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コミュ障魔女の推し活動〜最強の隠密バフで推し騎士を完全無双させていたら、扉を物理破壊されて求婚されました。  作者: あめのしずく


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第一章9「狂ったシナリオは正さなければならない」

 ◇◇◇



 ――その頃、学園の広場では。


「グオオオォォン!!」


 魔族達が、怯える生徒や教師たちを容赦なく追い詰めて行く。本来の物語では、プレイヤーであるヒロインと攻略キャラが強力な装備を整えた上で戦う展開なのだ。

 だが、ヒロインは引きこもり攻略とは程遠い日常を送っていた為、そんな装備や準備は無い。


「ハァ、ハァ……ッ! くそ、キリがない……!」


 最前線で剣を振るうクライン。流石の彼も数の暴力には苦戦しているらしく、息を切らしていた。


「クライン様、この規模の軍勢は多すぎます! 一度体制を整えるべきでは!!」


「それは出来ない! 生徒たちの避難が終わるまで、ここで食い止めるなければ……!」


 剣を構え直した、その時、魔族の群れの奥から、他とは明らかに一線を画す知性を持った魔族が現れた。


「っ!……悪魔か」


「ハハハ! オレサマは悪魔族のバザル。魔王復活の邪魔をする人間共を皆殺しに来た」


 ゲーム中盤のボスとしてプレイヤーの壁となる、冷酷非道な悪魔。


「漆黒の魔弾・ダークオーブ」


「くっ……厄介な技を!」


 クラインの頭上に無数の黒い弾が現れる。

 バザルは冷酷な笑みを浮かべると、クラインへと放った。


「終わりだ、若き騎士。我が漆黒の魔弾で、灰すら残さず消え去るが良い」


 全ては防ぎきれない。そう直感したクラインが衝撃に備えた、その瞬間。


「――私の、大切な推しに、何してくれてんじゃボあぁぁぁ!!」


 ドオォォォォン!!!


 学校全体に一人の少女の声が響き渡った。

 上空から眩い光の弾が流れ星の様に降り注ぎ、クラインに迫っていた魔弾を全て相殺した。


「し、神聖魔法だと!? この世界に使える奴が残っていたと言うのか!?」


 バザルは信じられないと言った光景に目を見開く中、立ち込める煙の向こうから、一人の魔術師がふわりとクラインの前に降り立った。

 フードを深く被った白いローブ姿の小柄な魔術師。手には体躯に不釣り合いな、大きな白い杖が握られている。

 バザル、そして、避難していた生徒や先生達が一体何者だと騒つく中、ただ一人だけその人物の正体が分かる者がいた。


「ル、ルウシェ……!? なぜここに、来るなと言ったはずだ!」


 クラインの声に、白いローブのフードがビクッと大きく跳ねる。

 直ぐにバレてしまったルウシェはブルブルと震えながら振り返り、いつものコミュ障になり視線を泳がせながら言い訳を始めた。


「あ、あの、その……ちが、違うんです! く、クライン様が、し、死んじゃうのは……その、ダメ、絶対、なので……あうぅ……」


(ダメだーーー!! 推しが至近距離でボロボロになってるの辛すぎて直視できない! お、落ち着け私、これは推しの為、例え怒られたとしても……私は貴方の傷付いた姿は見たくないんだ!)


 ルウシェがフードを更に深く被り、オタクトークを繰り広げていると、その肩に乗ったピィちゃんが乗って来た。


「全く……挙動不審ですよ。クライン様、お嬢様は『私の大好きなクライン様が危険な時に待つなんて出来ない』と時計塔からこちらに飛んできたんですよ」


「ピ、ピィちゃん!! 余計な事言わないで!」


「事実ではありませんか。人前に出るのを拒んでいたでしょう?」


「いや、それは……まあ、そうだけど」


 二人のやり取りにクラインは驚き、自分のために恐怖を撥ね退けてここまで来てくれたルウシェに感謝を伝えた。


「……ありがとう、ルウシェ。先程は声を荒げてしまい、すまなかった。だが、ここは危険だ。俺の後ろに……」


「いえ、私がやります。クライン様はレイン様の所にいて下さい」


「だが……っ!? ルウシェ!!」


 ドンっとクラインを突き飛ばすルウシェ。

 その瞬間、ルウシェに向かって魔弾が飛んできた。


「ルウシェ!!」


「チッ……一人だけか」


「危険です、クライン様!」


 ルウシェに突き飛ばされたクラインに駆け寄るレイン。クラインは自分の事よりも「ルウシェが!」と手を伸ばした。


「……あ、危なかった〜。もー、ピィちゃんが余計な事を言うからだからね!」


「私のせいなのですか? 気付くのが遅れた、お嬢様のせいでしょう」


 煙の中から聞こえてくる声は焦る様子もなく、ゆっくりと姿を現した。


「無傷、だと!? これならどうだ!!」


 次々に攻撃を仕掛けるバザル。しかし、ルウシェには届かなず全て相殺されてしまった。そして、杖を空に向け、空中に術式を展開していく。


(もし、シナリオが狂った影響で起きてるなら早く終わらせて、正しい物語に戻さないと。ここは、広範囲魔法で……!)


 ルウシェの頭上に、学校全体を覆い尽くすほどの巨大で何重もの魔法陣が展開された。

 世界を揺るがす程の圧倒的な魔力圧に、バザルは顔を引きつらせた。


「馬鹿な……なんだこの術式は!? 人間が出せる規模ではない! 貴様は一体、何者なんだ!!」


「……私はただの引きこもり魔法使い、かな」


 ルウシェの凛とした声が響く。


「これで終わりだ! 神聖魔法・シャインアロー!!!」


 ドォォォォォン!!!


 光の矢が、学園全体を包み込み放たれた。

 だが、矢はまるで意思を持っているかの様にクラインや生徒達を交わし、魔族のみを貫いていく。

 まさに「神級の魔法」だった。


「ぎゃああああああっ!? あり得ん、まさか、こんな人間にやられるなんて!!」


「……私を相手にした事、後悔しながら死んで下さい」


 ポツリと呟くルウシェを前に、バザルと魔族は影一つ残さず完全に消滅していった。


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