楽しいピクニック 湖編
魔物が出てきたら戦闘をこなしながら私たちは湖を目指している。
途中依頼を出した村に寄ったが魔獣が居なければ見晴らしもよくピクニックに適している土地らしい。
塩などは持ってきているため、道中で豚魔獣や熊魔獣を狩り焼く予定だ。
湖のほとりについた私たちは拠点の設営を始めた。
と言ってもテントを建てるのは近衛達だけど。
私が石に座って身体を休めながら設営風景を眺めていると、レティシアが湯気の立つティーカップを差し出してきた。
「どうぞ、ピース様、バッカロール殿下」
「ありがとう」
「君の入れる紅茶はどこでもおいしいね」
「私のメイドをナチュラルに口説くなバカにぃ」
そんな軽口を言い合いながら二人して『ふーふー』と息を吹きかけて紅茶を冷まし、ちびちびと飲んだ。
「「うまい」」
そんな私たちをよそに近衛たちは半分はテントを設営し、もう半分は周囲の警戒やかまどの設置などを手分けして済ませていく。
手際が非常によく好印象だ。
目の前の光景を懐かしんで感傷に浸っているといつの間にか目の前には夕食が準備されていた。
持ち込んだ塩や果実タレで味付けされた肉たちを堪能しながらふと『人が魔力に当てられて突然変異したら魔人になるのだろうか?』とういう疑問が頭をよぎったが瞬時に隅にやる。
私は何を考えているのやら…
そうこうしていると周辺の調査を終えた組が狩った獲物が追加されてた。
「アルベルト様、獲物を獲って参りました!」
「私もです!」
「私たちは鹿を!」
兎に蛇、鳥に魚、鹿や猪までである。
その大漁ぶりにバカにぃは能天気にふるまいながらも内心驚いているのを隠せていない。
「こりゃあまた随分捕まえたもんだ。大して時間も経っていないのにどうしたんだ?この森は獲物であふれているのか?」
「その通りです!バッカロール殿下、この森とんでもなく沢山の動物がいるんです! しかもどれもこれも警戒心が薄い。獲り放題ですよ! あとで狩りなどしてはいかがでしょう?」
近衛たちは興奮した様子で語っている。
まぁあれだけ獲れれば楽しいだろうな。
後で私も魚釣りがしたいものだ。
バカにぃは並べられた獲物を見て考えこんだままだ。
「……ふむ、この手の動物は村の貴重な資源だ。いくら簡単に獲れるからと言って、やりすぎるのはよくないだろう。俺たちは魔獣狩りに来たのだ。今日、食事が出来れば十分だろう。これ以上の狩りは不要だ。他の者たちにもよく言っておくように」
「は、はっ!」
バッカロールお兄さまにそう命令されて近衛たちは慌てて敬礼をした。
ちゃんとしているな~
感嘆の声が上がったのでそちらに目をやるとレティシアが獣を捌き、血を抜き、下処理をした肉を切って、煮て、焼いて、テーブルの上に並べていく。
その手際の良さにレティシアは近衛たちから拍手喝采を受けていたが
「ピース様のお世話がありますので」
と一刀両断して私の後ろに控え給仕を始めた。
ぶれなくて安心である。
楽しいBBQは終わり近衛たちが寝ずの番を決めるゲームで盛り上がっている最中にバッカロールお兄さまの方を見ればまだ考え込んでいる様子。
「どしたの?」
「妙だと思ってさ。やけに動物が獲れすぎている。鹿に魚に猪に、活動時期が合わないというか点でばらばらだ。にも関わらずこんなにあっさり獲れるのは、やはり何かおかしい」
「んー何かに追われて活動時期が早まった、もしくは休眠や子育てに入れていない?」
「そう考えるのが妥当だな」
私の質問にぽつぽつと答えながらバカにぃは顎に手を当て、考え込んでいる。
さながら探偵だな。
こちらの世界の動物の生態はあまりよくわからないが、言われてみればこの森には入った時から何か違和感を感じていた。
20人もいるのに犬魔獣が襲ってきたり、急に魔獣が湖に付近に出現したのには何かわけがあるのだろうか?
「ウオオオオオーーーン!!」
突如、魔獣の咆哮が響いた。
音の方を向くと、森の木々が倒れる様子が観測できた。
その光景から木々をなぎ倒してくるのが巨大な生き物だろうと推測できる。
「ま、魔獣だ!魔獣が出たぞ!」
寝ずの番のローテを決めていた近衛たちは慌てながらも武器を手に立ち上がり、魔獣を取り囲む。
相当の鍛錬を積んだのだろう。とてもいい連携だ。
しばらくすると巨大な狼が姿を現した。
分厚く黒い毛に、真紅の瞳。大きな口からは鋭い牙が覗いている。
そして、狼というにはあまりにも巨大な身体。
あれは確かベアウルフと呼ばれる魔獣だ。
狼は本来白かグレーの体毛をしているが、魔力により黒く染まり、肥大化した身体は熊と見紛うほど大きくなるため名づけられた。
野生の熊の体調は100〜150cm、熊魔獣でも150~200cmほどしかないがベアウルフは200~350cmにもなる巨体だ。
それに比例して体重も増えていく。
ベアウルフは熊だか狼だかよくわからない咆哮を上げながら突っ込んでくる。
それに対し近衛たちは剣を構え迎撃態勢に入った。
先頭の者は左右に散らばり攻撃する表面積が増えるような陣形を採用している。
「近衛達は手慣れてるね~」
「はい。練習がてら色々と仕込みましたから」
「近衛達だけで事足りそうだ」
なんて会話を横目に私は今の自分に何がどこまでできるかをシミュレーションしていく。
十数分かけて近衛達は離脱者を出すことなくベアウルフを討伐してみせた。
「無事、魔獣狩りは成功した! 皆のおかげだ、感謝する!」
「「「「おおおおーーーっ!」」」」
バッカロールお兄さまの言葉に、近衛たちが己の剣を高々と空に掲げ喚声の声を上げている。
気持ちのいい風を感じながら食べるご飯っておいしいですよね。




