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「いやいやいや撃って良かったんですかッ!? あそこら辺にはヨーゴさんがまだいますよね!?」
「そのヨーゴさんがヒトっぽい何かに首を絞められているのを見ました……今のは助けるため仕方がなくです!」
「巻き込まれちゃうか落ちて死んじゃうでしょう!」
「いーや、鬼牙の耐久性なら平気なはずです!」
悪びれるどころかホノンは自信満々に胸を張って言ってのける。
その態度にカガヤは言葉を失った。
「黙ってないで次! 対戦車ライフルをお願いします!」
「えっ、ロケットランチャーで追撃じゃないんですかッ?」
「弾の残り一発しかないですし、ライフルでも充分追撃に使えますし、嫌な予感を拭うのにも使えます!」
「嫌な予感ってなんなんです!?」
「予感なんか言語化できませんよ! とにかくライフルをください!」
ホノンの気迫に押され、カガヤは魔法陣から対戦車ライフルを取り出してホノンに渡した。
一方その頃……。
「うおおおおおおおおおお!?」
ヒュルルル――ズドォン!!
「――ぐはぁ!?」
結局、ヨーゴは何も抵抗できず地面に落ちた。
しかし死にはしていない。鬼牙の装甲は命を守ってくれる……相応の痛みは受けるが。
「クソ……!」
ヨーゴの言葉と同時に自動で鬼装解除され、鬼牙はいつもの数珠ネックレスへと戻った。
鬼牙には過度なダメージを受けると、完全破壊を回避するため強制鬼装解除するという、使用者にはあまり優しくないシステムがある。
ちなみに大小の刀も粒子となって数珠ネックレスへと戻ってくる仕組み。そのおかげで無くすことはほぼない。
「助かったのか……わからんな……?」
恐らくホノンが撃ち込んだのだろうとヨーゴは思っていた。彼女は何気に気が利くヤツだと知っているからだ。
しかし、危機一髪の状況でもあったし、千載一遇のチャンスでもあった……叱責すべきか感謝すべきか悩ましいところである。
「さて……」
とりあえず、まずは2人と合流しようと考える。鬼牙は強制解除すると自動修復機能が発動して1時間は使えなくなる……つまり今のヨーゴは丸腰で怪獣の足元にいるということ。
「VARAAAAAAMUU……」
怪獣はヨーゴを気に留めていないようだが、かなり危険な状況だ。
というわけで彼は逃げようときびすを返す。
「待て地球人」
振り向くと、目の前には先程の宇宙人が立っていた。
いるのは、拳の射程範囲内。
ならばと言わんばかりに、ヨーゴは反射的に
――ブゥン!
顔面めがけて殴りかかる。
しかしその拳は空振りとなった。宇宙人が一瞬にして1メートル後方にワープしたからだ。
「血の気が多いな地球人、野蛮な種族とは聞いていたがここまでとは」
ヨーゴのことを宇宙人は、心底不快そうに睨みつける。
「何者だオマエ」
ワープの原理はまるでわからない。しかしそれで狼狽えては侮られるに違いない。
それはヨーゴのプライドが許さないので、驚きは胸のうちに秘めておく。
相手が誰であろうと、舐められるのは我慢ならないのだ。
「さっき言わなかったか? 私はチルクスの民だ、貴様らの上位種である」
ふんぞり返ることもなく、当然のことと言わんばかりに淡々と述べる。
チルクス……そう聞いたヨーゴは即座に過去の出来事を思い出す。
「チルクスの民って、ジオレクスに宇宙船団を全滅させられたあのチルクス遊星人か」
「なんだ貴様、じょうい――ズダァァァァァン!!
上位種……そう言い終える前に、チルクスの民を名乗る宇宙人は真横から飛来した対戦車ライフルの弾丸に撃ち抜かれ、ガラスのように砕け散った。
「……気が利くな、ホノン」
彼女の射撃にヨーゴは少し怯む。
死体は何故か粉々に割れてしまい残っていないが、宇宙人といえど死んだだろうと一旦判断する。
正直なところ、もう少し話をして情報を引き出したいところだった。
しかしもうできなくなったらしいので、ヨーゴは当初の予定通り2人と合流することにした。
ヨーゴが全力疾走するちょっと前からの様子を、超人的視力で見ていたホノンはまたもガッツポーズを決めた。
「しゃああああ!! 宇宙人っぽいの撃破ぁ!」
「……よく見えますね、っていうかその銃でよく当てられますね!?」
対戦車ライフルは凄まじい威力に伴う反動によって、スコープは付けられない。
ならばどうやって今の超精密射撃を繰り出したのか?
原理は非常に簡単で単純なこと。
「射撃に自信アリで〜す」
ピースサインを掲げながら、ウキウキした様子でカガヤに微笑みかける。嬉しさが溢れていた。
「……さて、次いきますよ」
だが浮かれるのはここまで。まだ脅威が去った訳ではないのだから。切り替えねばならない
ホノンは再び寝転がり、対戦車ライフルを構える。
狙うは首。
ヨーゴが追撃する時に宇宙人が出張ってきたならば、弱点である可能性が高いと踏んだからだ。
「カガヤさんもさっきの魔術を、できるだけ連発してください」
「何発もは期待しないでくださいよ……限界まで頑張りますけど!」
ホノンは狙いを定め、カガヤは両手を前に突き出し、詠唱を開始する。
そしてすぐに
――ドパアァァァン!
「『轟炎斬波』ッ!!」
巨大な炎のギロチンの刃と、全てをぶち抜く音速を超えた弾丸が飛んでいった。
しかしその弾丸と炎の刃は、途中で急停止した。
「えっ!?」
「なにっ!?」
宙に浮いたまま動かない炎刃と弾丸を見て、2人は驚いてしまう。
「さっき私を撃ったのは貴様だな、地球人の女」
声がしたために2人が正面を向き直すと、そこには青白い少年が立っていた。
その異質な雰囲気を醸し出す存在感に、ホノンには覚えがあった。
「チルクス遊星人……!」
「ほう……貴様はあの男とは違い、見ただけでわかるのだな」
「えぇ、よく知ってます……」
15年前。突如として日本上空に飛来し、数十体の宇宙怪獣を送り込み侵略活動を開始した宇宙からの来訪者。それがチルクス遊星人。
しかし侵攻した日本は、大怪獣ジオレクスの縄張り。彼らは見事なまでに初手を誤ったのだ。
領域を侵したことで大怪獣の逆鱗に触れた宇宙怪獣は瞬く間に撃滅。成層圏に待機していた宇宙船団も、ジオレクスの放った熱線によって一網打尽にされた。
なーんてことがあったよね……などと、馬鹿にしたり煽ったりはしない。
今、ホノンは対戦車ライフルを手に持っているが、距離が近すぎて構えている間に攻撃される。 カガヤの魔術は発動に、一瞬だがタメがいる。
2人とも近距離での戦闘には不向きなのだ。
余計な刺激をして無駄に殺される訳にはいかない。
「……一体何の用でしょう?」
だからといって気後れするのはもってのほか。
次の瞬間には死ぬかもしれない。だが生きているかもしれない……ならば、生きる方に賭けて情報を集める。それが一番上等だ。生き残って情報を味方に伝えられれば理想的である。
「貴様らに用はない……用があるのはジオレクスだ」
「……もしかして、復讐しにいらした?」
「そうだ、あの時の屈辱を晴らしに来た」
チルクス遊星人は拳をキュッと握った。
妙に人間臭い動作だなと思いつつ、ホノンは会話を続ける。
「あの怪獣で復讐を遂げるおつもりで? 少々戦闘力が足りてないように思えますが」
「問題ない、やろうと思えばグルバラムは対ビームバリアを張れる……ジオレクスを無力化するためのな」
「ジオレクスを無力化だって!?」
今の今までビビりきっていたカガヤが驚きで口を開く。
ジオレクスは地球人にとって完全無敵の生命体。それが無力化されると聞けば、カガヤでなくとも驚いてしまうだろう。
「バリアとは良いですね。しかし、あの怪獣……グルバラムっていうんですか? ウチらの攻撃は防げてないようですが大丈夫です?」
「ジオレクス用の対ビームバリアといったろう、貴様らの攻撃などグルバラムの再生速度を調整すればどうとでもなる」
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