第二章8「目覚めたら時計塔でしたが?」
「……さて。彼女も倒れてしまったし、おふざけはここら辺にしようか。皆、今日の合同演習はここで【中止】にするよ」
続けて、アメリア先生は「それと、君達」と捕縛魔法でルウシェを陥れそうとした女子生徒たちを縛り上げ冷徹な目で見下ろしながら、パンパンと手を叩いて告げた。
「君達はボクが責任を持って君たちを送り届けるよ。さぁ、他の皆も学校に戻って!」
その言葉に、周囲の生徒達は来た道を戻って行く。
「ルウシェは保健室ではなく、時計塔に送ってくれるかい?」と頼まれたクラインは彼女を抱え時計塔へと運ぶのであった。
数日後、脳のキャパシティを使い果たして丸一日半眠っていたルウシェは、自室のベッドでようやくゆっくりと目を覚ました。
「う、ううん……」
「おや、ようやく戻ってきましたか、お嬢様」
ベッドの脇から、呆れたような聞き馴染みのある澄んだ声がした。
ルウシェが視線を向けると、そこには彼女自身の魔力から生まれた小さな人工精霊――。
ピィちゃんが、パタパタと羽を羽ばたかせながら浮いていた。
「あれ、ピィちゃん……?
私、どれくらい寝てた?」
「丸一日と半分ですね。あの大蛇をワンパンした後に倒れたと伺ってます。……まあ、私の考えでは限界オタクのキャパオーバーではないかと思いますけどね」
「うっ……鋭いな、ピィちゃんは。だってさ、推しからの独占欲全開ハグなんて実質、即死魔法じゃん!
あ、ヴァンパイア スネークは楽勝だったけどね!」
「はいはい。それより、目をぐるぐる回して倒れてるお嬢様をクライン様が運んできた時は、流石の私も驚きましたよ」
「えっ、クライン様がそんな事を……!?
うわぁぁ、その時の録画データどこ!?
そんな最高の展開があるなら起きてたよ!!」
先程まで眠っていた人とは思えない程の荒ぶりに呆れ果てるピィちゃん。
そんな彼女を落ち着かせ、起きたら伝えて欲しいと言われた伝言を伝えた。
それは、あの大蛇の事件に関する事情聴取と、崖から突き落としてきた女子生徒達の処分について。
「と、アメリア先生が学校に来る様にとの事でした」
「が、学校……む、むむむ無理だよ、怖いもん……」
「でも行かないと……ずっと届きますよ?」
ピィちゃんの視線の先には手紙の山。どうやらアメリア先生が魔法で届けてくれている様だが、小窓から一定のリズムで手紙が流れ込んでくる。
「この部屋が埋まる前に、返事をして学校に行って来てください。出ないと部屋が手紙だらけです」
「うぅ……手紙に埋もれるのはいやぁ……はあぁぁぁぁ」
ルウシェは重い腰を上げて学園の校舎へと向かうことになった。




