぐに霧散し、焦げ跡だけが残る。


 ルミは驚きで目を丸くし、ニールは興奮して身を乗り出した。


 「よくやったな」

 ミール先生が静かに言うと、ルミはほっと息をついた。

 その様子を見て、リワードさんも満足そうに頷いた。


 火球の余熱がまだ空気に残っていて、その温もりに触れた僕たちの胸の奥でも、

 魔道具づくりへの期待が、そっと灯った気がした。


 ――僕たちはリワードさんに礼を言い、名残惜しさを感じながら魔道具工房を後にした。

 次の魔法薬店へ向かう途中、ニールが興奮気味に言った。


 「それにしても、すごかったな魔力オーブ!」


 ルミも嬉しそうに続ける。

 「私でも使えたよ……」


 石畳の道を歩きながら、僕たちはさっきの体験を何度も振り返った。

 街の喧騒が少しずつ近づき、午後の日差しが建物の影を長く伸ばしていく。

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