第二章3「森の入り口と初授業」
「ひゃあぁぁぁぁぁぁ……!」
部屋中に響き渡るルウシェの悲鳴をBGMに、演習への参加準備をしていたルウシェ。
「お嬢様、本当に大丈夫ですか? 私も着いて行きましょうか?」
「だ、大丈夫だよ! 私だって、推し活で外くらいは出た事あるし……生で推し戦闘シーンを見れる機会だと思えば、頑張れるから!!」
お留守番していてね、と心配そうに見つめるピィちゃんに、ルウシェは重い足取りで時計塔を出た。
他人の視線が怖いルウシェにとって、ピィちゃんという心の支えを置いていくのは不安だったが、学校内に精霊を連れて歩くのは駄目だとアメリア先生に言われてしまったのだ。
今日のルウシェの服装は、制服の上に白いローブ。このローブはゲームでのヒロイン専用の衣装で、他の魔術師クラスのローブは黒色となっている。
他人の視線を少しでも遮るためにフードは深く被り、顔が半分隠れるようにして目的地へと向かう。
学校の裏手に広がる、鬱蒼とした演習場の森の入り口。
そこには、選りすぐりのエリートが集まる特級騎士クラスの生徒達と魔術師クラスが集まっていた。当然、その中にはクラインとレインの姿もある。
「はーい、皆集まって〜〜!」
入り口の方で、緊張感のない声が響く。
「これより、合同・魔獣討伐演習を始めるよ。今から森の中央に生息する『シャドウウルフ』の討伐を行う」
アメリア先生はそこでふっと笑みを消し、真剣な表情で生徒たちを見渡した。
「先日の襲撃事件の通り、最近は魔族の動きが不穏んだ。万が一に備えて今回はボクだけでなく、特別な護衛役にも同行して貰う。
――紹介するよ、ルウシェ・ホワイト。君達が噂していた『開かずの時計塔の怪物』いや、今は『女神様』かな」
アメリア先生が手招きすると、生徒たちの視線が一斉にルウシェへと注がれた。
深く被った白いフードの隙間からオロオロとした瞳が覗く。
「えっ、あの子が……?」
「確か、一撃で魔族を倒したっていう魔術師だろ……?」
「あれが『時計塔の女神様』か!」
騒めく生徒たち。反応は様々で、驚く者や崇める者などがいる。
アメリア先生はそんな声を遮るように話を進める。
「それと、あっち側は【禁止区域】になっている。結界があるから分かると思うけど、本当に危険だから絶対に近寄らないでね。後、ボクは基本手を出さないから君達だけで対処する事、分かった?」
「「「はい!」」」
「それじゃあ……行ってみよーー!」
生徒たちの引き締まった声が響く。アメリア先生は満足そうに頷くと、ルウシェにに、「よろしくね」ウインクを投げる。
そんな事をする先生に周囲からの視線は増していく。
(うぅ、視線が痛い……断れば良かった。帰りたい、今すぐ帰りたい……助けて、ピィちゃん!)
白いフードをさらに深く引っ張り、最後尾へ並ぼうとするルウシェに、クラインがすっと近付いてきた。
「大丈夫だ、ルウシェ。不安がる事はない、俺がいる」
「ふぁ、ふぁい……!」
その頼もしい表情と言葉に尊さを感じながら、ルウシェはコクコクと頷く。
こうして、ルウシェ達は森の奥へと入って行くのだった。




