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無色の勇者と七色の約束  作者: 白猫サクラ
第17章 古代の記憶が宿る皇都
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第100話 降り立つアスピア皇国の地

 翌朝、僕はリファーナさんとアスピア皇国に向かっていた。


 アスピア皇国は、僕たちのいたカーネスト帝国の北側の山岳地帯を抜けた先にある。


 国境を勝手に越えたことで咎められないか不安だったが、リファーナさんに聞いたところ、以前、皇女が外交のために山岳地帯を移動していた際、魔物に襲われたことがあり、それをローディンさんとリファーナさんが救ったのだという。


 その功績によって、二人は皇女から特別な交通手形を授かったらしい。


 以前聞いた、二人の遠征の話が脳裏をよぎり、胸が痛んだ。。


 飛竜の背は、山岳地帯の上空をゆっくりと滑っていく。


 下には、雲を突き破るように白い雪をまとった岩峰が無数に立ち並び、風に削られた稜線がはっきりと見えた。

 リファーナさんの髪が冷たい風に揺れていた。


 山岳地帯を抜けると、空気がわずかに柔らかくなる。

 眼下には、農村が広がり、その先には石造りの街並みが見えてきた。


 景色が、山から人の生活へと切り替わっていくのが分かる。


 さらに北へ進むと、街の規模が一気に大きくなる。


  ――皇都だ。


 皇都の中心部に入ると、建物の造りが変わった。


 石材は重厚で、表面には長い年月の使用跡がわずかに残っている。

 壁面には皇国の紋章が刻まれ、街全体が静かな威厳をまとっていた。


 上空から見たときも、人の流れが途切れず、人の賑わいがはっきりと見えた。


 奥に宮殿が見えた。


 白い外壁は均一に積まれた石で構成され、朝の光を淡く返している。


 飛竜は宮殿の外周をゆっくりと旋回し、城壁の外に設けられた検問所の上空へ降下していく。

 そこが着陸地点らしい。


 ――着地すると、最前列の兵士が近づいてきた。


 「交通手形を確認する。提示を――」


 リファーナさんが慣れた様子で懐から手形を取り出す。


 兵士はそれを受け取った瞬間、動きを止めた。

 目がわずかに見開かれ、背筋が伸びる。


 「……失礼いたしました。どうぞお通りください」


 態度が一変した。


 ローディンさんとリファーナさんが、本当に特別な存在なのだと実感する。

 

 「宮殿にいきましょう。少し歩くわ」


 リファーナさんがそう言い、僕たちは検問所を後にした。


 城壁の外側とはだいぶ雰囲気が異なり、道路は広く、建物の石材も均一で、どこか古い様式のようなものを感じさせる。


 道沿いには商店が並び、開店準備をする店主の声が聞こえる。

 子どもたちが石畳の上を走り回り、その横を、荷車を押す商人がゆっくりと通り過ぎる。

 どの顔にも、穏やかな日常があった。


 僕は、目に入るものすべてが新しく、思わず周囲を見回していた。


 その様子を、リファーナさんは優しいまなざしで見ていた。


 リファーナさんは周囲を見ながら言った。


 「アスピア皇国には、古代文明の痕跡が点在しているの。記録も断片的だけれど、研究には貴重で、私も何度か調査に来ているのよ」


 リファーナさんの言葉を聞きながら、その探求心の深さに感心した。

 

 宮殿に近づくにつれ、建物の規模が一段と大きくなり、空気が引き締まっていくのが分かった。


 正面の大扉の前には、近衛が二人、無言で立っている。

 黒い礼装に銀の紋章、動かないはずなのに、圧がある。


 その姿勢だけで、この場所の格式が伝わってくる。


 リファーナさんが小さく息を整えた。


 「……ここが宮殿よ」


 声は落ち着いているのに、どこか張りつめていた。


 僕たちが近づくと、一人が一歩前に出た。


 「これはラズウェル様」


 リファーナさんは歩みを止め、頭を下げた。


 「皇女殿下と巫女にお取次ぎをお願いします。」


 「伺っております。ご案内します」


 ――僕たちは近衛に続き、宮殿の中へと足を踏み入れた。


 宮殿の中に入ると、外の光が一段弱まり、空気がひんやりと変わった。

 白い石壁が続き、廊下の両側には、古い燭台と警備の近衛が巡回している。


 廊下の突き当たりに、重厚な扉があり、近衛が二人、無言で控えている。

 扉の表面には、皇国の紋章が深く刻まれていた。


 ――扉がゆっくりと開く

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