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プレハブ小屋事務所の室内にて。
オウイチロウ、ヨーゴ、サダヒメの3人と、リーレイとジェニファーが向かい合って座る。
「俺がこの街のリーダーを務めさせてもらっている、オウイチロウだ」
「小生はリーレイ、こっちはジェニファーだ」
「よろしくー」
簡単に自己紹介を終える。個人の情報よりも本題のほうが重要だと、この場にいる全員が考えているからだ。
「では単刀直入に言う……乱心したテクノストームの暴走を力ずくで止めるため、ピースガイを貸してほしい」
リーレイはそう言い放った。
「うん……詳しい説明を」
さすがに情報量が少なすぎて返答のしようがない。オウイチロウは素直に聞いた。
テクノストームというのはわかる。科学を使いこなす天才で、あらゆる気象現象を自在に操るヒーローのことだ。
「数週間前、テクノストーム含め小生ら3人は謎の金色の蛇に襲われたんだ」
「金色の……蛇……ね」
知っている言葉があったが、オウイチロウは聞くことに徹する。話の途中で余計な情報を加えれば、ややこしくなるからだ。
「その蛇は容易く撃破できたのだが、それ以来テクノストームがおかしくなったのだ」
「おかしくなったというのは、どのように?」
――ドパァ!!!!
「みなさぁぁぁぁぁん!!!!」
オウイチロウが具体的な話を聞こうとした時、突然出入り口の扉が開け放たれた。銃声かと思うほどに勢いよく開けたのはホノンであった。
室内にいた全員がギョッとしている様子を見てなのか、彼女はゲラゲラと笑う。
「ホノン!! 今は大事な話をしてい「うははハハハハハハははは! やぁやぁヨーゴさぁん!!」
やたらとテンションの高いホノンはヨーゴの怒りのこもった注意を遮り、大声で笑う。
「凄い気分が良い良い良い!! 王者の眼はこんなにも美しく、豌玲戟縺。縺後>縺?s縺ァ縺吶?!!」
「……おい今、なんて言ったんだ?」
ヨーゴを含めて誰も聞き取れなかった、地球上のどの言語とも違うと言い切れる違和感。
「縺ソ繧薙↑繧よー玲戟縺。繧医¥縺ェ繧翫∪縺励g縺?h縲√え繝√□縺代§繧?ク榊?蟷ウ縺ァ縺吶b繧薙?」
音と呼ぶにもおこがましい異物が、ホノンの口から吐き出される。聞くだけで頭痛が起きそうな不快感があった。
「縺セ縺壻ク?ココ縲√し繝?ヲ繝。縺輔s……」
「ひぃッ!?」
白目を剥いて、涎を垂らしながら、ホノンは近くにいたサダヒメに顔を向ける。
「繧「繝翫ち縺ォ繧ゅが繧ヲ繧ク繝」繝弱?繝翫さ讒倥?繝代Ρ繝シ繧貞?縺代※縺ゅ£縺セ縺吶h縺翫♀縺翫♀!!」
ホノンは両腕を突き出し、サダヒメのもとへと駆け寄った。
何を言っているかは分からないが、何をしようとしているかはすぐにわかった。
「嘘っ」
サダヒメは逃げようとするも、一瞬早く首を掴まれてしまう。
「やめっ!?」
「霑キ縺医k蟄千セ翫↓謨代>縺ョ謇九r!!!」
「やめろバカが!!」
仲間に危害を加えるならば、仲間であろうと許さない。ヨーゴは信念に基づき、拳を固める。
ガツンッ!!!
ヨーゴは思い切りホノンの後頭部を、地面に叩きつける勢いで殴りつける。
「が……あっ……」
強烈な一撃をまともに食らったホノンはサダヒメの足元に倒れ伏し……動かなくなった。気絶したのである。さすがに死ぬことのないように、ヨーゴは加減したのだ。
「大丈夫か、サダヒメ」
襲われたサダヒメにヨーゴは駆け寄り、背中を優しくさする。
「大丈夫……です」
そう答えてはいるが、サダヒメの表情は怯えていた。ヨーゴは近くの椅子を引き寄せて彼女を座らせた。
「落ち着くまで、ちょっと休んでろ」
「……ありがとうございます、ヨーゴさん」
「……最初はこんなフウにテクノストームも、意味不明な言語を喚き散らして狂ったのだ」
混乱ゆえの静寂のなか、座ったままのリーレイがゆっくりと口を開く。
「次第にちゃんとした言葉を取り戻したが、それはそれで言うことがおかしかった」
「人類の一掃を……命を捧げよう……とか、危ないカルト教信者みたいなことばっか言ってたのよね」
「……なるほど」
オウイチロウは席に座り直し、リーレイとジェニファーとの話を再開させようとする。
「話を続ける前に……ヨーゴ、ホノンをシールのところへ連れてってやれ」
「了解」
オウイチロウに命じられたヨーゴは倒れ伏すホノンを抱え上げ、米俵のように担ぐ。
そしてそのままプレハブ小屋を出て行った。
小屋に残ったのはオウイチロウにサダヒメ……そしてリーレイとジェニファーだ。
「話の途中ですまない……それで、どうなったんだ?」
「今の女の子のように、小生らに襲いかかったのだ……彼女のように首を絞めにかかるとかではなく、テクノストームとしての能力の全てを使ってね」
「それは……」
「抵抗して何とか逃げ延び、ここに辿り着いた次第だ」
ヒーロー同士の激突という光景を想像することができず、オウイチロウは言葉を続けられない。
ただ、リーレイの苦しそうな言い回しからして、壮絶なことが起きていたのだろうというのはわかった。
「小生らとしてはテクノストームを……彼女を元に戻したいと思っている」
「長い付き合いの戦友なのよね」
リーレイだけでなく、ジェニファーも真剣な眼差しでオウイチロウを見つめる。
「戦友というのは理解しているつもりだ、だが元に戻すというのは……」
「今の狂乱劇から鑑みるに、貴殿らは小生らと同様に金色の蛇に遭遇したのではないか?」
「……察しがいいな」
いずれ言おうと思っていたこと。隠していたわけではない……しかし妙な罪悪感がオウイチロウの中で生まれた。さっさと言えばよかったとちょっぴり後悔する。
「つい先日、俺達も金色の蛇……ジャノメと遭遇している」
「ジャノメというのか、あの蛇は」
怪訝な表情を浮かべるリーレイに、オウイチロウはどう話を続ければいいか、少し迷ってしまう。良好な関係を築くためには、疑惑の念は排除せねばならない。
「戦時中、俺のいた部隊と遭遇して、同行していた学者にそう命名された……経緯は話せば長くなるが」
嘘偽りはない、誤魔化しもない。正直に話すことは疑惑を解消するものだ。
リーレイはスッキリした表情をみせた。
「実に興味深い話だが、あとでゆっくりと聞かせてもらおう……本題に戻ってくれ」
「……ジャノメという蛇についてだが、実はまだ何もわかっていない。可能な限り解剖して分析もしたんだが、わからないことが増えた」
全て事実。できなかったことも包み隠さず話す。情報共有に隠し事はNGである。
「それで解剖に携わっていたのが、さっき乱心してた女だ」
「彼女一人で解剖していたのか?」
「ドクターシールも一緒にやった。ここに来る前に会って話したが、今のところ彼に異常は見られな」
――ドパァン!!
「失礼します!!」
ヨーゴが鬼気迫った表情で、扉を勢いよく開ける。
「扉が壊れるだろ……何事だ」
「ホノンと同じくドクターシールが乱心しました! とりあえず後頭部を殴って気絶させたんですが……」
「また殴ったのか」
「包丁を持っていたので、市民に危害を加える前にと思いまして」
「……それならまぁ、仕方がないか」
守るべき人々に怪我をさせるのは御法度。ヨーゴの判断は暴力的だが正しいと言える。
諦めたような顔をして、オウイチロウは立ち上がる。
「申し訳ないが緊急の用件が入った、話し合いは後にしても?」
「話し合いはそれで構わない……用件については、小生も同行させてくれるかな?」
テクノストームと同様の謎現象が、ここでも起きている。気にならないはずがない。
その気持ちを理解したオウイチロウは「もちろん構いません」と同行を許可した。
「ヨーゴ、シールのところに案内をしろ」
「了解しました」
「サダヒメは休憩していろ、怖かったろうからな」
「……ありがとうございます」
そうしてオウイチロウにヨーゴ、リーレイとジェニファーの4人はプレハブ小屋から出て行った。
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