十二+十三=混ぜるな危険
サロンを出た後、バッカロールお兄様に飛び入りで夕食パーティに参加しないか?と誘われた。
主催は自分だから何の問題も無いし、私が来て嫌がる人はいないらしい。
暇を持て余しているのとバッカロールお兄様からのお誘いということで出てみることにした。
レティシアがいない間に身の回りの世話をしているメイドさんに今日はこの後パーティに行くと伝えると手際よくドレスの用意が終わりそのまま馬車に乗って会場に向かう。
以前市場に散策に行った際に仕立てたドレスはまだ完成していないので別口からプレゼントされたものを着ていった。
パーティはバッカロールお兄様の自宅で行われた。
なんだかんだと面倒な演目が終わり立食パーティへと移行した。
といっても大半はグラス片手にお世辞だらけの会話を楽しそうに演じながら気になったものを摘まむ程度だ。
バッカロールお兄様の思惑がいまいちよくわからないがまぁ昼間とはまた違う情報が手にはいいたことはいいことだ。
そうこうしているとパーティーはお開きとなった。
10歳の年端も行かない少女を夜1の刻(18時)から夜4の刻(21時)までずっと立ちっぱなしのパーティに誘った兄は図々しくも私を呼び止めた。
「残業代でも請求してやろうか?コノヤロウ」
「ん?どうしだい?ピース何か言ったか?」
「イイエナニモ」
「そうか。パーティは楽しかったか?」
「イイエマッタク」
「そうだろう。あれは相手する価値がないやつらを集めたパーティだからな」
「なんでそんなとこに私を誘ったんですか…」
「もうすぐお前の誕生パーティだろう?適当に相手できるやつらの顔を覚えといたほうがいいと思ってさ」
「それ私が相手の顔を覚えてる前提の話じゃん。もう誰一人として覚えてないよ」
「いっけね忘れてた。お前はどうでもいいやつらのことは脳からシャットアウトする派だったな」
「だって覚えとく価値ないんだもん」
「あいつらにも使い道があるというのに…」
「使う人が勝手に使えばいいと思いまーす」
「それはそうだ」
「で?早く本題に入ろうよ?私そろそろ寝る時間なんだけど?」
「そう焦るなよ?だが妹からせがまれてしまったら致しかたあるまい」
「せがんでねぇし」
「本題だがお父様から魔獣の討伐を頼まれな。内政向きの私に話を回さなくてもとも思ったが来たものは仕方ないやるだけだ」
「で?」
「お前にもついてきてほしい」
「謹慎中なんで無理でーす」
「明日にでも解けるさ。それで?来てくれるのか?」
「乗った」
「では明日会おう」
「一人で帰れと?」
「もう心配するような歳でもないだろう?」
「ウルメリアお兄さまは馬車とメイドさんを付けてくれたよ?」
「相変わらずの過保護っぷりだな」
「薄情な兄よりは高感度高いけどね」
「明日は頼んだぞ」
「任されましたよー」
この兄が最初に私を頼ったのは私が2~3歳のころに近衛の訓練を見学したすぐ後のことだっただろうか?
今のこいつが18いやもう19か?だから10歳の時だ。
なんでも川の氾濫を鎮めるにはどうしたらいいか?とかそんなんだったか?
この世界は私のいた世界でいう中世の区分だったから人柱なんてのがまかり通っているわけだ。
そう言ってやってもよかったがその時の私は何を思ったのか堤の作り方を教えていた。
と言ってもうろ覚えだったがなんとか形になっている説明だったはずだ。
かえって2~3歳の子どもが必死になって考えた案と受け取られたのかな?
とか思っていた私だが数日後文官の世間話を聞いた私は驚いた。
なんでもバッカロールお兄様が珍しく父さんからの課題を完璧にクリアしたという。
そう、この兄は私の案をそのまま父さんに伝えたのだ。
後日聞いてみるとこの兄はぶっちゃけたのだ。
今回の課題は人命が掛かっていたから被害は最小限に抑えられ、費用対効果は最大限得られる人に意見を求めただけだと。
それからこの兄と私用で話す時はバカにぃ呼びをしているのだが本人はそれが気に入っているらしく悔しい。
それすらこの兄の術中にはまっていそうだが…
準備を終えて翌日、私たちは魔獣狩りに向かう事にした。
バッカロールお兄さま率いる近衛たちが20人ほど馬に乗り、周りを固め、各々私が付与した武器を持っている。
どうやら私が魔獣狩りに行くことを聞いたウルメリアお兄さまから予備の剣を借りたらしい。
あのシスコンめが。
彼らに護衛されるように、ウルメリアお兄さまと私は馬車に乗って沿道の人々に手を振っていると、うら若き乙女たちがバッカロールお兄さまを見て黄色い声を上げている。
こいつ顔はいいからこの手の女を引っかけるのがうまいのだ。
「なにかな?」
「モテモテだなぁおい」
「周りが敵だらけよりはいいことじゃないか?」
「ま、世の女性たちがキャーキャー言うのも無理ないんじゃない?」
「すべてのって言ってくれないのか?」
「私はそんなこと思わんな」
そんな軽口をたたきながらも私たちは王子様スマイルを振りまくのを忘れない。
ちなみに魔獣というのは魔物とは異なり『動物が魔力に当てられて突然変異した生き物』だ。
例えば牛が魔獣になると牛魔獣となる。
今回はレティシアもいる。
「そういえばレティシアは魔獣って見た事ある?」
「えぇ、魔獣狩りは何度もしました。一人で狩るのもいいですが、訓練がてらに騎士団の者たちで追い立てるのですが、すごく楽しいですよ。魔物とは異なる挙動をするのできっとピース様も気にいると思います」
「ん?うん、楽しみ!」
何か物騒なことが聞こえた気がしたが気のせいだろう。
「ところであの小さい子は誰かしら?」
「おめぇさん知らねぇのか?ありゃピース王女殿下だぞ?」
「あの方が?」
「おうよ」
「訪れた商会の勢いはうなぎ登りだって聞いたわよ?」
「うちにも来てくれないかしら?」
「でも私はバッカロール殿下に来てほしいわ~」
「それはそうよ~」
「はぁ。不敬罪でとっ捕まっても知らんぞ」
なんて会話を聞き流しながら私たちは王都を出て森へと入った。
魔獣の出た場所は森の奥にある小さな村が昔から水源として重宝していた巨大な湖だ。
ある日突然魔獣が現れるようになったらしい。
困った村人たちは冒険者ギルドに討伐を依頼したが、報酬も安い上に辺境まで行って魔獣を退治するなんて依頼をそうなんパーティもやりたがるわけもなく、受けたパーティが戻らなかった時点でギルドは領主に丸投げした。
そうなると公共事業扱いとなり、その土地を任された貴族の仕事となる。
しかし領軍の手に負えなかったのか採算が取れなかったのか定かではないが、そのまま国に上がってきた。
この場合国王陛下から貸し与えられた土地をろくに守れなかったためそれ相応のペナルティが課される。
ちなみに、魔物狩りや魔獣狩りは兵の実戦訓練や貴族の娯楽などを兼ねている。
領軍をはるかに上回るスペックの国王軍、ましてや王子直轄の近衛はそれほど優秀でなければなれないのだ。
隊列が止まり、近衛達が前衛と後衛に散開し草むらを包囲した。
索敵魔法を使った感じこれは犬魔獣だったか?
手先が器用で武器を扱うのが得意なやつらだ。
王宮を抜け出したときに私の体格に合う武器を調達するまでのリセマラに小鬼と共にお世話になった。
あ、今回はちゃんと私も帯剣してるよ!
犬魔獣達の手に握られているのは鋼の剣である。
「魔物や魔獣に倒された冒険者から奪い取ったのだろうか?」
「くっ、こいつらいい武器をもってやがるな……」
「あぁ、冒険者たちから奪ったのだろう。これは手こずりそうだ」
どうやら近衛たちも同意見らしい。
「「「「オオオーーーン!」」」」
各々好き勝手に不揃いな遠吠えを上げながら襲いかかってくる犬魔獣たちを近衛たちは剣を抜き、迎え撃つ。
犬魔獣の振り下ろす鋼の剣が、受けようとした近衛の鋼の剣と接触した。
犬魔獣の持っていた鋼の剣が抵抗なくへし折れ、近衛の剣は勢いのままに犬魔獣の胴を捉える。
そのままざくりと、コボルトの身体を切り裂いた。
「グアアアーーー!?」
鮮血が吹き出て犬魔獣は倒れる。
他の場所でも私の付与した鋼の剣が
「「ゴキゴキ」」
と犬魔獣たちの武器をへし折っていく。
「な、なんだこの切れ味は……?」
「これがピース様が付与なされた剣の切れ味?」
「近衛の標準装備にしてほしい!」
「確かに!これはステータスになる!」
などと近衛達は思い思いの感想を零している。
最後のやつ、やってもいいがきっちり対価はもらうぞ?
動物と魔獣の区分ですがこの世界ではぶっちゃけ曖昧です。
動物の例は兎、鶏、豚、牛、熊、犬、羊、魚、(人)
魔獣の例は一角兎、赤鶏、オーク、ミノタウロス、オーガ、コボルト、バフォメット(諸説あり)、シーサーペント、怪魚、(ゴブリン)
という感じで人間が勝手に自分たちに有益か、危害を加えるかで区分しただけのものです。




