表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
無色の勇者と七色の約束  作者: 白猫サクラ
第3章 無色の烙印と魔導学院
14/40

第14話 笑い声の残酷さから逃げた先に

 ――魔法実技の授業。


 広い訓練場に、火・水・風……次々と魔法が放たれていく。

 僕は列の端で、ただ見ているしかなかった。


 「次の者、前へ」

 ミール先生の指示が飛ぶ。


 火属性のジョシュアが前に出て、軽く指を鳴らすと、赤い火花が勢いよく散った。

 「おいロキ、気をつけろよ?」

 わざとらしい声とともに、火の粉が僕の足元へ飛んでくる。

 熱さに思わず身を引くと、周囲からくすくす笑いが漏れた。


 水属性の女子ミランダが笑いながら言う。

 「かわいそうだよ。彼、魔欠なんだから火傷しちゃう」

 そう言いながら、彼女は楽しそうに水弾を僕の肩へ向けて放った。

 冷たい水が服に染み込み、僕は小さく震えた。


 さらに、風属性のエルフ・エレーナが前に出る。

 「服を乾かしてあげないと」

 そう言って、彼女は軽く指を振った。

 突風が僕の足元をすくい、身体が前につんのめる。

 地面に手をついた瞬間、泥が跳ねて制服が汚れた。


 「女子は容赦ないなー」

 誰かの笑い声に同調するように、周囲の笑い声が重なった。


 その時――

 「おまえら、やめないか!」


 低く、鋭い声が訓練場に響いた。皆の視線が集中する。

 ミール先生が歩み寄り、生徒たちの前に立つ。

 「勝手な行動をとるな。授業中だぞ」

 その声は鋭く、授業の秩序を乱した生徒たちを容赦なく叱った。


 ──授業が終わり、僕が廊下を歩いていると、背後から声が聞こえた。

 「お前のせいで先生に怒られたじゃないか」

 「そうよ。あなたが魔法使えないのが悪いのに、なんで私たちが怒られなきゃならないわけ?」

 ジョシュアやミランダたちが、じりじりと距離を詰めてくる。


 嘘だ……君たちには、僕に意地悪しようとする意思があった。

 でも、言い返せない――頭が痛い。


 喉が固まって、怖くて声が出なかった。

 ジョシュアが僕を睨む。

 「こいつ見てるとイライラするな」


 エルフのエレーナが指を弾くと、風が巻き起こり、僕のカバンが宙に浮いた。


 ――ばさっ。


 教科書が廊下に散って、笑い声が広がる。

 声が出ない――震える手で必死に教科書をかき集めた。

 (なんでこんなことするの……僕のこんな姿を見たら、アミリアは……)


 僕は逃げた――振り返らず、走って逃げた。

 どこへ向かうのかも分からないまま、ただ逃げた。

 涙で視界が霞む。


 足音だけが、廊下に響いていた。


 ――――――


 気づいたとき、僕は学院の敷地を抜け、街を走り抜けていた。

 息が切れ、足が止まる。目の前にあったのは――あの孤児院だった。


 夕暮れの光に照らされた鐘楼。

 子どもたちの笑い声、ローレットさんの優しい声が聞こえてきそうな空気。


 僕は、無意識にここへ来ていた。楽しかった日々に戻りたかった……

 でも、ここは僕の帰る場所ではない……分かってる。


 分かってるのに――僕は、孤児院の前から離れられなかった。


 胸の奥がずっと痛くて、苦しくて、悔しくて涙が止まらなかった。

 くしゃくしゃの顔のまま、孤児院の前に立ち尽くした。


 「アミリア……ごめん……やっぱり僕……もう……」


 言葉が喉の奥で止まった。

 

 言ってはいけない……


 この先を言ってしまったら、君との思い出も、あの日の約束も全部壊れてしまう。

 強くなりたいのに、守りたいのに、逃げてばかりの自分が情けなくて、苦しくて、胸が締めつけられた。


 涙で視界が霞む……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ