第二章4「女の嫉妬は怖いです」
前衛は騎士クラス、後衛は魔術師クラスという編成で森の奥へと進んでいく。
ルウシェは、その更に後方でポツンと歩いていた。
(う~~……ここからじゃ最押しの戦いが見えないよ……。それに、なんかこっち見てくる人もいるし……早く戦闘が起きないかな~~)
そんなことを考えていたら、有り難いこ事に一匹の「ショドウウルフ」が現われた。
生徒達は「うわっ」と驚くがクラインが先陣を切って前に出る。
「落ち着け、相手は一匹だ。レイン、援護を頼む」
「承知しました。……皆さん、周りを警戒してください。敵が一匹とは限りません!」
「グオォォォォォォ!」
「来るぞ! はっ!!」
飛びかかってきた魔獣を、クラインの大剣が切り裂いていく。レインは他に魔獣がいないか警戒をする様に周りに指示をし、隠れていた魔獣を片付けられていく。
そんな二人に、ルウシェはキラキラした眼差しで見つめていた。
(クライン様、かっこいい……! レイン様も完璧な指示だし、お見事です! ゲームの作画も神だったけど、生戦闘も神がかりだ!!)
と心の中で感動していた。
前半の魔獣討伐は順調に進み、アメリア先生の「一度休憩にしまーす!」という声で、生徒達は緊張感から解放された。
「ルウシェ、初の授業は問題はないか?」
「だ、だいじょうぶれふ……っ!」
「まだ緊張しているようだが、問題なさそうだな。もし何かあっても、俺がいる」
「い、いえ! 私が接待に推し……じゃ、じゃなくて、クライン様を護りますので!!」
杖を握り気合を入れるルウシェにクスクスと笑う二人。そんなやり取りをしていると「二人ともちょっといいかい?」とアメリア先生に呼ばれてしまった。
「後半の移動ルートについて説明するよ〜〜」
「……すまないな。少し行ってくる」
「何かあれば、すぐに呼んで下さい」
小さく手を振り、アメリア先生の元へ向かう二人。
すると背後から声を掛けられ、振り返る。
「あの……ルウシェさん、でしたよね?」
突然、数人の女子生徒達がルウシェに近づいてきた。
最近やっとクラインとレインに慣れて来たルウシェは、他の人物にはまだ慣れておらず、ビクッと肩を揺らす。
「は、はい……な、何でしょうか……」
「今回は私達の『護衛』として参加してくださっているのですよね? 実は、あちらの木陰の奥に気配を感じまして……」
一緒に調べて欲しい、とお願いされたルウシェ。
しかし、その目の奥には、天才騎士クラインから一途な愛情を受け、おまけに『護衛』として特別扱いされているルウシェへのどす黒い嫉妬が渦巻いていた。
そんな悪意に疎いルウシェ。
「け、気配……ですか?……い、一応、索敵はしてますが……」
反応は見当たらない、と伝えたが「気になるから」と言われ彼女たちの後ろを着いて行く事に。
休憩場所から、どんどん木々が鬱蒼とした薄暗い方へと進んでいく。
やがて、傾斜が急な岩場へと差し掛かった。ルウシェの目には、先程アメリア先生が「絶対に入るな」と言っていた、禁止区域の結界の境界線が映り込む。
「あ、あの……ここってアメリア先生が言っていた禁止区域じゃ……」
「ええ、この先よ。――じゃあね? 『時計塔の怪物』さん」
ドン――
クライン達の目が完全に届かない場所へ辿り着いた瞬間、女子生徒の一人がルウシェの背中を強く突き飛ばした。
「ひゃうっ!?」
結界の線を越えた先は、底が見えない崖。
バランスを崩したルウシェは、白いローブを大きくはためかせながら、なす術もなく真っ逆さまに崖の下へと突き落とされた。
「あははは! 良い気味だわ。そのままそこで引きこもってなさい!」
上空から遠ざかっていく女子生徒達の嘲笑。
激しく吹き抜ける風の音の中、ルウシェの身体は猛スピードで落下して行くのだった。




