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レティシア式スパルタ教育 作成編

 私の名前はレティシア少し前にピース様の教育係になれたが、それは長く険しい道のりだった。


 思い返すだけで気疲れするほどだがあれはあれで楽しい思い出でもある。


 幼いころの私は一応貴族の血は入っているが分家も分家の人間で社交界なんて縁遠いほぼ平民のような暮らしをしてきた。


 そんな中冒険者にあこがれを持った私はギルドの門を叩いた。


 最下層のFランクから叩き上げで最高到達点のSランクにまで上り詰めた。


【白銀】という二つ名とともに有名人になったが所詮それは冒険者の中での話。


 王宮や貴族連中、本家筋からは一切音沙汰はなかった。


 ちなみに表向きは髪や肌の色から取られているが本当の理由は他にある。


 Sランクになった私は一種の燃え尽き症候群となり魔物の跋扈(ばっこ)する未開の地でなくダンジョン狩りや人の活動領域での緊急討伐依頼を受ける毎日だった。


 ダンジョンとは一種の魔物だ。それを狩るのがダンジョン狩り。


 元々ある洞窟や放棄された辺境の空き家…(主に貴族の別荘)…に住み着き改造し宝や呼び込んだ魔物を餌に人間を釣る。


 中で死ねばダンジョンの(にえ)となり逆に宝箱を開け中に入っている宝を取ると宝箱は地中へと逃げまた別の場所でダンジョンを開く。


 これがダンジョンの生体でいわば一種のイベントモンスターだ。


 どこかに再度現れる(リポップ)するのだからダンジョンは基本狩りつくされることはない。


 しかし街道の近くや村付近、貴族の狩り用に整備された森林内に出現(ポップ)したものは狩られる。


 狩り方は簡単だ。


 ダンジョンを攻略したのちに宝箱が逃げる前に地上に引きずり出す。


 理屈や生態は不明だが逃げる宝箱を取られるとダンジョンは崩壊する。


 これでしばらくは安全が確保されるわけだ。


 ダンジョン攻略はその性質上多人数での攻略が事実上不可能だ。


 崩壊しきる前に洞窟や建物から逃げだせる人数までしか同時に挑むことはできない。


 その点私はソロで行動していたしSランク冒険者であるため今更パーティを組んでくれるまともな奴らなんてそうそう現れない。お一人様というやつだ。


 そんな生活にも飽きた私は面白そうな依頼を見つけた。


 第二王子殿下の近衛兵に対魔物の戦闘訓練を施してほしいというものだ。


 魔物との戦闘経験豊富な優秀なパーティーの剣士だけがこんな依頼受けるわけないだろうに…


 やることもない私は興味を惹かれたこの依頼を受けてみることにした。




 今私はこの依頼を受けたことを後悔している。


 近衛兵どもに魔物の狩り方をレクチャーしているのだがこいつらと来たら対人戦闘に特化し過ぎて魔物ごとに弱点部位が異なることを理解できないようだ。


 いや頭では理解できているのだろうが体が「対人戦闘」を覚えてしまっているせいでどいつもこいつも剣が最も早く相手に到達する切り方でしか切らない。


 そんなのでは傷が浅すぎていつまでたっても狩ることはできない。


 それをわからせるためわざわざ初日に魔物との戦い方を肌で感じてもらおうと低レベルの魔物で実践させてみたのだが点で話にならなかった。


 しまいには死者が出かけれる始末。


 そんなので近衛兵をよく名乗れたものだ。


 王族が移動する道でも魔物が出ない保証なんてどこにもないというのに。



 2日目は徹底的に座学を仕込んだ。

 森で遭難した際、薬草になる木やら花や草を教えたりメジャーな魔物の弱点を講義したのだが途中で寝るやつが出た時点で私の我慢は限界に達した。



 3日目の午前に指導している近衛兵たちを刃引き済みの訓練用の剣で一人残らずの叩き切ってやった。

 刃は無いのだから叩かれただけか。


 魔物と戦闘するときに負う傷は尾や腕で叩かれたことによる打撲や骨折がほとんどなのでいい経験になっただろう。



 3日目の午後、私の前に天使が舞い降りた。

 午後の訓練を開始しようとしたら訓練場が騒がしかったので確認したところ急遽王族が見学に来たためイスやら傘やらなんやらの用意にバタついているらしい。


 さすがは近衛兵、あれだけボロボロにしてやったというのにお偉いさん方からポイントを稼ぐのに余念がないらしい。


 しかし訓練にアポなしで見学に来るとか第二王子殿下には少しくらい礼節くらい弁えてほしいものだ。


 しかしこれはちょうどいい機会だ。


 せっかく見学に来たのだご自慢の近衛兵がどれだけ使い物にならないのかその目に見せてやろうと思い少し早いが2度目の魔物との実践訓練をすることにした。


 準備ができたとこことで訓練場に行くと、離れたところに傘を発見した。


 お上品だことで。


 傘と行っても机の上に固定するタイプで常時お付きの者が差しているわけではない。


 第二王子とあたりは付けたが違った場合、訓練なんぞに興味をもつとは第何王子なのやら?


 あいさつにいくつでに確認しに行ったのだがそこに座っていたのはほんの2~3歳くらいの女の子だった。


 私の思考はほんの数舜止まっていた。



 再起動した私は目の前にいらっしゃるのが十三王女殿下のピース様だったことをかろうじて思い出すことに成功した。


 そりゃ近衛兵たちもバタつきながら道具を用意するわけだ。


 この方はここ十年ほどは生まれてもすぐに亡くなってしまっていた国王陛下の直系の子どもなのだから。


 そういう事情もあり(よわい)五十を過ぎた国王陛下が初孫のごとくピース様を溺愛していることは周知の事実だ。


 さてどうしたものか。


 こんな幼い子どもに魔物との実践訓練を見せるほど私は鬼じゃない。


 しかし何がどうなってこの子が見学する流れになったのか分からない以上勝手に訓練内容を変更するのもはばかられると思い、私は仕方がないく予定通り訓練を始めた。


 結果としてこの判断は正しかった。



 ピース様はじっと訓練を眺めていらっしゃった。


 ほかの者はどう感じたか知らないが私には上位者が欠点を見定める目、もしくは魔物が獲物を捕捉した目に見えた。


 訓練場を歩きながらピース様とお互いに見合った時久々に狩られる側の恐怖を肌で感じた。


 たかが2~3日の訓練で魔物を効率よく枯れるわけもなく訓練はグダグダだった。


 そんな時私のもとに一人のメイドが


「ピース様から質問したいことがあるそうです。お答えできますよね?」

 などと言ってきた。


 2~3歳の子どもの質問だ。


 どうせ「魔物と戦うのは怖くなんですか?」程度だろう。


 私は先ほど感じた恐怖もどこかに忘れ、案内されるがまま軽い気持ちでピース様のもとへと向かった。


「キャロル王国第十三王女、ピース=メッセン=キャロルです。よろしくお願いします。」


「はい。存じております。私の名前はレティシアと言います」

「本日はこのような場所までご足労頂きありがとうございます。ご質問があるとのことでしたがどのようなことでしょうか?私に答えられることでしたら何でも答えますのでご遠慮なくどうぞ」


(相手は2~3歳の子どもとはいえ王族、周りにはメイドも何人かいる。

 王族のメイドというのは大抵貴族の子女だ。

 このくらい丁寧やらないとやれ冒険者は無粋だの礼儀を知らないだのとうるさいからな。堅苦しくてごめんねピース王女)

 そんなことを思っていた私はこの後何を言われたのか初め理解できなかった。


「なんで魔物と戦うのに集団で取り囲んで多方向から切りかかったり、一方面をおとりにして他方面で倒すようなことをしないの?それにこれは何を想定した訓練なの?誰かの護衛中に魔物と接敵したからやむなく戦闘に入った想定?それとも大量発生した魔物を駆除する訓練の予行演習?魔物って強力な一小隊みたいなものだよね?そう思って攻略方法を探った方が効率的だし近衛兵さんたちも普段の訓練からヒントを得られやすいんじゃない?」


 そんな言葉のラッシュに一発KOされた私は答えようにも言葉が出てこなかった。


 想定?魔物がいるから倒す。


 それが冒険者だ。


 想定も何も接敵したら生きて帰れるように目の前の敵をすべて倒すだけだ。


 だが私はいわれたことを理解すると自分がいかに間違った指導をしていたのか理解(わから)させられた。


 彼らは兵士なのだから訓練には意味を見出そうとする。


 ただ強くなるためだけの冒険者の修業とはわけが違うのだ。


 接敵しそうになったら警護対象は安全圏に避難させ護衛と遊撃隊に別れて事に当たる。


 無理して魔物を狩る必要はない。


 魔物を追い返し、警護対象無事目的地まで送り届けることができたら任務達成なのだ。


 逆に魔物を狩れたとしてもその間に警護対象が怪我を負ってしまえば任務失敗。


 出世への道が閉ざされるだけで済めばいいほうというような目に合うだろう。


 私が押し黙っているからか。はてまた興味を失ったのかピース様は私に向けて

「何でも答えてくれるとのことだったけれどもこの質問はあなたには答えられないものだったのかしら?守秘義務とかいうやつ?ならしかたないわね。」


 と冒険者への詮索はご法度という暗黙のルールを取り出すことで()()()()()()()()()()()()()()()


 帰路についているピース様に対して近衛兵たちは次々に

「ピース様お気を付けてお帰り下さい!」

「我々の訓練を視察していただきありがとうございました!」

「ピース様が示してくれた訓練でいつかピース様をお守りいたします!」

「ばっかお前。それだとピース様が襲われることになっちまうだろ!」

 などとピース様のお見送りをしていた。



「みなさん私の訓練方法が間違っており皆様にご迷惑をおかけしたり、ご不快な気持ちにさせてしまって申し訳ございませんでした。今日は解散しまして近衛兵の皆さんの任務に合った訓練方法を考えてまいりますので明日の訓練にも参加してください。よろしくお願いします」

 ピース様が去られてから私は近衛兵を集めて言いたいことだけ伝えると足早に用意された客室へと戻り訓練メニューを考える。




 その訓練メニューがハマったのかは分からないが私のもとには他の近衛兵団や一部貴族からも訓練依頼が殺到した。


 私はそれの報酬にピース様に関わる役職になれるように王宮に働きかけることを要求した。


 Sランク冒険者が王宮で働きたと言うのだ。


 しかも将来は国王陛下が溺愛しておられるピース様付きになりたいと。


 私は短期間で破格の待遇を受けメイドとして雇って貰えることとなった。


 そのため初めは国王陛下付きのメイドとして専属メイドに何が必要で何を求められるのかを学びつつ騎士団、警備兵団、新兵団を相手に剣を教える方法を模索していくこととなる。


 将来の主であるピース様に剣を教える日々を夢見ながらそのための訓練プラン構築のためにこいつらでトライ&エラーをするとしよう。




 その前に王宮のメイドと冒険者の兼任は厳しいのでギルドには脱退届を提出してきた。


【白銀】はしばらくお休みだ。


 引退ではない。


 私の勘ではピース様は将来冒険者もしくは魔物に興味を示す予定なのでその時に復帰し「えーレティシアってSランク冒険者だったの!すごい!」

なんていいながら休日の余暇を楽しむのです。

こうして彼女が鍛え上げた新兵たちは近衛兵団、騎士団、警備兵団へとなり各々の役割を全うしていくのでした。

そして優秀なものは後にレティシアがピース様付きの近衛騎士団に勧誘することとなる。

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