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無色の勇者と七色の約束  作者: 白猫サクラ
第21章 残された足跡を辿って
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第141話 託された願いを胸に、未知なる海へ

 カルディナ港は、朝の陽光に照らされ、活気に満ちていた。


 帆を広げた商船が次々と港を離れ、潮風が頬を撫でていく。

 空は青く澄み渡り、海面には陽光がきらきらと反射していた。


 そんな港の一角に、僕たちが乗り込む、漁船ほどの大きさの船が停泊していた。

 だが、小ぶりな船体に反して、船縁や甲板は堅牢で、細部に至るまで精巧に造られているようだった。


 「ロキさん。こちらです」


 傭兵組合の受付、リグナさんに呼ばれて近づくと、その隣には、先日の船長さんが立っていた。


 「ロキさんはご存じですね。ロイス船長です。

  今回の調査にロキさんが向かわれると聞いて、自ら協力を申し出てくださったんです。

  この辺りの海のことはよくご存じですから、頼りになると思います」


 ロイス船長は、にかっと笑った。


 「私もロキさんには助けられましたからね。

  それに、組合の傭兵が減ってしまったら、私たち船乗りも困るんです。

  ぜひ協力させてください」


 「お願いします。心強いです」


 ロイス船長が船へ目を向けた。


 「これが今回使う船です。帆船をベースに、風の魔力を推進力へ変換し、船体の浮力を安定させるなど、最新の魔工技術が応用されています。

  小型で小回りが利きますし、船足もなかなかのものですよ」


 小型ながら、安定性と機動力を重視した造りの立派な船だった。

 調査や救助といった、迅速な対応が求められる任務にはうってつけだろう。


 「こんな立派な船を用意していただいて、ありがとうございます。

  これなら予定より早く目的地に着けそうです。」


 僕が礼を述べると、リグナさんは微笑んだ。


 「護衛の方々も、傭兵組合から手配しています。

  船の守りは彼らに任せて、ロキさんは調査に専念してください」


 船のそばでは、数人の傭兵たちが装備の確認を進めていた。

 杖や魔道具、食料などを一つずつ念入りに点検している。


 「それから、こちらをお渡ししておきますね」


 リグナさんが差し出したのは、口にくわえるための筒状の魔道具だった。

 表面には小さな穴がいくつも開いており、見慣れない形をしている。


 「これは、漁師が水中で呼吸する際に使う魔道具です。

  効果は五分程度ですので、使用する際は十分に気をつけてください。

  ほかにも、海で使える道具をいくつか船に積んであります」


 海底の調査では、水中で活動することも考えられる。

 こうした道具まで用意してもらえるのはありがたかった。


 準備が整い、僕たちは船へと向かった。


 ――そのとき。


 背後から声がかかった。


 「ロキさん!」


 振り返ると、ユリシス殿下とティアさんがこちらへ歩いてくるところだった。


 ユリシス殿下は緊張した面持ちで僕の目を見た。


 「どうか、お気をつけて。ご武運を」


 「はい。必ず、手がかりを見つけてきます」


 僕はそう答え、軽く頭を下げた。


 ティアさんも小さく頷き、僕たちを見送ってくれた。


 ――やがて、船員たちの威勢のよい声が港に響き渡る。


 「出航ー!」


 係留索が解かれ、帆が風をはらむ。

 船体がゆっくりと岸壁を離れると、船尾の魔工機構が低く唸り、船は滑るように進み始めた。


 港には無数の帆が並び、大小さまざまな船が行き交っている。

 岸壁では、人々が忙しなく荷を運んでいた。


 港の景色が、少しずつ遠ざかっていく。

 潮風が外套をはためかせ、船首が白波を切り開く。


 眼前には、どこまでも広がる青い海。


 僕たちの船は波をかき分けながら、まだ見ぬ海域へと進んでいった。


 ――――――

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