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無色の勇者と七色の約束  作者: 白猫サクラ
第5章 努力の先で手にした小さな栄誉
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第23話 吹き荒れる嵐

 草原地帯に到着すると、初夏の風が一面の草を揺らしていた。


 僕の腰には、レイン先生からもらった片刃の剣が下がり、歩くたびに鞘が太ももに軽く触れる。その重さが妙にしっくりくる。


 ミール先生が杖を軽く振る。

 「それぞれサーチを展開しろ。どこに魔獣がいるか分からん。油断するなよ」


 生徒たちは緊張した面持ちでうなずき、足元には魔法陣が広がる。

 それぞれサーチの反応を感じ、近くで跳ねるホーン・ラビットの小さな影を追っていた。


 僕はサーチが使えない。

 みんなのように効率よく魔獣の観察ができない。

 ただ、草の揺れや足跡、魔獣の気配を頼りに探すしかなかった。


 ――少し離れた場所で、ジョシュアたち三人がサーチの反応を確認している。


 「……C級だな」


 ジョシュアの声は抑えられていたが、どこか誇らしげだった。

 ミランダが静かに笑う。

 「仕留めれば実技の点数を多くもらえるかも」

 エレーナも満更ではないようだ。

 三人は自分たちの実技の評価点数を気にしているようだった。


 やがて三人は、危険等級Cの魔獣の反応がある方向へ進んでいった。


 ――草むらの奥で魔法の光が瞬き、歓声が混じる。


 「やった……! 倒した!」

 「絶対評価されるわ」


 攻撃魔法の魔力に気づいたミール先生が、三人が独断行動をしていることに気づく。

 「勝手な行動を取るなと言っていたのに……」


 そのときだった。


 「キャー!」


 空気を裂くような悲鳴が響いた。


 ぽつ……ぽつ……


 悲鳴と同時に、空から冷たいものが落ちてきた。


 ――次の瞬間、草原全体を叩きつけるような雨が降り始めた。

 雨はどんどん強くなる。


 ミール先生の顔に緊張が走り、サーチ魔法陣が描かれる。

 「あっちか……早くしないと視界が奪われる」


 雨音にかき消されそうな声で呟きながら、ミール先生は全員の位置を確認する。

 雨で視界と魔力が揺れる。

 集団から離れた三つの魔力反応と、複数の魔獣の反応が重なっている。


 「……三人はあそこか。魔獣の反応が近い……まずいな」


 ミール先生は走り出した。


 ――――――


 草むらの奥――ジョシュアたち三人が複数の影に囲まれているのを発見する。

 ミールの顔に焦りが浮かぶ。


 「よりによって……レインリザードか」


 危険等級C "レインリザード" ──

 雨天時に活性化する群生型の爬虫類魔獣。

 乾燥時は地面に擬態しおとなしいが、雨に濡れると体色が黒緑に変わり、動きと凶暴性が一気に跳ね上がる。

 水属性の魔力を吸収し、逆に活性化してしまうため、水魔法を得意とするミールとは最悪の相性だった。


 エレーナが倒れ込み、足を押さえていた。

 「痛っ……!」


 ミランダが水魔法を放つが、レインリザードのぬめった外皮に吸収され、霧のように消えていく。

 「なんで……効かないの……!」


 ジョシュアも火魔法を放つが、雨で火力が削がれ、黒緑の外皮に浅く焦げ跡をつけるだけだった。

 「くそ……火力が通らない……!」


 ミールが低く言い放つ。

 「お前たち……説教は後だ」


 レインリザードが豪雨の中を高速で走り回っていた。

 乾燥時に見せていた、地面に張り付くような鈍い動きはもうない。


 雨粒を吸った黒緑の体がぬめりを帯び、光を吸収して輪郭がぼやける。

 濡れた地面を滑走するように動き、草むらの影と区別がつかない。


 「……雨だとこうも変わるのか……!」


 雨が視界を奪う。

 黒緑の影を見失いそうになる。

 豪雨の音がレインリザードの足音を消す。

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