23
ロケットランチャーの弾が着弾した時。ホノンとカガヤは揃ってガッツポーズを決めた。
しかし数秒後には愕然とした。
頭部を丸ごと吹っ飛ばしたとまではいかずとも、重大な損傷を与えられたと思っていたからだ。
確かに頭部の四分の一は確かに消し飛ばした。
だがそれは、ものの数秒で完治してしまった。
「ウソだろ……!?」
異常な再生速度を目の当たりにしたカガヤは驚愕した。一方でホノンは驚きながらも、すぐさま分析および解析を開始する。仲間の窮地、怠け癖は消えていた。
再生怪獣ギエガスと呼ばれる怪獣を間近で見たことがある……それと似た再生の仕方をした。それがこの怪獣を倒すヒントになると思った。
似ているならば同系統の再生機能か?……それとも似ているだけで、違う原理で再生をしている?……脳を損傷しても再生したし……まったく未知の原理ならば、通用するまで試行錯誤する他ないが……。
「いや……そ〜だな……」
見た感じ、ギエガスと同じ再生の仕方をした。
ならば弱点も同じようなものであるかもしれない……試す価値はある。そう彼女は考えた。
「うん、とりあえず頭と心臓をバッサリ焼き切って離してみましょうか……!」
「それで死なない生物っています!? それにソレができたら苦労しないですよ!?」
カガヤのツッコミは当然のこと。常識的に考えれば、全くもってその通りだ。
反論のしようもない……
「相手は怪獣です、一般常識に囚われちゃったら死にますよ!」
否、怪獣相手ならばある。
もはやこの世に、ありえないことなどないのだ。
「カガヤさん、アイツの首めがけて炎の魔術をブッ放しちゃってください!」
「マジでやるんすね……やってみますけどボク一人じゃあ怪獣の首を刎ねるまでイケるかどうか」
「ヨーゴさんなら察してくれます、いいからドカンと一発!」
「……〜ッ! わかりましたよもう!」
鬼気迫ったホノンの表情をみて、カガヤは従うことにした。
できるかどうかわからない……そんな精神状態だが試さないことには始まらない。
例のごとく、両手を前に突き出し、詠唱を開始する。
「『我が求めは処刑の刃』『荒ぶる民よ平伏せ』『燃え盛る星に縋り付け』」
カガヤの突き出した手の先に半透明の魔法陣が出現――と、ほぼ同時に炎で構成されたギロチンの刃が魔法陣から飛び出てきた。
「『轟炎斬波』ッ!!」
カガヤの声と同時に、炎のギロチンの刃が勢いよく放たれる。向かうは怪獣の首だ。
「いけぇぇぇぇい!!!!」
カガヤが叫ぶ。
ここのところイイとこなしということを自覚している。ゆえにそろそろ戦果を挙げたいと思っていた。
今こそが絶好の機会。だから思わず叫んでしまったのだ。
炎のギロチン刃は音速に近い速度で青い怪獣に飛来。
1秒と経たずに狙った場所に着弾した。
「VARAAAAAAMUUUUUUUUA!?」
高熱と激痛を同時に味わった怪獣は絶叫する。
炎の刃が深く喰い込む。頸動脈があるなら切断したであろう場所までザックリといった。
しかしそこまで。
完全に刎ねたわけではなく……数秒後、炎の刃は消えてしまった。
「……クソッ」
そう吐き捨てて下を向くカガヤに、怪獣を観察しつつホノンは「充分です」と横から声をかける。
「あとはヨーゴさんが斬り終えてくれるはずです」
などと言われたカガヤは顔を上げて怪獣の方を見る。
そこには怪獣のゴツゴツした肌を、足場として使い駆け上がる赤い鎧武者がいた。
「そこなんだなホノン……!」
一人では思いつきもしないアイデア。
遠くから見ている怪獣に詳しいホノンだからこそのアイデアだ。それにこれは、カガヤがいなければ実行できなかった。
そう思ってる間に、千切れかけた首の付け根……うなじ部分に到達する。
「これでいいんだな!」
――スパァン!!!!
横薙ぎ一閃。焼けた傷口に刀を振り抜いた。
しかし一回では斬り足りない。カガヤが深く焼き斬り込んだといえど、もっと深く斬り込まなくては首を落とせない。
だがやるべきことは単純明快。
穴を掘るように、無心で斬りまくるだけでいい。
そうすればすぐに首を落とせる。
深く息を吸い込んで、ヨーゴは刀を斜めに振り被る。
――その瞬間だった。
「素晴しい」
誰かがいるはずもない背後から、しわがれた声がした。
ヨーゴは振り向く――ことなく、怪獣の傷口に向かって刀を振るう。
考えたり迷っていたりする暇などない。
やることは一つ、怪獣を殺すこと。それ以外は思考しなくていい。
「おい」
「――ッ!?」
斬り裂く直前で刀が急停止。
力を込めた一閃が自分の意思に反して動きを止めたことで、ヨーゴは思わず振り向いてしまう。
「この僅かな時間で弱点を突いてくるとは、舐めていたよ地球人……というか声かけたんだから、すぐコッチ向けよ」
「刀が動かないのはオマエのせいかクソガキ」
ヨーゴがクソガキと呼んだのは、声の主が幼い男児のような見た目をしていたからだ。
もちろん普通の人間の男の子な訳はない。
頭髪はなく、肌の色は不気味なほど青白い。そして眼球は真っ黒。銀色のボディスーツに似た服を着ていた。
一目見ただけで、地球人とは違うと直感できる見た目であった。
そんな生命体が、手を後ろに組んで立っている。足場は最悪に等しいというのに、見事に立っている。
「――フンッ」
だが今はどうでもいい。後回し。
ヨーゴは正面に向き直し、動かなくなった刀を手放して(刀は宙に浮いたままだった)すぐに脇差しを抜く。
大小を携行していて良かったと、ヨーゴは心から思った。斬ることを続行できる。
傷は再生しかけている、時間はない。
小刀をヨーゴは両手に持ち、またも斜めに振り被る。
しかし――。
「ダメだね、これ以上は斬らせない」
またも、止まる。
肉を斬る直前で、ピタリと動かなくなってしまった。
「……オマエの仕業だよな、今すぐやめろ」
「命令するな地球人、今は」
少年が言い切る前に、ヨーゴは動いた。
――ドゴォ!!
拳を握り締めて、少年らしきモノの顔面を陥没させる勢いで撃ち抜く。一瞬、足を滑らせて落ちそうになったがなんとか踏ん張った。
「ふざけるなよ地球人如きが」
だが少年らしきモノは動きもしない。負傷も堪えた様子もなく、顔をしわくちゃにしていた。言動からきっと怒っている表情なのであろうとヨーゴは予想する。
「オマエの言動と行動から察するに、マジでこの怪獣は宇宙人の戦闘兵器か……」
ホノンの妄言だと決めつけなければよかったと、ヨーゴは後悔する。
「総当たりでこの怪獣の弱点を探すつもりだったが、もう当たりを引くとはな……ッ!?」
「いい加減にしろ地球人、我らチルクスの民に歯向かうんじゃない」
少年型宇宙人の両腕がゴムのように伸び、ヨーゴの首を掴んだ。そのまま強い力が込められる。
首は鬼牙の装甲で守られている……が、しかし絞める力が異常に強く、軋む音が鳴り止まない。
「いくらパワードスーツを着込んでいるといえど、地球人の弱点は変わらないはずだよな」
「この野郎……ッ!?」
ヨーゴは宇宙人の手を引き剥がそうと試みるが、まったくびくともしない。絞める力はどんどん増していく。まるで蛇が獲物を絞め殺すように、ジワジワとパワーが上がっていく。
このままでは、鬼牙の装甲がバキバキに破壊されてしまう……と、思った瞬間であった。
――ドガァァァァン!!!!
ロケットランチャーの弾頭が怪獣の頭部に再び着弾。ヨーゴと少年型宇宙人は、凄まじい振動により怪獣のうなじから弾き飛ばされる。
「うおおおおおおッ!?」
今の爆発のおかげで、宇宙人の手が首から離れて窮地は脱した。
だがうなじ部分から落下していく。
50メートルの高さを自由落下だ。
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