第二章1「私の気持ち」
クラインに求婚をされた翌日。
ルウシェは布団に潜りながら、昨日あった出来事を思い出し悶えていた昼過ぎの出来事。
コン、コン
風が吹き抜ける扉の向こうから、極めて上品なノックの音が響いた。
「ひゃうっ!?」
「お嬢様、そろそろノック音には慣れましょうよ……。クライン様でしょうか」
部屋に入って来たのは――
美しい金髪を揺らし、扉を見て苦笑いをする青年だった。
「失礼します。……あぁ、クライン様、本当にまた扉を壊していってしまったんですね。申し訳ありません、ルウシェ様」
「え、レ、レイン……様……っ!?」
布団から顔を出したルウシェは目を丸くして彼を見る。
レイン・サージェス。クライン様の付き人であり、同じく特級騎士クラスの攻略対象キャラクター。手先が器用で穏やか、視野が広くてクライン様のフォロー役を務めている。
「あ、え……えっと……」
(やばっ、顔がいい! 昨日、一瞬だけみれたけど、立ち姿がゲームのままじゃん! イラストレーターさん、本当にありがとう。『ロマンティック・ウィッチ』最高!!)
レインの姿に感動するルウシェの元に彼はすっと膝をつき、目線を合わせて来た。そして、ポケットから綺麗な装飾が施された小箱を取り出す。
「急にクラインが押し掛けた件と、扉に関してのお詫びです。扉の方は早急に修理しますのでご安心下さい」
「え、あ……あ、ありがとう、ございます」
渡された小箱を受け取り開けてみると、キラキラと宝石の様な飴玉が入っていた。
「レイン様、私からもありがとうございます」
「あぁ、君がピィ様ですね。クライン様から伺っております、ルウシェ様の精霊でしたね」
「はい。私は、引きこもりお嬢様のお世話もやっております」
「ピィちゃん! 事実だけど、引きこもりは余計だよ……!」
ルウシェがピィちゃんのやり取りに、レインは、ふっと本当に愛おしそうな笑みを浮かべた。
「仲が宜しいのですね。……ところで、クライン様からの求婚したと聞いたが……返事はどうするんだい?」
「それ、は……」
最推しに告白をされた上、「妻に」などと言われた事は今でも驚いている。今まで、一歩引いたポジションから見ていたルウシェにとって、未だにどうしたら良いか分からずにいる。
チラリとピィちゃんを見てみるがプイッと逸らされ、自分の口で答えろと圧を掛けられた。
「……今は、まだ、分かりません。……でも、私はクライン様が大切、なので……いつかはちゃんと」
返事をしたい。段々と小さくなる声でそう答えたルウシェに、レインは嬉しそうに目を細めた。
「教えてくれてありがとうございます。……答え、見つかると良いですね」
――と、これがルウシェとレインの出会いであり最初のやり取り。
この後からルウシェの引きこもり人生が大きく変わっていくのだった。




