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話が決まると、オウイチロウは退室した。
世間の人々を熱狂の渦に巻き込んだヒーロー、ボルケーノウィッチの遺言に興味はあったが、2人のために我慢する。それにカガヤが言った魔術的な罰則の話を覚えていたからでもあった。
さほど広くもない、一室だけのプレハブ小屋。 中には2人だけ。対面するように座っていた。
「……じゃあさっそく、術を発動しますね」
「……わかった」
「一応言っときますが、録音みたいなものであって降霊術ではないので、会話とかはできません」
「わかってるさ、やってくれ」
ユウレンは覚悟を決めた。正直なところ今も過去を振り返りたくはないが、言ってしまったからには逃げられない。ここで「やっぱやめる」などと言い出しては情けないどころではないだろう。
「『幸福に満ちる夜』『意味もなくただ過ぎる』『日差しが高く差すまで』……『黄泉再臨』」
詠唱し終えると、カガヤの身体がブルッと一度強く震え、さらに目が白く濁った。
そして
「『ユウレン、鈍いあんたに一つだけ伝えたいことがある』」
明らかにカガヤの声ではない、女性の声が彼の口から発せられる。
その声にユウレンは聞き覚えがある。昔よく聞いた、女の声。ミレア・カーノインの声だ。
記録されたその声で何を言われるのか、ユウレンは身構えた。
恨み節、怨念の言葉か……それとも未知の怪獣の情報だったりするのか? まさかジオレクスの弱点とかか? ……などなど、様々な憶測がユウレンの脳内を駆け巡る。
しかし紡がれた言葉は、シンプルなひと言。
「『愛してる』」
「……っ!?」
告白。
まさかの言葉にユウレンが仰天しているうちに、カガヤの様子がもとに戻る。
「……これが師匠が、死に際にボクに刻んだメッセージです」
術の発動中、身体……口は勝手に動いたが、意識はあった。だから聞いていた。
まさかこんなに短く、シンプルだとは思いもよらず、カガヤも困惑してしまう。
しばらく沈黙の時間が流れる。
5分ほど経って、ようやくユウレンが口を開いた。
「……馬鹿だな、僕は」
涙をこらえながら、呟く。
昔の記憶が続々と蘇ってきていた。楽しかったこと、辛かったこと、嬉しかったこと……様々な思い出が、ユウレンの心になだれ込む。
「本当に馬鹿だよなぁ、僕ってヤツは……ミレアの思いに気付けなかっただなんて」
こらえていた涙が、床にこぼれ落ちる。いくつもいくつも、ポタポタと落ちていく。止まる気配はない。
「もっとミレアのことを、ちゃんと見ていればよかった……なのに僕は……!!」
ユウレンはテーブルをバンッと叩く。悔しさが思わずそうさせた。
そんな彼の様子を見ていたカガヤが、ゆっくりと話しだした。
「……今際の際でも師匠は、すごく満足そうな顔をしてましたよ」
辛い記憶。しかしユウレンのために思い出し、話さねばならない。
「今のひと言以外に、悔いはなかったんだと思います……ボクをメッセンジャーにした後、安らかに死にましたから……」
「だから……どうだって言うんだい?」
「そうやって後悔するのは、違うと思います……師匠だって望んじゃいないはずです」
「だったら……どうしろって言うんだ」
カガヤは拳を握りしめ、ユウレンの眼を見る。
「今からでも遅くはありません。師匠の愛に応えてあげてください」
「愛に応えるって……どうやって」
困惑するユウレンに、カガヤは畳み掛ける。
「無論ですがもう直接会うことは叶いません……だから、あの世から見られるように、行動で応えてあげてください」
ボルケーノウィッチ……ミレア師匠もきっとそう望んでいる。望んでいなければ、『愛していたよ』などと残して逝かない。
カガヤが思うに、そういうヒトだった。
「……なるほど、それしかないかもな」
奇しくもユウレンも同じ認識でいた。
いつの間にか、彼の涙は止まっていた。
「ありがとうカガヤくん……ミレアの遺言を伝えてくれて」
「伝えられてよかったです……こちらこそありがとうございます」
ユウレンとカガヤは立ち上がり、自然と握手をしていた。
同じヒトと長年交流していたがゆえに、通づるものがあったのかもしれない。
「君の言う通り行動で示すことにする……ミレアのためにも、バリケードタウンの皆のためにも」
「そうしてくれるとありがたいです」
「これからはちゃんと守るよ、ボルケーノウィッチのように気高く、人類の希望のヒーローとして」
「頑張ってください、きっと師匠も応援してくれます」
そんな会話をしながら、2人はプレハブ小屋を出て行った。
外にはオウイチロウにヨーゴとホノン、そしてサダヒメがいた。
「もしかして……遺言の話を聞きたくて待ってたんですか?」
カガヤのその言葉に、4人とも目を背ける。
図星だとわかったカガヤは、いたずらな笑みを浮かべた。
「絶対に秘密です……ね、ユウレンさん」
第一章、終幕。
1ヶ月後くらいに次章開幕
怪獣たちは止まらない……進化する災害に備えましょう
(もっともっと怪獣出してデカく暴れさせます)




