レティシア式スパルタ王女教育 観察眼編ーレティシア視点ー
訓練も5ヶ月目に突入しそろそろピース様が飽きられる時期だと思っていたがそんな素振りはなく今日も訓練は始まった。
ストレッチをしながらかねてよりの気分転換企画を行うか悩んでいる。
そうだ。
小細工を仕掛けてピース様がそれに引っかかったら今日は市場に出よう。
ばっちり引かかった。それはもう完璧に。
ということで今回行うのは一種の宝探しだ。
ピース様の買いたいお宝となると魔術書しか買われないことは明白ですのでお宝を見つけたら魔術書を1冊買うというルールを採用した。
王都の市場には真贋が入り乱れている。
完全な偽物もあるが名の通った名工の作品だが全盛期は過ぎている物だったり、無名だが才能の原石の作品だったりという感じに観察眼を養うにはうってつけの場所だ。
様々な品に触れた時間、表に出さない商品を見せてもらうための交渉やお宝に巡り合うための運など今日という時間は確実に宝となるため実質1冊の購入は確定している。
我ながら優しすぎるかとも思うが初体験で頑張るのだ、これくらい許容範囲無いだろうと自分を納得させる。
今回少ないとはいえ危険がある王都市場に行くため取れる限り最大限の対策を行った。こういうところで手を抜くやつが足元をすくわれるのだ。
その1
ピース様が出かけられるという情報が洩れることを覚悟して警備兵団に話を通しピース様の近くで目を光らせてもう約束を取り付けた。
警備兵団が協力的で非番の職員が出てきて臨時の詰め所を配置してくれることとなったのは嬉しい誤算だった。
彼らには後で礼をすべきだろう。美味い酒とつまみでどうだろうか?
その2
顔なじみの騎士団たちのもとへ足を運び事情を説明。
結果休暇中の者は私服でピース様が店に入られる前から店内で一般客を装い待機。
手の空いてる近衛兵のうち動かせるものを巡回警備任務として今回のルート上に違和感の無いように配置する手筈となった。
こいつらへの礼も美味い酒とつまみでいいだろう。
その3
お誕生日の贈り物や日々何かと理由をつけてピース様とお近づきになりたい者たちから贈られてくる謝礼などの中から手付金用にいくらか引き出しておく。
いくら専属メイドとはいえただのメイドが王女殿下の私財を動かそうとすると面倒な手続きがいる。
これはないとは思うがピース様が無差別にあれもこれもと買われた際に私の手持ちで足る自信がなかったためだ。
まずピース様が立ち寄られたのは中堅の商会でした。
リサーチによりますとここは一応王宮とも取引がありますがあってないようなものです。
それを王宮御用達などと自慢して回る程度のしれたやつらです。
てっきりピース様は来店なさると表の客釣り用の高級品エリアに行かれると思っていたのですが、予想に反して行かれたのは均一エリアでした。
なるほど掘り出し物を見つけ場合それは確かにお宝ですね。これは一本取られました。
ピース様はお宝探しに夢中ですが来店なされた時から店は大慌てな様子。
突然の来店とはいえ王族であるピース様が来たのだ。
今いる客には速やかに退店してもらい貸し切りで相手すべきだろう。
万が一商談中に店内で乱闘騒ぎでも起きようものなら物理的に首が飛ぶことは間違いがない。
ピース様がいくら安全なVIPのための部屋に居たとしても少しでも王女殿下を危険に晒した結果は変わらない。
ま、今いる客全員警備兵団か騎士団の人間なのですが。
10分ほどで全員が速やかに退店しお宝探しに夢中になられているピース様に店主が声をかけたが誘拐犯に間違われたようだ。
あの様な声の掛け方では何の擁護もできないのだが。
こいつらが店内で始めた商談スタイルは今回のこの企画の趣旨から外れるものとなった。
ま、普段は相手にもされない王族相手に時間の許す限り様々な商品を出せる機会などこれから先無いかもしれないのだから必死にもなるか。
始めの商品は真珠のようだ。
見た瞬間ピース様は身を乗り出して「買った!」と食い気味に宣言された。
余程気に入られたのだろう。
おそらくこの店で1、2を争う値打ちのある品だ。
それをほんの数秒見ただけで即決されたのだから品物を運んできた店主はにやけたツラをしてやがった。
どうせ従業員たちには仕入れたものが売れたらボーナスを弾むとか言っているのだろう。
自分はピース様の気に入る品を提供できたぞ?お前たちはどうだ?
だとか思っているに違いない。全く汚らわしい。
2品目は絵だったがピース様は絵に興味を示されないので先ほどの真珠と同じ速度で「パス」と言われた。
運んできた男はボーナスを逃した悔しさからか顔を歪ませていた。
そんな顔をピース様の前でするな。
教育に悪影響が出るだろ。
3品目はガラス細工の天使らしいがこれも「こんな見た目じゃないでしょ」と言われてすぐに下げられました。
私も同感です。
天からの使いの天使は見たことはないですが、私の中の天使でしたら目の前に居ますのであっていますね。
今度名工に依頼してピース様の姿絵を描いてもらうのもいいかもしれません。
4品目はサファイアに金細工の施されたネックレスでした。
ん?これ説明ではいいように言っていますが売値の付かないクズを張り付けているだけですし目玉のブルーサファイアも厚みから推定しますとこれはもしや大きな宝石を縦に割ってそこに金細工を取り付けることでかさまししている?
おやおやこれは有罪ですね。
説明を聞かれてしばらく考え込んでおられたピース様が口を開かれました。
店主は商談成立かと浮かれていましたがそんなことはなく出てきたのは「偽物」という単語。
それを聞いた瞬間動揺を隠せずに店主の口から声が漏れました。
4品も見ると流石に紅茶が無くなったご様子。
それに気づけずに客から催促される始末。
中の下かと思っていましたがランクを下に修正しますか。
その後ピース様はおひとつも買われることなく店を後になさいました。
しかしここでアクシデント発生です。馬車に戻る際にピース様から
「宝探しって自分の足で歩いてなんぼよね?次のお店からは徒歩で移動することに決めたわ!問題ないわよね?」
と言われてしまいました。
私はこう返すしかありません。
「ここは王都ですので問題ないかと」
護衛の難易度が上がってしまいましたが致し方ありません。
次のお店へと向かいましょう。
掘り出し物が見つかるといいですね!ピース様!
レティシアさんのキャラクター像がとんでもない方向に舵を切り出した所で後半に続く!




