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怪獣同士の戦いにヨーイドンのゴングはない。試合ではなく殺し合い。生存競争なのだから。
――ヴオオオオオオオオオ!!
――ヅドガァン!!!
「VARAAAAAAAAAAAAAA!?」
青い熱光線が、朝焼けの空を焼いた。
その光線はグルバラムの腹部に直撃。あまりの衝撃と熱量に、グルバラムは倒れてしまう。
熱光線を放った主はジオレクス。
1キロメートルという有効射程圏内に敵が入った瞬間に、口から発射したのだ。
長時間の照射はできないが、瞬間的な火力は核爆発をも凌ぐと言われている。
「あっつぁぇええええ!? めっちゃめちゃヤバッヤバいですよヨーゴさん!!」
「静かにしてろ!! 熱いのは我慢しろ!!」
2人は放たれた光線の真下にいた。
残った住民を探し当てて、北口に走らせていたら……脱出する機会を逃したのだ。
そのかいもあって住民はほとんど逃がすことに成功した……死者は出ていたが、もはや仕方がないと2人は割り切った。
悲しむ暇がなかったからだ。
――ヴォオオオオオオオ!!
熱光線が空を裂く。
――ズダァァァァ!!
ソレは再生しかけているグルバラムの腹部を深く抉った。
「VARAAAAAAAAAA!?」
熱により再生が遅れているところに、さらなる追撃を受けたことでグルバラムは悲鳴を上げる。
「んぎゃあああああああああああああ!! あっつぁぁぁぁアァァ!!」
猛烈な熱気に当てられて、ホノンは死を予感した。恐怖の叫びだ。
「もう無理!! 死んじゃうってこんなの!!」
「うるさいな黙ってろ!! こっちは考えてるんだ!!」
2人はひたすら逃げ惑う。まっすぐ走っていられないほど必死であった。
ヨーゴ一人なら鬼装して(装甲に多少のダメージは残っているが)脱出は可能だろう。
しかしホノンを連れて行くとなると難易度が跳ね上がる。お姫様抱っこでなどで行くにしても、重さで速度が落ちるからだ。
あまりにリスクの大きい賭け。2人同時に死んでしまう可能性も高い。
だが仲間ゆえ見殺しにはできない。それだけは決してしてはいけない。バリケードタウンの住民を守ると決めている……ホノンもそうだ。
なのでヨーゴは必死に頭を回す。2人で生き延びるための戦略を練っている。
「そうだ……!」
ふと思いつく……というよりも思い出した。
この状況を打開できる者がいることを。
「ジンハだ……!」
ピースガイは使い物にならない。ただ生きているだけの男には頼れない。
だからジンハだ。連れていけないとオウイチロウが語ったのを思い出したのだ。
鬼のように強い彼女に援護してもらいながら、このバリケードタウンから脱出する。それが最良だとヨーゴは確信した……というか切羽詰まり過ぎて、他に良い案を思いつける気がしない。
「ホノン! ジンハのとこに行くぞ!」
「それはめっちゃ良い案かもです! 守ってもらうんですよね!」
逃げることに精一杯なホノンは、ほとんど思考停止でヨーゴの案に賛同する。
ジンハを囚えている場所は監視塔。そこにある地下室だ。
幸いなことに距離は遠くない。ヨーゴとホノンは急いで向かう。
本当に、急がねばならない。
何故ならば
「VARAAAAAMAAAAAA!!」
熱光線を受けていたグルバラムが立ち上がり、ジオレクスに向かって突進していったからだ。
それに応じるようにジオレクスも突進する。
――ドゴォン!!
激しくぶつかり、がっぷり四つで組み合う。グルバラムの焼けた傷はすでに完治している。つまり、両者ともにコンディションはバッチリな状態である。
「びゃああああああ怖いィィィィィ!!」
「落ち着けホノン!!」
もはやバリケードタウンは二大怪獣のバトルスタジアム。地獄というのも生温いこの環境では矮小で脆弱な人間なんぞ生きていけない。
「行くぞ!」
「はぁぁぁアい!!」
運良くまだ形を保っていた監視塔にたどり着いた2人は、出入り口に飛び込んで入った。
この場所ならばとりあえず吹っ飛んでくる瓦礫に怯えなくてもいい。それだけで少しホッとしてしまう。死線を潜り抜けすぎたせいで感覚がバグっているのだ。
だがまだ油断はできない。
外で発生している凄まじい震動が、監視塔全体を揺さぶっている。いつ倒壊してもおかしくないだろう。
「急ぐぞ」
「もちろん!」
2人は地下室へと通じるハッチを開き、そこにある階段を急ぎ降りていく。ホノンは揺れで転げ落ちそうになるが、なんとか堪えた。
そして到達する地下室。部屋は四方をタイルで覆われたここただ一つ。
天井にぶら下がる照明がチカチカと光り、震動で埃が舞っていた。
そんな部屋の隅で、手錠をかけられて呆然と
立っている和装の女性が一人。
ジンハである。
「しまった、手錠の鍵がないぞ……!」
「えぇ! どーすんですか、鍵はあのプレハブ小屋ですし外に行かなきゃいけないでしょ!!」
「まぁ今の状態でもジンハなら、オレ達の護衛くらいできるだろ……とりあえず鍵のとこまで手錠付きか」
ヨーゴらは知らなかった。
しかし察して気付くべきだった。オウイチロウがどうして、ピースガイはともかく、ジンハまでも置いていったのかを。
ジンハが正気を取り戻しかけているということを、察するべきだったのだ。
「よし、立つんだジンハ」
「誰に命令しているんだ、ヨーゴ」
手錠の鎖が割れる音……。
――瞬間、ヨーゴは「鬼装天骸!!」と叫びながら、ホノンに覆いかぶさった。
頭部には赤い兜。顔には赤鬼を模した面頬。
赤い甲冑を身体に纏い、肌は一切見えず。
腰には大小の刀を備え、その姿はまさに絵巻物語の鎧武者姿に、僅か1ミリ秒で変身が完了する。
生死を分けることになった、この一瞬の鬼装プロセスをおさらいしよう。
ヨーゴの放った「鬼装天骸」という言葉は鬼装開始のコマンドワード。
叫んだことで数珠ネックレスを構成するアダヴィニウム複合ナノメタルが起動。瞬時に粒子化しヨーゴの身を包む。それらのナノメタルは瞬時に鎧武者甲冑スーツとして増殖・投射・整形。鬼装を完了させたのである。
名は天骸霊装『鬼牙』。
魔術と科学を融合して作られたのが、この対怪獣用戦闘スーツ。
――シュパァン
「ぐあッ!?」
それは鬼装完了した直後に破壊され、鬼装は強制解除となった。
自動修復が終わっていない背中部分に、凄まじい衝撃を受けて損傷したためである。
「ヨーゴさん!?」
一瞬の出来事に頭が追いつかないホノンは、しゃがんで倒れ込むカガヤを叩いて揺する。
「うぅ……手を貸してくれホノン」
うめき声を上げながら、何とか立ち上がろうとするヨーゴに、ホノンは迷わず手を貸した。そして引っ張り上げるように立ち上がらせる。
「久しぶりだな、ヨーゴにホノン」
抑揚なく淡々と話すジンハは、常日頃から手刀に足刀を意識している。一挙手一投足が全て斬撃に通ずるように、少しの動きも斬撃となるようにしているのだ。
「んん? ずいぶんと揺れるじゃあないか、外の状況はどうなっているのだ?」
「……ジオレクスとグルバラムって宇宙怪獣が戦ってる」
「ほぉ……それはそれは」
心底楽しそうにジンハは笑みを浮かべる。
あまりに場違いな態度にヨーゴもホノンもイラッとするが、それは表に出さない。
交渉の場に、怒りの感情を持ち込むべきではないと知っているからだ。
「そんなことよりも、オレ達がこの街を脱出するのを手伝ってくれないか?」
「悪いが断る、吾輩は粗奴らと戦わせてもらうからな」
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