第二章13「私の次の行動は?」
時計塔に戻り、布団にダイブしたルウシェ。そして、先程まであった出来事を話し始めた。
「ピィちゃん、聞いて!
今日ね、大変なことがあったの……!」
テーブルの上でお菓子をパクパクと食べながら反応する。小さな小鳥、ピィちゃん。
「大変なことって……またイケメンを見て気絶しかけましたか?」
「それもあるけど!
闘技場でクライン様とジェイドが戦ってね。それだけでも神イベントなのに、そこへまさかのお兄ちゃんが乱入してきてさ〜〜」
ルウシェは身振り手振りを交えながら、闘技場での一部始終を熱弁した。クラインの乱れた前髪の破壊力、ジェイドの汗の滴る鎖骨の眩しさ、そして相変わらずのシスコン全開で現れた兄、アルス・ホワイトの暴走ぶり。
一通りルウシェの「限界オタクトーク」を黙って聞いていたピィちゃんだったが、ふと、あることに気づいたように小さな目を鋭く光らせた。
「決闘の件は分かりましたが……先日の演習事件はどうだったのですか?
それに、お嬢様はあの時どうしていたんですか?」
「あの時のこと?」
ルウシェは寝そべったまま、不思議そうに瞬きをした。ピィちゃんからすれば、主人が殺されかけた一大事である。しかし、当のルウシェの反応はひどくのんびりとしたものだった。
「ああ、あの時はね、普通に浮遊魔法を使ってふわっと助かったよ。ちょっと着地する時にスカートがめくれそうになって焦ったくらいかな」
「……それだけですか?」
「それだけだけど? あ、でも落ちてすぐ魔獣の気配を感じて焦ったよ〜〜! ま、無事にクライン様も助けられて安心したけど」
「はぁ……命の危機に対する危機感が皆無すぎます……」
呆れて羽をがっくりと落とすピィちゃんを余所に、ルウシェは勢いよく上半身を起こした。その瞳には、先ほどまでのダラけた様子とは一転して、並々ならぬ決意の炎が灯っている。
「それよりもピィちゃん、重要なのはそこじゃないの。次の『遠征演習』よ」
「遠征? さっき言っていた、騎士団長がついてくるっていう授業ですか」
「そう! 場所は『黄昏の森』で強力な魔獣がうじゃうじゃいる危険な所なの。いくらお兄ちゃんがいるとはいえ、何が起こるか分からない。……だからね、私は決めたの」
ルウシェは拳をきゅっと握りしめ、真剣な面持ちで宣言した。
「遠征中、私は影から全力で、クライン様を『隠密強化魔法』で支援するわ……!」
「陰からの支援……直接は助けないのですね」
「当然じゃない! 私みたいなモブがしゃしゃり出て戦ったら、物語のバランスが崩壊するわ。私はここから、クライン様に最強のバフを盛り続けるの」
クラインが魔獣を華麗に一刀両断する姿を想像し、ルウシェは早くもウットリとした表情を浮かべる。
「……まあ元々、お嬢様は影でコソコソとストーカーしながら強化魔法をかけている方がしっくりきます」
ピィちゃんはルウシェのどこまでもブレないオタク精神に、小さくため息をついて見守るのだった。




