コード・グリーン
時限爆弾が、目の前で冷酷に時を刻み続けていた。
大学の講義室である。時計に繋がれたダイナマイトは、日常の中に途轍もない異物感を齎す
カウントが1分を切った。栄枝の額から汗が滴り落ちる。
ほとんどの人間が逃げ出していた。そんな中、栄枝だけが起動装置を止めようとしていた。
理工学部の意地があった。誰かの悪意に屈するわけにはいかなかった。知識を総動員し、コードを本物かダミーか見極め、次々と解体していった。
もうほとんどのコードが切られていた。あと切らなければならないコードは残り1本のはずだ。それさえ切ればカウントは止まる。
目の前にコードが2本あった。赤と青。どちらかが本物でどちらかがダミーだ。選択を間違えれば、その瞬間に爆発するだろう。
残り50秒。栄枝の、ニッパーを握る手に汗が滲む。
赤か、青か。青か、赤か。生き残る確率は50%。死ぬ確率も50%。
汗が、床に落ちる。
残り20秒。Awazon超お急ぎ便の箱が出現する。腰ほどの大きさがある。
後方から爆発音が鳴る。栄枝は心臓が跳ね上がり後ろを振り返る。爆発ではなかった。宇垣が、ドアを蹴り飛ばして入ってきた。
宇垣は駆け寄るとAwazon超お急ぎ便の箱をこじ開けた。中には、金庫が入っていた。
「えいっ」
「うおっ!?」
宇垣は栄枝を蹴り飛ばし、ひったくるように爆弾を持ち上げると、金庫の中に入れてダイヤルを適当に回す。
「離れろ」
宇垣は逃げながら言った。
栄枝は這うように離れる。
衝撃。地球を割らんばかりの音が響く。栄枝は前方に転がる。金庫は大きく跳ね上がり倒れた。
栄枝は放心していた。金庫の隙間から、黒煙が漏れ出ていた。耳鳴りが鳴り響いている。
「栄枝、どっちを切っても爆発してたぞ」
宇垣は抑揚の無い声で言った。
宇垣は白衣を翻すと、動けないままの栄枝を尻目に、何事もなかったかのように講義室の外に歩いていった。




