王立古代魔法魔道具保管室
この本を読み直すのも、もう何十回目だろうか。
私は王立古代魔法魔道具保管室に行く前に数日掛けて通いなれた第一図書室で古代魔法、魔道具の復習をしている。
魔法はイメージが重要で自分の起こしたい事象を理解することで魔法を扱う力が増す。魔法を使うだけなら一度か二度読めば十分だが、より正確に扱うには何度も読み込み理解を深めることが必要となる。
故に、魔術師は魔術書を完全に理解できるまで何度も何度も繰り返し読み込む。
反復も終わった所でいざ第二図書館へ!
王立古代魔法魔道具保管室は城の地下に存在する古の時代の技術やその知識によって作られた魔道具が保管されている場所であり、一部の者からは禁書庫などと呼ばれている。
最初の入室ということで書類を何枚も書かされた後、提出しに私はレティシアと司書室へとむかった。
お役所仕事ここに極まれり。
第二図書室司書室へ行くと出迎えたのは直角司書さんではなく第一図書室の司書さんだった。
「ピース様ご無沙汰しております。ピース様が初めて王立一般蔵書室にいらっしゃられてから私ピース様がどこに行かれたも司書として対応できるように様々な資格を取ったんですよ!そしてピース様が王立古代魔法魔道具保管室にご興味を持たれてからはここに配属されております」
「そうなんだ。改めてよろしくね?司書さん」
「はい。よろしくお願いします」
書類の決裁が終わり扉前の衛兵に挨拶したのち、私たちは階段を降りた。
下まで行くと周囲は石の壁で囲まれており、正面には小さな扉があった。
結界を通った際に王族の血縁者かそれに許可を与えられた者であれば、比較的容易に通過できることが分かった。
つまり夜な夜な不法侵入すればよかったのである
ぐぬぬ……
「いってらっしゃいませ。ピース様」
「すぐ戻るわ」
レティシアは扉から先には入れないためここからは私一人となる。
扉を開けると、部屋の中から異様な空気が漂ってきた。
古代魔道具には意思があるらしいけど、この分だとあまり歓迎されていないようだ。
だけどそんなことを気にしてるようじゃここに入った意味がない。
何かあったときように忘れずに結界を張りつつ目についた本を手に取る。
こりゃ凄い!魔術書ではなかったがこの本が書かれた時代の出来事を編纂された代物だ。
こういう本もあるとはまさにお宝の山だね~。
数冊読み進めていくうちに奥から発せられる気配が気になりだした。
歴史書や古代魔法の基本書を一言で言い表せば紅茶や蜂蜜のような甘い香りだが、それに紛れ禍々しい何かが手招きをしているような感覚だろうか。
こちらを一言で言い表すならそうだな、丸焦げの卵焼き片手に手を振る総督だろうか?
一瞬恐怖が私を支配したが、あれに比べればこの気配たちはただ禍々しいだけだ。
さて次はどの本を読もうか?なんて考えているうちに私の足はいつの間にか部屋の奥へ奥へとひとりでに進んでいく。
「あ、これにしよ」
どこまで行くのか知らないが、勝手に運んでくれるのならその間に本を読むことができる。
んーこれは誘惑系の魔術か?もしくは幻覚系の魔術か?どちらにしても強制力がかなり強い。
これで調印やら宣誓の儀を都合のいいように…なんて考えたが流石に対策くらいあるだろう。
どのくらい階段を下りただろうか?気が付いたら私は1冊の本の前に立っていた。
そろそろ頃合いだね。
誘惑系だろうが幻覚系だろうが対処法は簡単、上から別の魔法で上書きしてしまえばいいだけ。
同じことをやられても面白くないからちゃんと対策を施しておく。
さて体も自由になったことだしご開帳~
「イカレてんのか小娘!おめぇせっかく体の自由取り戻したんだから泣き喚いて逃げンのが筋だろうが!」
開いた本からそんな重々しい声が部屋中に響いた。
「え?別に危険はないこの状況なら知的好奇心優先でいいよね?」
「危険がないだと⁉ま、まぁ俺様の支配を逃れてなお逃げずに向かってくるやつの考えることだ、常識なんて通じないか。小娘、お前がよほど勇敢なのか、はてまたただの馬鹿かは知らんが楽しませてくれよ?おっと、名乗り忘れていたな。
俺様は魔人グリモワール=スフィア。よろしくな」
「よろしく。ん?君は魔前を名乗ってくれるんだ」
「興味の沸いた相手の名前を知らずに屠ったとしても面白くなかろう?それにしてもその言い草…小娘、俺様以外にも魔人に会ったことがあるのか?」
「うん。シャングリラとかいうやつに会ったね」
「知らん名だな。そいつは何か言ってたか?今の偉大の魔人の感性を知っておきたくてな」
「そっか。等級がどうとか魔人は力で格を決めるとか。自分は名乗っといて兄さんの名前は聞く価値がないからと、聞かなかったりとかかな?」
「今の魔人って常識ないんか?」
「あいつにはなかったね…」
「そうか。大変だったな」
「なぐさめんな!」
「はっはっは!では決闘といこう。そうだお前に失いたくないものはあるか?」
「え、なんでそんなこと聞くん?」
「これはお互いの命運をかけた死闘ではない。どちらが上に立つかの決闘だからな。ならばそういうことは確認しておくべきだろう?」
「なるほどね~騎士道精神的な?ならこの国とお城と国民かな~?」
「多いな。いや、お前は王族の人間かなら少ないくらいいか」
「ならば決闘を始めよう!」
「お前の都合で始めんな!」
えーいままよ!
そんなこんなでタイマンが始まったがこいつ強かった。
「火球!」
「ふん!」
「風刃!」
「ふん!」
「水弾」
「ふん!」
「全部魔力弾で防ぐんじゃなくて他の技も見せなさいよ!」
「何をわけのわからないことを言っておる小娘?いちいち魔力を魔法に変換するなどロスしか生まんぞ?魔力弾として打ち出すのが最も効率的かつ最も破壊力があるのだ」
「あっそ!消し炭になれ原子核の炎!」
「ほう?黒き炎か懐かしいな…この時代にもあるのだな。しかし遅いな?これでは簡単に避けれるぞ」
「私のオリジナルよ!」
「そうか。ならばお前のそれは失われた魔法を現代に蘇らせたのだ!」
「核って古代の時代にあったの?」
「核とはなんだ?それは全てを燃やし尽くす黒き炎だろう?魔力を糧とする消えぬ炎それが黒き炎だ!」
(黒き炎ってのは魔力がある限り永遠に燃えるのか。
原子爆弾は簡単に言えばウランやプルトニウムといった元素に中性子を衝突させると、核分裂を引き起こしエネルギーを放出する。
これが連続して核分裂が起こることによって、放出されるエネルギーは巨大なものとなり、これを併記として利用したものだ。
私の原子核の炎はてっきりそれが黒炎として視認できているものだとばかり思っていたけどもしかして魔力を糧としている?
ならばそっちで理解した今なら威力も精度も上がっているはず!)
「原子核の炎いや、黒き炎!」
私の放った黒き炎は効果範囲も弾速も原子核の炎とは比べ物にならない威力と速さでスフィアに向かって飛んで行った。
やはり魔法とはイメージ、理解の世界なのだと再認識させられた。
「この短時間で己の認識のズレを修正したか。面白いぞ小娘!多少の手ほどきならしてやろう!」
魔人グリモワール=スフィアはより人らしい形を作り出していく。
青紫というべき肌に額に生えた二本の角、人など容易に切り裂くことが可能な鋭利な爪、コウモリのような翼に竜のような尾、屈強な上半身、山羊のような下半身は人ならざる姿は魔人と呼ぶにふさわしい。
湖で接敵したシャングリラなど可愛く見える圧倒的な強者の風格を遠慮なく私にぶつけてきた
簡単につぶれてくれるなよ?小娘
自分なら夜な夜な王立古代魔法魔道具保管室に侵入できると思って落胆していたピース様ですが、もちろんそんなわけはなく入ったという警報装置のような機能も備わっています。
危なかったですね~




